紙の本
パラダイムシフトとは
2021/05/22 21:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
クーンの定義によれば、”パラダイム”とは「一般に認められた科学的業績で、一時期の間、専門家に対して問いの立て方や答え方のモデルを与えるもの」です。
通常、科学というのはこのパラダイムに沿って進展し深められていく(この過程では迷いもなく説くべき問題も決まっているのでとても効率的に研究が進む)のですが(第2〜5章)、ある時、どうしても既存のパラダイムでは説明できない変則性に突き当たる(第6章)、あるいは、他の専門の中で進展したものを取り入れようとするとうまく説明できない(補章)、ということが生じます。
それをクーンは「危機」と呼び(第6章)、そうすると、既存のパラダイムを微調整しようとする(たいてい別の箇所に矛盾が生じてうまくいかない)だけではなく、まったく別の考え方で説明しようとする説が生まれて百家争鳴に(第8、9章)。
ただ、じきに一つの新しいパラダイムに淘汰・収斂していき(このプロセスが”パラダイム・シフト”、本書では「変革」)(第10〜12章)、また通常通りの科学の営みが再開する。科学の発展の歴史はこの繰り返しだと、クーンは説きます。
こうした変革は長い時間をかけ、それほど目立たずに起こることもありますが、新旧のパラダイムでは、問いの立て方のみならず世界の見方すら変わる、まさに此岸と彼岸といった状況になります(第10、11章)。
まるでルネッサンスのようだなと思いながら読んでいたら、そう読者が感じるのもごもっとも、なぜなら芸術や政治などの人間活動の歴史では一般的な、非累積的で断絶のある歴史観を科学史に持ち込んだのが本書だから、と補章で解説されていました。
また、科学は自然が前もって設定したある目標に常に進める事業と思われがちであるが、何か「真理」のようなものを目指しているのではなくて、原始「から」の進化の過程であってだんだん自然の理解が洗練されてきただけだと、クーンはみなしています(第13章)。この考え方は小坂井敏晶氏の歴史観・文化観に近いものを感じました。振り返れば今日まで続く一本道があるように見え、そこに必然性を感じ取るかもしれないが、全然そうじゃないんだ、ということですね。
紙の本
パラダイムの出典
2015/12/31 23:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
パラダイムシフトなんて横文字が軽々と出たりしますが,この本を読んだ後だと「え.そんな使い方でいいの?」と眉をひそめたくなります.
歯ごたえのある本ですが,研究者になる人は一読しておいてほしい本です.
紙の本
パラダイム変換を提唱した科学哲学の重要な論説
2004/03/20 20:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
パラダイムおよびパラダイム変換という言葉(概念)を、一般に膾炙せしめる元になった、論考である。科学思考の枠組みが大きく変化する場合と、ある思考の枠組みの中で科学を発展させる時代とが、交互に現れることを明らかにした。そして、思考の枠組みが全体的に変化する場合を、解明している。
科学哲学の論説の中でも、大きな影響を与えて論争を引き起こした、重要な文献である。
投稿元:
レビューを見る
受験期によく耳にしたパラダイムってやつがよくわかった。
読んで絶対に損はない一冊。
科学に限らず、この本の中で言われている話はあらゆる事柄の根底に流れているように思います。
ただ文系には、例示された科学史をよく理解できない気も。
投稿元:
レビューを見る
科学におけるパラダイムの重要性を説いた古典的名著。クーン以前の論調を知らないので、どれくらい革命的な論だったかは推察するしかないのだけれど。科学畑出身だけあって、実相を良くわかっているとは思う。でも科学の深化・進化を簡略化しすぎのきらいもあるかな。
投稿元:
レビューを見る
科学のことをつらつら書いていて、一見難しそうだけどいいたいことは、それまでの科学の常識に危機が訪れると、科学は変わる。これを科学革命というらしい。何やらかんやら難しいし、かなり昔の本なので日本語自体も古めかしい。あまりお勧めできない。正直。
投稿元:
レビューを見る
科学史より思考の枠組みとしてのパラダイムを提唱した歴史的名著。活字は古いものの内容は読みやすい本である。
投稿元:
レビューを見る
http://ameblo.jp/norun3sisters/entry-10015922448.html
投稿元:
レビューを見る
難解、、
訳が悪い。(←偉そうですみません)
amazonレビューによれば、村上陽一郎氏による解説本を読んだ方がわかりやすいのだそう。そっち読めばよかった。
しかし、本書のエッセンスだけは読み取れました。
・特定のパラダイムが正しいことを証明するために、「通常科学」により、さまざまな検証がなされる。その検証の過程で生じた「変則性」は意識的/無意識的に多くの場合見過ごされる。しかしその「変則性」に気付き、それの周辺を広く探索することによって、「新理論」にたどり着く場合があり、そういったプロセスを経てパラダイムの転換が起こる。
というのがエッセンス。
自分に当てはめて考えれば、
・特定の思い込みが正しいことを証明するために、「日々の体験、経験」により、さまざまな検証がなされる。その検証の過程で生じた「変則性」は多くの場合意識的/無意識的に見過ごされる(人間は自分が見たいものだけを見ようとし、聞きたいことだけを聞こうとする)。しかしその「変則性」に気付き、それの周辺を広く探索することによって、「新理論」にたどり着く場合があり、そういったプロセスを経て思い込みが壊れる。
よって固定観念を打破するために、必要なことは
・頭の中にあるパラダイム(固定観念、思い込み)は相対的なものであると認識する
・「変則性」(あれ?おや?)にアンテナを立てる。敏感になる。
・「変則性」を深堀りする
・パラダイムシフトを歓迎する(自分の思い込みに固執しない)
ということだろうと思います。
投稿元:
レビューを見る
2010 5/3読了。図書館情報学図書館で借りて読んだ。
博士課程に進んだんだから古典を学び直そうシリーズ第何段か。
「パラダイム」という言葉自体はたびたび聞き、教科書的あるいは辞書的な意味では定義も知っていたが、本書を読んでやっとどういう概念であるか腑に落ちた感じがする(まだ「感じがする」にとどまっているあたり我ながら・・・)。
と、同時に自然科学以外の分野で「パラダイム」という言葉を用いることの問題点がたびたび指摘されてきた理由もやっと理解できた。
少なくとも図書館情報学分野で使うべきではない、という見解がある理由は理解できたし、自分もそう思った。
投稿元:
レビューを見る
概念や理論の展開期に生じるパラダイムの創世と転換について具体例を交え分かりやすく解説。
パラダイム転換期における人間は自らの経験に頼らず新たな価値観を受け入れまた創造していかなければならない という点にとても納得した。
投稿元:
レビューを見る
一時期に一斉を風靡したパラダイム概念の産みの書。
科学が社会的な物である、真理を追うようなものではないと解き明かした、当時大きなインパクトを与えた書である。
パラダイム概念がなぜ今日でも読むに値するのか。この本を読んでなにを思うか。
これを読んで現代を俯瞰してみると、教育などによって齎されるパラダイムどころか、あらゆる科学というものが果たして科学的なるものか、それがどれだけ権力、経済、私利私欲に左右されるものであるかがわかる。放射線の被爆量云々の議論をとってみても、あれだけ国費を投入して全世界で研究がなされているのに、被爆量の基準はまったく明確な「科学的根拠に基づいて」、しかし政治的に決められてしまうものなのだ。それが科学的に正しくとも、我々にとってそれが正しいのかどうかは別の問題である。
どれだけ明晰な科学であろうとも、それはあるパラダイムの採用に過ぎない。科学だから正しいのではなくて、あるパラダイムのなかでその科学は正しいのだ。そのパラダイムを作り出しているものをしっかり見極めることが、科学との正しい付き合い方である。
投稿元:
レビューを見る
『だまされない議論力』吉岡友治 の巻末の読書案内に出ていたもの。そのうち読む予定。-「科学についての神話にまどわされないで現実を直視する姿勢がすがすがしい」
投稿元:
レビューを見る
パラダイムという概念を提唱した本。
ただし、これは科学革命の場面のみで、後年の社会全体を対象にしたものではない。
しかし、世界は普通に、パラダイムも、パラダイムシフトも言葉として使うようになってしまったけれど。
投稿元:
レビューを見る
科学哲学の本というか、科学史の本というか、そんな感じ。科学という営みをメタな観点から論じています。「パラダイムシフト」というのもこの人が提唱した概念です。読んでると色々発想が発散していきました。言語ゲームに絡めると面白いんじゃないか?とか。