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フレームシフト (ハヤカワ文庫 SF)
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紙の本
SFとミステリを融合させた佳作、近未来の可能性を感じさせる
2003/02/22 15:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソウヤーの作品をよむのは、「ターミナル・エクスペリメント」、「ゴールデン・フリース」、に続いて3作目である。3冊ともSFとミステリを融合させた、佳作である。今回のキーワードは、ジャンクDNA、遺伝病、ネアンデルタール人のDNA、クローン、ナチスの残党、殺人事件の謎解き、と言ったところである。現実から飛躍したSF的要素は少なく、現時点の遺伝子生物学の延長で、十分考えられる要素の、組合わせである。その分、物語性、登場人物の設定に、味わいがある。
紙の本
フレームシフトは物語と関係ないけど…
2001/06/17 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こじましゅういち - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒトゲノム・センターに勤務する気鋭の遺伝子学者ピエールは、帰宅途中、ネオナチの暴漢に危うく殺されそうになった。ネオナチと何の関わりもないのに、どうして狙われたのか?やがて、自分が連続殺人事件に巻き込まれていると知ったピエールは、事件の謎と自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密に命がけで挑んでいくが…。
…という本書のあらすじは、実は裏表紙のそれをまるっと写したものなんですが。このあらすじ、「よくまとめたなぁ」と誉めたいくらい。
曲者なのは「事件の謎と自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密に命がけで挑んでいく…」という部分。「事件の謎」と「自らの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密」が並列に語られているのに注意しましょう。そう、今回の話、この2つは別にリンクしているわけではありません、っていうか別々の話ッス。「ヒトゲノムの謎が陰謀を呼び、陰謀が連続殺人を巻き起こす」などとおっちょこちょいな読み人(ワタシ含む)が勘違いするのはまったくその人の勝手であると。
でもなぁ、普通タイトルに「フレームシフト」なんて付いてたら、その遺伝子のフレームシフト理論か何かが物語の重要な鍵を握ると考えるのは、読者としてごく普通の反応だと思うんだが…。だのに、フレームシフト理論は語られるだけ。ハプレス・ハンナがらみで話が動き出したときには、ワタシの頭の中には「フレームシフト+ハプレス・ハンナ=映画『北京原人』の念力原人」という導出式がぽぽんと湧いて出てしまい、「おおっ、これは素晴らしき新人類の誕生かッ!?」と妙な期待をしてみたものの、この話も本編では傍流の1エピソードくらいの扱い。ネタのうっちゃり具合は『ターミナル・エクスペリメント』の魂以上。では本筋はどんな話かというと、フレームシフトやハプレス・ハンナが全くなくても成り立ってしまうナチの残党もののおはなし。なんちゅうか、話を構成する要素がてんでばらばらのまま、どんどん展開だけが先に進んでいってしまうような印象を受けるですよ。むむぅ。
一番困ったのは、以上のように違和感を感じまくりながら読み進めていったにもかかわらず、それなりに面白く読めてしまったということ。終盤はハンチントン病のおかげで『アルジャーノンに花束を』のような効果が生じてしまっているし。なんだかラストは妙にさわやかだし。ついでに読後感もさわやかだし。ぬぅ。
むーん…困った。面白い作品なんだが、小魚の骨がのどに引っかかったような何とも言えないもやもやも感じる…。ソウヤーが好きな人なら。