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商品説明
「フランケンシュタイン」は作者の自伝? コットン・マザーとトマス・ピンチョンは似ている? 批評理論の最先端を駆使して名作を意外、痛快、奇想天外に読み直し、文学の裏に潜む複雑な心理と謎を暴く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
巽 孝之
- 略歴
- 〈巽孝之〉1955年東京都生まれ。コーネル大学大学院博士課程修了。現在、慶応義塾大学文学部教授。アメリカ文学専攻。日本SF作家クラブ会員。著書に「日本変流文学」「恐竜のアメリカ」など。
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紙の本
現在最先端を行く文学批評理論を刺激的なスタイルで講義する
2000/07/30 06:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
そそっかしい人は表題だけを見てミステリー小説だと思うかもしれないが、メタファーとは人名ではない。日本語では「隠喩」とか「暗喩」とか呼ばれるが、それでは実体がよくわかるまい。
例えば「鉄のように固い意志の女」と表現すると、これはシミリー(直喩、明喩)と呼ばれる。それをもっと簡潔に「鉄の女」と呼ぶのがメタファーである。そのようなあだ名を貰った英国首相がいた。
文学にはこの種の比喩表現が多い。シェイクスピアはハムレットに「演劇とは自然に掲げた鏡」と言わせ、スタンダールの『赤と黒』の中には「小説は道路に沿って運ばれる鏡」という一文が見られる。もっと徹底させれば、「本とは人生のメタファーだ」と言うこともできる。
そこで、著者がそのメタファーで何を表現しようとしたか、正確に解読するのが文学批評の使命である、というのが伝統的な定説であったが、第二次世界大戦後に、この定説を否定する新しい理論が打ち出された。読み手は作品をただ受け入れて解釈するだけではいけない、作品を積極的に誤読し解体し再構成するのが、批評家の仕事である、と。メタファーを破壊せねばならない、と。
この本は、そうした現在もっとも新しい批評理論を、主としてアメリカの批評家の具体的な実例によって示している。だから、決して誰でもすぐにわかるような入門書とはいえない。しかし、新しい文学理論──デコンストラクションとかニュー・ヒストリシズムとかいう名前に困惑し、尻込みしかかっている文学愛好者にとっては、実にありがたい解説書となる。
著者は慶應義塾大学で米文学を教える教授だが、読者は巽先生のゼミにモグリで出席できたような楽しいスリルを味わうことができる。そして、難解な抽象的理論の羅列ではないことに気づいて安心する。あくまで具体的な事例に基いた講義であるから。そしてその事例も、映画『ダンス・ウイズ・ウルブス』や、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』までがポンポン飛び出すことでわかるように、狭い専門領域にとじこもらず、文化全体にわたる広い目くばりによって選ばれていることを、ここでぜひ強調しておきたい。
第三部第一章のタイトルが「知的ストーカーのすすめ」となっていることでもわかるように、文学研究論文をこれから書こうとしている──そして怖じけづいている──学生にとっては、よい実践ガイドブックの役も果たしてくれるだろう。
そして最後に、「現在批評講義」という副題が単なるお題目でないことを視覚的に示すために、造本上の工夫がこらされていることを忘れずにつけ加えておきたい。各ページが、まるで学生の講義ノートのように見える。読者は触発された印象やアイデアを自分の手で書き加えたくなるに違いない。 (bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2000.07.29)