- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.4
- 出版社: 日本経済新聞社
- サイズ:20cm/239p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-532-14821-9
- 国内送料無料
紙の本
オランダモデル 制度疲労なき成熟社会
著者 長坂 寿久 (著)
「オランダ病」から「EUの優等生」へ奇跡の変貌を遂げたオランダ。膨大な財政赤字と高失業率を克服した「賃上げ無き雇用創出」はなぜ可能になったのか。その独特な社会・経済システ...
オランダモデル 制度疲労なき成熟社会
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商品説明
「オランダ病」から「EUの優等生」へ奇跡の変貌を遂げたオランダ。膨大な財政赤字と高失業率を克服した「賃上げ無き雇用創出」はなぜ可能になったのか。その独特な社会・経済システムを分析し、「奇跡」の秘密を解明。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
長坂 寿久
- 略歴
- 〈長坂寿久〉1942年神奈川県生まれ。明治大学卒業。ジェトロ・アムステルダム所長等を経て、現在、拓殖大学国際開発学部教授。著書に「ベビーブーマー」「企業フィランソロピーの時代」など。
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紙の本
アメリカモデルとオランダモデル
2002/01/22 22:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よしたか - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバル・スタンダード、とよく言うけれど、実際にはアメリカン・スタンダードだ。日本はこれまで、アメリカをモデルにした社会づくりを進めてきたし、パソコンやインターネットの時代になって、ますます英語が「事実上の標準」言語になるにつれて、アメリカンナイズは加速している。
では、アメリカ型社会が本当に素晴らしいのか、と聞かれると、そうだ、とは言いきれない。治安は悪い。サイコな事件は起こる。麻薬はなくならない。崩壊した家庭も多いようだ。少年の犯罪もエスカレートしている。日本でも、それを追うように、ハリウッド映画に出てくるような、犯罪や事件が起きるようになっている。
本書は、アメリカモデルとは世界的に見れば特殊なもので、それとは別に、オランダモデル、というものがあり、むしろ、日本には、オランダモデルのほうが向いているのだ、と教えてくれる。著者は、アメリカのニューヨークで4年半生活し、アメリカのダイナミズムに感動して、長い間、アメリカ的考え方を良し、としていた。それだけに説得力がある。
筆者が、オランダ・モデルの特徴として挙げている項目のうち、特に印象的なのは、「パートタイム経済」と、「社会悪は根絶せずコントロール(制御)する」という考え方だ。
フルタイム勤務か、パートタイム勤務かで、給料や年金、その他の扱いに差がつかないようになったおかげで、オランダの人々は、どちらかを選択することができるようになったのだ。このため、パートタイマーは、休みの日には、家族と過ごしたり、あるいは、別の仕事を引き受けたり、と自由なライフスタイルをおくるとができるようになった。
また、パートタイムが社会的に保証されることにより、リストラで人を減らすのではなく、ワークシェアリングによって仕事を分け合い、失業者を減らすことができるようになった。もちろん、収入は減るわけだが、その一方で、ほどほどに働き、ゆとりを持って生きる、という生活も送れるわけだ。
また、オランダ人の「コントロール」主義は、売春、麻薬、安楽死などの必要悪を排除するのではなく最小限にしていこう、とする姿勢だ。例えば、アメリカでは、法律で全面的に禁止する、いわば外科手術的方法論をとるとしたら、オランダでは、法律よりも皆でで協議することを重視する、漢方薬的な方法論をとっている。現実に、アメリカでは、どんなに取り締まっても、麻薬、暴力、殺人、児童虐待、売春などは、犯罪が地下にもぐるだけで、撲滅できていないだけに、説得力がある。
著者は、オランダ社会と日本社会には、共通点がある、という。お上意識が強い、コンセンサス社会である、などなど。
今後は、盲目的に、アメリカの後を追いかけるよりは、もう一つ、オランダモデルを視野にいれて、相対的に、日本の将来を考えるべきだ。現在、日本でも、リストラと失業率の増加による反動か、ワーク・シェアリングの考え方が、新聞等で盛んに取り上げられるようになっている。だからこそ、オランダモデルについて、今、深く学ぶべきだ。
紙の本
日経ビジネス2000/7/31
2000/11/13 21:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森永 卓郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
バブル崩壊で日本型経営の限界が露呈した後、日本が変革の目標に据えたのは、米国だった。ニューエコノミーに沸く米国にあやかる経済構造改革は今でも続いているが、米国とは根本的に異なる仕掛けでそれ以上の経済パフォーマンスを実現している国がある。オランダだ。
1980年代には2ケタの失業率に悩み、オランダ病とまで言われた経済は、失業率が2%台に低下、その復活はダッチミラクルと称される。
オランダは時給や社会保障面でパートタイマーとフルタイマーの均等処遇を確保。これを通じてパートタイマーの雇用を増やし、ワークシェアリングによる雇用機会の拡充と、パート化による雇用の柔軟化を両立させた。これが、奇跡の秘訣だとされてきた。
もちろんそれは間違いではないのだが、本書が明らかにしていることは、ダッチミラクルを成立させた要因は、もっと幅広く、もっと生活に深く根を下ろしたオランダの社会システムそのものだということだ。
例えばオランダでは、高齢者向けケアサービスのほとんどは非営利組織(NPO)が行い、途上国への開発援助も非政府組織(NGO)が中心だ。政府の役割は補助金を出すことだけだ。法規制も基本法だけ定め、細かいところは関係者がじっくり話し合って詰めていくという手法を取っている。
時間をかけてコンセンサスを作り、国民全体が力を合わせて課題を解決していく。著者が「コントロール型」と呼ぶこの仕組みこそが、オランダモデルの最大の特徴なのだ。
英語では割り勘を「レッツ・ゴー・ダッチ」と言う。オランダの経済・社会システムは、雇用機会や社会保障から社会的責任まで包含する極めてスケールの大きい「割り勘システム」なのかもしれない。著者は、そうした文化が根付いたのは、国土の構造に原因があると言う。海抜下に住むオランダでは、国民全員で堤防を守る必要に迫られてきたのだ。
割り勘文化があるからこそ、オランダの労働者はワークシェアリングに同意し、ボランティア活動に積極的に参加する。その結果、オランダの労働者は多様な雇用機会に恵まれ、高齢者は在宅のままケアサービスを受けることができる。しかもそれを実現する社会コストは、国家権力による再分配よりもはるかに安いのである。
オランダのやり方は、米国のやり方と正反対である。しかし著者が主張するように、これまでの日本文化とはむしろ親密性を持っている。だから経済構造改革派の人たちにこそ、熟読してほしい本なのである。
(C) ブッククレビュー社 2000
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