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紙の本
私の個人主義 (講談社学術文庫)
著者 夏目 漱石 (著)
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決...
私の個人主義 (講談社学術文庫)
私の個人主義
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商品説明
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」「中味と形式」「文芸と道徳」など魅力あふれる5つの講演を収録。【商品解説】
目次
- 1 道楽と職業
- 2 現代日本の開化
- 3 中味と形式
- 4 文芸と道徳
- 5 私の個人主義
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紙の本
夏目漱石という人が滲み出ている講演集
2009/05/15 14:37
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simplegg - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうしてか前々からこの本に惹かれているところがありまして、ようやく読むに至ったわけですが,予想以上に面白い。
この本は講演の名手とも言われる漱石の講演を集めたものです。講演とういうものの性質上,多種多様の価値観をもった大衆に向けて
話をしなければならないことになります。漱石はこういう講演の場で,自分の見識・考え方を日常にある例を用いわかりやすく,面白く述べています。語り口は穏やかで、時として鋭い。
僕自身も漱石の鋭い洞察に驚きながら、自分自身を反省しながら読む感じでした。なかなか自分の意見や、漱石の意見に対する反発といったものが湧いてこないのが,まだまだ未熟なところであろうと思います。
ひとつ例に挙げれば,学習院で行われた「私の個人主義」という演題で漱石は”自由”、”個性”といった話題について触れています。僕自身、世で溢れるこの手の言葉には常々違和感を覚えます。言葉がひとり歩きしているように思えるからです。
漱石はこれらの言葉の本質とはなにかをしっかりと分析し、それに立脚してこれらの本当のあり方を述べます。明晰でいて、本質を見極めようという真摯な話で、とてもためになりました。内容は読んでいただきたいと思います。
漱石は全体を通して、体裁や見栄にといったものに気をとられず、自分自身に立脚した話をします。「私の個人主義」というある種過激なタイトルですが,こういう意味で漱石は「私は個人主義を公言して憚らないつもり」と述べているのではないかと思いました。
「個人主義は時に寂しいものである」といったなんとも人らしい一面をも見せる漱石の講演を一度聞いてみてはいかがでしょうか。
紙の本
漱石の講演集
2004/06/12 07:55
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:明けの明星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石の「個人主義」は、他人も尊重する個人主義です。まず、そこは明白に書かれているのだから、読み違えてはいけないと思います。
「個と全」というのは、たいへんな問題だろうと思います。「全」は見方によっていろいろ違ってくるでしょう。国家、社会といったものから、もっと小さく見て、世間や学校、もっと大きく見るならば、人類全般━━これらは、個に対して全といってよいと思います。
漱石は、この個と全を秤にかけて、個の方が大事だ、と決め付けているのではありません。
漱石が「自己本位」という言葉を発見して、「その時私の不安は全く消えました。」と書いているのは、当時の日本の状況を抜きにしては、十分に理解できないところでしょう。当時の日本は西欧文明というものに、完全に圧倒されていた。それほど、西欧は日本の百歩も千歩も先を進んでいるように思われた、というわけです。科学や学問の方面だけでなく、文学のほうでも、西欧の影響が強かったのです。
まずそれがひとつと、それから、日本がその頃、色んな面で、時代の分岐点にあったということが留意されるべきです。日本の発展の方向性を決める、という非常に重い任務が、当時の明示のエリートには課せられていた(んだろうと思います)。
漱石はかなりの秀才で、英語を勉強するために、ロンドンへ留学しました。そこでたいへんなカルチャーショックを受け、劣等感を抱き、日本の未来を憂えるというのは、十分想像できることだと思います。
ここで、「自己本位」という言葉が生きてくる。そのような意味にとらなければいけないと思います。
…………
「現代日本の開化」では漱石は、開化は生活を便利にするが、その内実の苦労はますますひどくなるばかりだと言う。そのうえ「西洋の開化(すなわち一般の開化)は内発的であって、日本の開化は外発的で」あり、急速に西洋に追いつこうとする日本は、西洋本位になって「皮相上滑りの開化」をしている、と漱石は指摘する。「ただ上皮を滑って行き、また滑るまいと思って踏張るために神経衰弱になる」。
「私の個人主義」は漱石の若い頃の回想を基にしたもので、人間漱石を知るうえで非常に参考になるものだ。漱石は大学時代に英文学を専攻したが結局文学が何かわからなかった。これは西洋的「文学」に対する正当な懐疑だと言える。この懐疑が一因となって漱石は不安な日々を送るが、ロンドン留学中に「自己本位」という言葉を発見してこの不安から脱する。初期の漱石は自由闊達に筆を動かし、『猫』『ヨウ虚集』『草枕』『坊ちゃん』などの、「文学」という枠に囚われない破格の作品を書いていく。これは漱石の拠って立つところが「個人主義」だったから可能だった。後に『明暗』などで示される「則天去私」の境地は、このような「個人主義」との対照において理解しなければ意味がない。
他の講演も非常に面白いので、ぜひ読み飛ばさずに読んでみてください。
紙の本
思想家のような漱石の一面
2019/12/13 22:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石の書はほぼ制覇したと自認していましたが、本書を知り、見落としていた自分を恥じました。
本のタイトル『私の個人主義』は、最終章にあり、これ以外に『道楽と職業』『現代日本の開化』『中味と形式』『文芸と道徳』が収録されています。全て講演の内容です。明石・和歌山・堺・大阪という関西(馴染みの関西というだけで親近感も増長!)での講演、最終章のみ学習院での講演です。
漱石の晩年期の講演とのことで、それ以前迄に数々の著述作品をリリースしてきた当人の集大成的な講演内容に、非常に大きな感銘を受けました。本書に出逢えて良かったです。
漱石の殆どの作品を中学生頃迄に読了していて理解に乏しかったので、徐々に再読していきます!
紙の本
<読み方次第で読者の知性が試される怖い本>
2003/05/20 17:08
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まんでりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ただの小説家だと思っていた方は認識を改めていただきたい。
漱石は抜群のインテリジェンスを持ったいまだに世界に誇りうる知識人であると同時に卓越した表現者でもある。
「書けるものは話せず、話せるものは書けず」(末広厳太郎『嘘の効用』)のような枠組みを容易に乗り越え出たとんでもない偉才である。
この本は講演集であるが、その中のどの一説をとってきても、ヨーロッパの哲学者(たとえば、ハンナ・アレントやマックス・ウェバー)の生涯の業績に匹敵するほどの内容を持つ。
しかもその聴衆は、学者でもなんでもない、一般庶民なのである。
今の大学教授に置き換えたなら軽く40〜50人分の仕事はこなせたであろう。
時代のかわりっぱなにはこうした人間が登場するのであろうか?
21世紀には、はたしてこういう人間が日本に登場するのだろうか?
紙の本
しゃべる、夏目漱石。
2001/07/11 01:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは夏目漱石の講演録である。
漱石の口調をそのまま文字に起こした本文を読んで真っ先に思ったことは、しゃべりがうまい、ということだった。
身近なことから話に入り、冗談も交えて場をなごませる。ちょっとしたギャグを言って笑いを取る漱石なんてとても新鮮なのだ。そしてぐいぐい話に引き込まれる。引き込まれていくうちに、気が付けば、高いところにある漱石の思想まで導かれている。
肝心の内容はというと、これもまた素晴らしい。明治・大正期の講演にもかかわらず、今読んでも十分に訴求力はある。平成の社会問題をそのまま予見しているような部分だってあるのだ。
また私たちがよく知っている漱石の小説。これらの小説がどんな思想のもとで書かれたか。話を聞いていると、小説に昇華する一歩手前の思想が見えてくるようで興味深い。なにか小説の舞台裏を覗いているような気になってくるのである。夏目漱石のアイデンティティに少し触れることができる面白い一冊。
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夏目先生のお人柄
2021/03/24 10:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばき - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石は高校の国語の教科書で「こころ」を読んだ時の印象が強かったので、「私の個人主義」に出会うまで小説の傾向や人柄を太宰治に近いイメージを持っていました。
講演会で気さくで友好的な語りに触れ、夏目漱石の小説を読んでみたくなりました。
紙の本
夏目漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた書です!
2019/01/29 12:03
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の著者である夏目漱石は、小説家としてだけでなく、座談や講演の名手としても名が知られていました。そんな夏目漱石の根本的な思想とも言える近代個人主義の考え方について、丁寧に解説したのが同書です。同書を読んでいくうちに、夏目漱石が心に抱き、その行動規範としていたと思われる自由主義の考え方、解釈の仕方が非常によく分かります。
紙の本
すばらしい!
2001/01/23 22:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:匿名の読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
真摯な態度で生きていこうとする人は誰もが直面する煩悶について、実に明快な解釈を与えている。これは講演録であるということを考えると、改めて夏目漱石のすばらしさを感じる。
夏目漱石が活躍していた時代から約百年経ったいまでも、少しも古さを感じさせず、豊かな示唆に富む。
この書評を見た人皆さんには是非読むことをお勧めする。
紙の本
そんな凄いかねぇ
2002/06/20 20:52
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
確かに、漱石の語り口は素晴らしい。さすがは落語通である。謙遜する、洒落をかます、そしてしれっと本題に入る。
で、その本題。たいしたことを語っているとは、僕には思われない。有名な「私の個人主義」では、自由には責任がつきものであり他人の自由をも尊重すべきであるということ、「現代日本の開花」では、維新後の西洋化は内的要因ではなく外的要因から進んでおりそれはイビツであるということ、だいたいそんなことを言っているのだけど、それって21世紀に生きる人間が読んで「嗚呼! 確かにその通りだ!」って感嘆するものでもないでしょう。
ということでこの本は、内容は置いといて漱石の語りを味わうものではないか。漱石の小説が好きであれば、小説の原型とも言うべき彼の思想の一端がかいま見えて興味深いと思うが。
紙の本
自己本位の境地に9歳にして到達していた私
2009/12/22 11:49
18人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は小学生の頃から「他人からどう見られるかどうかより、天地神明に誓い自分自身恥ずかしいことをしていないかどうか」を指標に生きてきた。これは海軍士官学校を経て海軍大学を卒業した祖父から教わった「五誓」の影響が大きい。だから私は死の直前に漱石が達した「自己本位」の境地に、既に齢9歳にして到達していたことになる。常に他人の目を気にし、他人から自分がどう評価されているかばかりを気にして過ごしてきた漱石。んなことだから胃潰瘍になって早死にするんですなあ。健康にとって最大の敵はストレスなんだそうです。もっともこれを妻に伝えたところ「あんたはストレスないかもしれないけど、周りはストレスだらけよ」とのコメントが返ってきた(笑。
紙の本
内容とともに、話術の上手さが目立っている
2023/04/28 06:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石晩年の講演集であり、『道楽と職業』『現代日本の開化』『中味と形式』『文芸と道徳』そして『私の個人主義』の五つの講演が収められている。いずれもその内容とともに、話術の上手さが目立っている。 明治維新から間もなく半世紀を迎えようとする当時、日本人は、そして日本社会はどのような変化を遂げてきたのか。その評価をどう行い、いかに生きていくべきか。漱石自身が悩み、死を乗り越えて至った想いを様々なテーマを切り口に述べている。それは現代の我々にとっても十分に価値あるものとなっている。