- カテゴリ:一般
- 発行年月:1978.7
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリ文庫
- サイズ:16cm/414p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-070118-5
読割 50
九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
九尾の猫
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
超・サイコスリラー
2005/10/15 05:59
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yu-I - この投稿者のレビュー一覧を見る
本格ミステリの巨匠として名高いエラリイ・クイーンの作品の中でいちばん好きなものは?と問われたら、筆者は迷うことなくこの作品を挙げる。
無差別殺人としか思えない連続絞殺事件が起こり、ニューヨークは恐怖に震え上がった。動機もわからない、目撃者もいない、容疑者もいつまでたっても不在…。警察が右往左往しているあいだにも被害者の数は増えてゆき、市民はじょじょにパニックに陥ってゆく。
容疑者不在、というこの設定は、クイーンの作品及びその流れにつらなる作品の中では異色であろう。本格ミステリというジャンルの特性上、捜査の糸口すら見つからないような設定は困難だ。
しかし、さすがはクイーン、である。
次々に被害者が増えてゆく状況の中、まったく姿を見せない殺人鬼をエラリイが論理的に追い詰めてゆく、その過程はものすごくスリリング。サイコスリラーのような雰囲気ただよう作品であるが、やはりあくまでも本格。一見無差別にみえる事件の犯人を絞り込んでゆくロジックの見事さには、目を見張るものがある。
また、この作品で印象深いのは推理の部分だけではない。
クイーンの作品というと非常にロジカルで、パズル的で、エラリイも探偵という役割を担った一つのコマのようにあつかわれていた感がある。
しかし中期以降の作品になると、エラリイは血肉をそなえはじめ、人間として苦悩しはじめている。
犯人を捜し出し糾弾する自分は何様なのだ、自分は神ではないのに、という苦悩である。
ここでいう「神」とはキリスト教国でいう「神」であるから、その重さは日本人にははかりがたいものがあるだろう。しかし、エラリイの苦悩はぶつかるべくしてぶつかったもので、日本人にも理解できるものだと思う。
エラリイが悩み、さまよう過程がもっとも顕著にあらわれているのが本書だ。読者にはサスペンスフルな物語を楽しむと同時に、名探偵がどのような苦悩をかかえながら犯人を追い求めているのか、国内本格ミステリ全盛のいま、その目で確かめてもらいたいと思う。
電子書籍
猫とニューヨーク
2015/03/09 20:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:えむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭からショートパンツ一枚で登場するエラリイに度肝を抜かれました。
真夏ですし家の中ですからいいんですけど、ニューヨークの夏って暑いんですね。
連続殺人鬼に関する報道の沸騰とか、ニューヨーク市長から特別捜査官に任命されるエラリイとか、被害者の家族が押し掛けてきたりとか、どんどんいろんなことが起こってわくわくしながら読み進めました。
終盤はどんでん返しに次ぐどんでん返しで、結ばれた紐の意味とか、どきりとしました。
途中で他の作家のある作品のネタバレがあるんですけれど、いいんでしょうか。
作品名を挙げてるわけではないんですけれどわかっちゃうと思うなあ。
クイーン親子のやりとりも楽しいです。
紙の本
連続絞殺魔<猫>の動機は?!
2004/10/26 18:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yuseum - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家エラリイ・クイーンの一人、フレデリック・ダネイが1977年に来日した際に挙げた自選ベスト3の次点。そして、最高傑作だと推す人も多いこの作品は、いわゆるミッシングリンクものです。つまり、何のつながりもなさそうな連続殺人をつなぐ鎖の輪、被害者の共通項がテーマとなっており、この種のテーマを扱った作品にはクリスティの『ABC殺人事件』などがあります。(「ABC」を読んだことがない人は、「九尾」を読む前に読んでおいた方がいいでしょうね。)
しかし、この作品にはいろいろと考えさせられることがいっぱいです。戦争しかり、人種問題しかり、…。中でもパニックに陥ったときの大衆心理は(『災厄の町』でも少しは触れられていましたが)、この作品ではそれが生々しく描かれており、パニック小説としても一級です。
物語の2/3近くでミッシングリンクが明らかにされたときは、思わずうなってしまいましたが(とんでもない共通項なんですよ)、その後の展開はだいたい思った通りに進みました。しかし、その後の読みどころも満載で、サスペンスあり、(予想していた)どんでん返しありで(どんでん返しまでがやや冗長ですが)、最後にエラリイが苦悩する場面になると、もうすっかり作品に感情移入してしまい、読後しばらくはどっぷりとメランコリックな世界に浸っていました(-.-) 国名シリーズを読んでいたときは、「こんな男のどこがいいのか。」と思っていた(探偵)エラリイも、『災厄の町』やこういう作品を読んでみると、ファンになる理由もわかります。
電子書籍
事件収束後にもうひとひねり
2019/04/28 04:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マンハッタンで連続殺人事件が発生し、絞殺に使われた絹紐の他に手がかりは無く、被害者同士の接点や共通点も見つからないため捜査が難航します。正体が全くつかめない殺人犯は「猫」と呼ばれ、誰しもが「猫」のターゲットになり得るという状況にニューヨーク市民は怯えきり、街では野良猫が絞殺される事件が多発、ついにはパニックによる暴動までもが発生します。捜査責任者に任命されたクイーン警視は息子で犯罪研究家のエラリイに協力を要請し、『十日間の不思議』での失敗を引きずっているエラリイはなかなか引き受けようしなかったのですが、ニューヨーク市長からも直々に要請されて遂に重い腰を上げます。しかしそれでも捜査は一向に進まず、第7の犠牲者の伯父で、「猫」の正体について独自の理論をもつ精神科医の権威エドワード・カザリスが市長の要請により精神医学的なアプローチで犯人を捜す捜査委員会を立ち上げることになります。それでも調査結果は芳しくなく、ついに第9の犠牲者が出た際に偶然犠牲者たちを結びつける手がかりが見つかります。それでも犯人逮捕は証拠固めが困難なために難航します。現行犯逮捕を目指して第10の犠牲者を予測し、罠を張りますが、それによって逮捕された人は実は真犯人ではなく、結末に至るまでにさらに一ひねりあります。
真犯人とその配偶者が毒で自殺してしまうので、エラリイが「また間に合わなかった」と落ち込むオチですが、彼が真相の確認のために会いに行った老心理学者セリグマン教授の「君は前にも失敗した。今後もするだろう。それが人間の本質であり、役割だ。」という示唆に富んだ言葉が興味深いです。エラリイにそれが通じているかはともかくとして。
紙の本
宗教的サイコスリラー
2001/07/03 10:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:女王 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ニューヨークでおこる連続殺人に名探偵が挑む。と言っても、これまでのエラリーとは違って、本格ミステリーのような人造的な雰囲気は皆無で、リアルなサイコスリラーの感触がある。それでも最後にはロジカルに犯人を突き止めるあたりはさすが。ただし、陰鬱で宗教的なので爽快感はない。