「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
江戸川乱歩賞の世界。そのすべてがわかる。ミステリーの歩み、流れ、歴史が見えてくる。日本の戦後社会の本当の姿が浮かび上がってくる。『鳩よ!』連載に加筆した骨太なミステリー論。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
関口 苑生
- 略歴
- 〈関口苑生〉1953年山口県生まれ。早稲田大学社会科学部中退。雑誌記者、編集者を経て文芸評論家に。編書に「恋愛小説名作館」など。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
戦後社会との関わりを視野に入れながら、乱歩賞の歴史、今後、存在意義、受賞作について建設的な提案が豊富
2000/08/28 21:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
卓抜な着想と、並外れた奇想、独創的なトリックを生かして『人間椅子』『陰獣』などの作品で探偵小説の先駆けとなり、推理小説の基礎を築いた江戸川乱歩(1894−1965)。その乱歩の業績を顕彰し、推理文壇の登竜門となっている「江戸川乱歩賞」の創設が決まったのは、1955年(昭和30年)のことである。
関口苑生著『江戸川乱歩と日本のミステリー』によると、成立の経緯は54年29年10月31日の乱歩氏の還暦祝賀会で、その席上、彼は100万円を日本探偵作家クラブに提供し、探偵小説奨励賞を設定したいと発表し、翌55年3月に賞の要目が決定した。
贈賞の対象は「その年度に探偵小説の諸分野において顕著なる業績を示した人に、過去の実績をも考慮して贈賞する。その対象は創作、翻訳、評論、編集、映画、演劇、放送等のうちから毎年いずれかの一種を選ぶ。創作を最も重視する」とあった。
ところが55年第1回は、『探偵小説辞典』など書誌的業績に対して、中島河太郎が受賞、第2回は「ポケット・ミステリ」の継続出版に対して、早川書房が受賞するなど「創作重視」の趣旨に反するとの批判が続き、中島河太郎から「既成作家と新人を問わず、書き下ろし長編を募集して、その最高作に贈っては」との案が出て、採用され、現在の江戸川乱歩賞の基本的骨格が確立した、という。
この新形態になった57年度で、第3回乱歩賞を受賞したのが仁木悦子の『猫は知っていた』であった。
本書は、このように乱歩賞が長編公募の年となった57年度の第3回の仁木悦子の受賞作から、99年(平成11年)の第45回受賞作である新野剛志『八月のマルクス』までの47作について論評を加えながら、紹介している。
高度経済成長期をバックにしたオリンピック開催、第1次石油ショック、全共闘運動、大阪万博を経て、狂騰したバブル破綻が引き金になっている現在の不況に到るまでの激動した日本の戦後社会との関わりを常に視野に入れながら、純文学や、大衆文学などの分野との影響の及ぼし合い、乱歩賞の今後、存在意義などについて、乱歩賞と、それを目指した作家たちの個々の作品への率直で建設的な提案がなされている。
長らく、予選審査に関わってきた立場から、裏話なども披露しながら、一つ一つの受賞作と作家に注がれる暖か味のある眼差しと、偏見に陥らない語り口に好感が持てる。
第1章〈推理〉小説大衆化の第一歩から第24章江戸川乱歩賞の存在意義までの構成だが、とりわけ第7章「高級な遊びとしての推理小説(斎藤栄『殺人の棋譜』など)、第8章40年代最大のスター登場(森村誠一『高層の死角』など)、第10章江戸川乱歩賞の懐の深さ(小林久三『暗黒告知』ほか)などの章が読み応えがあった。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2000.08.03)