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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1979.1
  • 出版社: 講談社
  • レーベル: ブルー・バックス
  • サイズ:18cm/202p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-06-117973-X

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新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか (ブルーバックス)

著者 村上 陽一郎 (著)

新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか (ブルーバックス)

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新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか

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評価内訳

紙の本

「科学」の客観性が崩れ、宗教や哲学と融合する時代に

2008/09/20 08:59

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 現代の科学は、中世的なキリスト教の迷妄から脱することで
生まれた。
 客観的な「データ」を蓄積することで理論が生まれる。技術
や学問の進展によってより多くのデータを獲得することができ
るようになり、科学は発展をつづけてきた--
 これらが一般的な「科学」の見方である。

 これらの俗説は本当だろうか? というのが筆者の問題提起
だ。
 キリスト教の迷妄から脱することで科学が生まれた、という
説については、ニュートンやガリレオやコペルニクスやケプラ
ーといった、近代科学の父とされる人々はいずれも熱心なキリ
スト教信者だった、という事実が提示される。自然界
にはたらく神の摂理を知るために、彼等は天体を観測し、理論
化し、重大な発見をした。
 キリスト教からの離脱が科学を生んだのではなく、キリスト
教的な「偏見」こそが科学の基盤になったのではないか。そう
考えると、全世界のなかでヨーロッパだけに近代科学が生まれ
た理由の説明もつく。キリスト教と、ギリシアやイス
ラム圏域の文化がまじりあった特殊な状況が科学を生んだとい
う。
 科学がキリスト教から離脱するのはフランス啓蒙思想の時代
になってからのことだという。
 では、客観的「データ」というのはあり得るのだろうか。老
女にも若い娘にも見える絵を示し、見る人によってデータの受
け取り方は異なることを示す。
 同じ景色を見ても、人によって見ているもの、見えるものは
異なる。個々の人の理論や感受性といった枠組みがまずあって
データもそれによって変化する。「客観的なデータ」はあり得
ないのではないか……という。
 でも、そう断じてしまっていいのか、という疑問もないわけ
ではない。
 デカルトは「目の前にあるこの景色は夢かもしれない。自分
の手も指も夢かもしれない。でも、夢かもしれないと考える私
、の存在は確かだ--」と考えてコギト(我思う故に我あり)
にたどりつく。デカルトがもうひとつ「確か」と考え
たのは「延長」だ。色やにおいや音といった感覚器官によって
感受するものは不確かだが、「長さ」や「広さ」という空間(
延長)は確かなものではないか、と考えた。
 「若い娘にも老婆にも見える絵」は、「○○の絵である」と
いう定義は感受性というフィルターを通すぶんだけ「不確か」
だが、「幅10センチ高さ20センチの紙に延長50センチほ
どの線が描かれている」といえば「確かなデータ」と
言ってもよいのではないか。デカルトの考えだとそうなるはず
だ。
 カントはもう少し緻密に考えた。自らの感受性と知識の蜘蛛
の巣にひっかかるものだけを人間は「事実」として認定できる
が、そのほかは認識さえできない。
世の中には「客観的事実」はたしかに存在するのだけど、人間
ははずすことのできない色眼鏡をかけてそれらを見ている(自
分の蜘蛛の巣にひっかかるデータだけを感じとる)から、「事
実はこんなものだろうな」と想像するしかない。
 ではデカルトのいう「延長」は「確かなデータ」なのか?
 ユークリッド幾何学をはじめとする近代の科学では、三角形
は三角形であり、1メートルの長さは1メートルであり、1時
間は1時間である。それを覆したのが相対性理論だった。光速
に限りなくちかい世界では、速度によって「長さ」も「時間」
も伸縮し、その状況を外から見れば、図形の形はピカソの絵の
ようにゆがむことになる。
 「時間」でさえも絶対的ではない、という結論になってしま
った。
 だから、「どの時代にもつうじる客観的なデータなどありえ
ない」という筆者の結論は科学的にも正しいのかもしれない。
だって、地球の速度が変化すれば、長さも時間も変わってしま
うのだから。

 科学的データの客観性は崩れ、データの蓄積によって科学が
進化する、という考え方はこうして崩れた。哲学の分野では、
歴史の進化を前提とする近代哲学に疑問を呈して、どんな認識
も理論も科学も、その時代の認識の枠組みの影響をま
ぬがれることはできず、絶対的に客観的な認識などできようが
ない、という「構造主義」が生まれる。
 自然科学と社会科学と宗教がもう一度融合する時代になりつ
つある、と考えたほうがよさそうだ。

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紙の本

けして古くはなっていない科学論 … 今でも常識を揺るがせる問題提起

2007/08/29 19:43

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SeaMount - この投稿者のレビュー一覧を見る

科学論は、科学の発展を振り返ることから生まれる。したがってこの本は、科学史の話でもある。科学史は一筋縄ではいかない。科学の中での論議は、新しいデータなどが出てくれば決着の付くことが多いのだが、その歴史となると、一般の歴史と同じく、捉え方により様々の見方が出てくる(※)。だから、そんなややこしいことに踏み込んで頭を混乱させるより、科学のたどり着いた成果の話を楽しんだ方がいいという気もしてしまう。でもやはり気になる。それは、科学はこれからも進歩するし、その未来を考えるには過去を知ることが必要だからだ。

村上陽一郎は、日本のこの分野の第一人者だといっていいと思う。著作も多い。その中で、この本は、某有名ネット書店では一番売れているという。もう、28年も前の本である。2006年までに41刷を重ねている。

売れている第一の理由は、「序に代えて」にあるように、中学生にもわかってもらえるように解きほぐして説明しつつも、内容の水準を落としてはいないところにあるのだろう。構成もシンプルで、「科学的なもの、人間的なもの」という序章に続く2つの章だけから成る。

「第1章 科学についての常識的な考え方」で述べられたことが、今でも常識であろう。常識というだけあって、すっきりしていて理解しやすい。それは、科学は、客観的データの積み重ねにより段階的に進歩していくというものである。しかし、その常識は第2章でひっくり返される。

「第2章 新しい科学間のあらまし」は、2つの節から成る。「第1節 文化史的観点から」で主張されることの中心は、キリスト教が、自然科学の生まれた直接的な原因になっているということである。これは、常識に反する考え方であろう。

全知全能の神が創ったこの世界は、合理的に創られているに違いないといういう「キリスト教的偏見」がなければ、ガリレオもニュートンも、その発見はなかったというのである。それが、18世紀の「聖俗革命」(これは著者の提唱した言葉)により、神のことが「棚上げ」され、故意に忘れ去られたのだという。

「第2節 認識論的観点から」では、まず、常識で考えられているように、「事実」が科学理論を造るのではなく、科学理論が「事実」を造るのだということがいわれる。たとえば、「ここに肺ガンの病巣がある」ということは、専門家の病理学の理論に基づいた知識が前提となって「事実」となるのある。あるいは、なにかの還元反応で出た酸素の泡を見た人は、古来いくらでもいたはずだが、「酸素を発見した」ということは、酸化=還元の理論があって初めていえるのである。このことがこの本でいいたいことの一つの中心だという。

次に、「事実」の見方さえ変えてしまうような科学理論の変換が、どのように起きるかの問題が取り上げられる。トーマス・クーンが、その著書で、そのような科学理論の変換を「科学革命」と呼んだことが紹介される。今や、いろいろな所で使われるようになった「パラダイム・シフト」のことである。しかし、著者は、この理論には変更を加えなくてはならないと考えているという。クーン自身、その後、誤解を招くことが多い「パラダイム」という言葉を使わなくなった。この問題は、出版から30年近くたった今でも決着がついていない。このあたりのことは、『ウィキペディア』の「パラダイム」の項に詳しく書かれている。

著者自身「序に代えて」で断っているように、ここで書かれたことは問題提起なのである。この本を読んだ人が、「瑞々しい稔りをたたえた科学観の世界を切り開いてくだされば、著者としてこれほどの喜びはありません」というのである。しかし、「瑞々しい稔り」が得られたとはいまだいえないのである。それゆえ、何が問題となるのかを理解しておくために、この本を読むことは、今でも意味があるのである。

※ 日本の近代史など、いろいろと論争が行われていますが、世界史の捉え方も様々で、以下の様な本には目を開かれます。
   岡田英弘『日本人のための歴史学―こうして世界史は創られた!』
   岸田秀『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』
岸田秀は、この本の前提となっている『一神教vs多神教』のなかで、科学は、(マルクス主義と同じく)、キリスト教の異端だといっています。

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2004/09/27 03:40

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2006/04/28 09:51

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2009/03/22 05:07

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2011/01/07 23:35

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2010/05/21 22:48

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2011/01/16 23:00

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