紙の本
唯一最高の金字塔
2001/03/31 18:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:谷池真太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ただひとりの乗員を目的地に届けるだけの燃料しか積んでない宇宙船に密航者がいたとしたら、選択肢はひとつ、船外廃棄。だがそれがたったひとりの兄に会いたさに密航した美しき少女であったとしたら……。
現在では使い古された設定であるが、元祖はこの作品である。ちなみにこのトム・ゴドウィンという作家、これ以外に代表作といえるものはない。もし「冷たい方程式」以外の彼の作品に出会っても、この作品を少しでもおもしろいと思ったならば絶対に読んではいけない。
余話:
ずっと品切れ・重版未定だったのに二十一世紀フェアとやらで重版されてしまった。一昨年定価以上の金を払って買ってしまった私はいったい何だったんだ。
紙の本
ハズレの少ないSF入門編
2006/02/12 22:30
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tujigiri - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFに興味はあるけど、長編となるとなかなか手が出にくい。
そんな人にはこの本がおすすめです。
長く日本のSFシーンを牽引し続けてきたSFマガジのが厳選した中短編集である本書は、いわゆる御三家のうちのアイザック・アシモフを筆頭に、当ブログでも取り上げた「タウ・ゼロ」 のポール・アンダースンら6人の作家の手になる作品が収められていて、宇宙を舞台にしたものやタイム・スリップもの、超能力ものなど、サイエンス・フィクションのエッセンスを抽出したバラエティ色豊かなアンソロジーとなっている。
収録内容は以下の通り。
「接触汚染」キャサリン・マクレイン(マクリーン)
「大いなる祖先」F・L・ウォーレンス
「過去へ来た男」ポール・アンダースン
「祈り」アルフレッド・ベスター
「操作規則」ロバート・シェクリイ
「冷たい方程式」トム・ゴドウィン
「信念」アイザック・アシモフ
なかでも表題作の「冷たい方程式」は、辺境の惑星に緊急救急物資を届けるべく、ギリギリ片道分の燃料しか積まずに母船から射出された小型宇宙船に定員以外の人間が潜り込んでいて、無情にもその少女を宇宙空間に放り出さなければ物資を必要とする多数の人間の命が失われるという絶対状況のもとで、苦渋の決断を迫られるパイロットを描いた問題作だ。
そもそも大型宇宙船を準光速で航行させるテクノロジーがありながら、緊急用とはいえ小型宇宙船に神風特攻隊程度の航行能力や積載量しかないのもおかしな話だが、部分的に現代の宇宙技術に近いそういった前提条件を受け入れたならば、この物語の持つ深刻なテーマ性が推し量られるだろう。
あなたなら、この結末をどうとるだろうか。
紙の本
やはりSFは発想が勝負
2003/03/02 05:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hybird - この投稿者のレビュー一覧を見る
50年代に発表されたSF短編7編のアンソロジー。
やはりSFは発想が勝負。まして短編なら言わずもがな。7人の著者から再録の少ない良作を編集してるので、いろいろな切り口で楽しめるはず。
古いからといってあらどるべからず。特に有名な表題作だけでも、話の種に読む価値はアリ。
楽しめます。一度ドウゾ。
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急病が発生した調査開拓星へと薬品輸送を急ぐ連絡艇。
ギリギリ一人が到着できる燃料しか積載しない連絡船には密航者がいた。
密航者は「調査開拓星に従事する兄を訪ねようとする少女」
ただ兄を慕い何も知らぬ少女、しかし
「密航者は宇宙空間への強制排除」が義務付けられていた...
読者自身も「救い」を求めて読みすすめていくことになります。
文末の「空白」がこんなに虚しく感じられた本はありません。
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「接触汚染」(キャサリン・マクレイン)、「大いなる祖先」(F・L・ウォーレス)、「過去へ来た男」(ポール・アンダースン)、「操作規則」(ロバート・シェイクリイ)、「冷たい方程式」(トム・ゴドウィン)、「信念」(アイザック・アシモフ) 以上7編を収録。
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複数作家からなる7本のSF短編集。
「接触汚染」・・・全員の見た目に差異がない場合の恋愛観ってどうなるかな、後日談でもあると面白そう。
「冷たい方程式」・・・世間を知らない少女のささいな過ちが迎える結末。淡々と描かれているように思うがここに至ってはこういう決断しかないのだろうな思った。表題にもってくるだけあって印象にいちばん残る作品。
「信念」・・・アシモフの作品。真摯な物理学者が超能力としか思えない現象を自身が行えたならどういう反応をするか。
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複数の作家が書くSF短編集。
表題作の内容は7人の人間を助けるために一人の無垢な少女を犠牲にしなければならない話でした。
死にゆく少女がこれまでいかに自分が幸せであったかを実感し、自分の軽率な行動で家族や友人を悲しませることを嘆く…というのが凄く良かった。
後味は悪いんだけど凄く密度が濃い。読んでいて溜息だ出そう。
この設定使ってダブルパロディしてみたいな。(←)
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■短編集のうち、冷たい方程式だけ読んだ。
■マリリンが死を受け入れるまでの心境の変化に引き込まれた。
最後に兄と話す前の台詞には、自分もこういう気持ちで
生きていかないといけないと感じさせられた。
■どう考えてもEDSのシステムはおかしい。密航することの罰
として死は重すぎる。『彼』は密航者の目的が金儲けの類で
あったら迷わず殺していたというが、悪巧みの罰としても
死刑は重すぎるだろう。
彼はEDSのシステムに不条理なものを感じていた。帰艦後、
彼はシステムを変えるべく行動しただろうか。
■自分がパイロットだったら…
?彼女の話を聞かずに即座に殺す。
?彼女を殺す。帰艦後に、密航者を殺さずに済むよう
システムを変える。
?彼女の代わりに自分が死に、彼女にこのシステムを
変えることを託す。
■どうしても読みたくて、駅から走って図書館にいった。
閉館時間ギリギリだったけどどうにか間に合った。
その日のうちに読了。
読了日:2009/04/28
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海外SFに挑戦してみよう第二弾。で早々に挫折。一気に読めたのは表題作のみだったかな…。突っ込みどころは多々あれど、さすがSFの記念碑的名作だと思いました。粗筋知らないまま読みたかった…!(わたしは死ぬようなことはしていないわ――死ぬようなことはなんにも――)
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『冷たい方程式』(トム・ゴドウィン他、伊藤典夫、浅倉久志編、1980年、早川書房)
短編SF小説集。
『冷たい方程式』は、刑法の「カルネヤデスの板」の関連で知り、読んでみようと思いました。
ストーリーは、定員以上は乗ってはいけない宇宙船に、宇宙飛行士以外の人(密航者)が紛れ込んでいる。規則では、このような場合、その者を抹殺しなければならない。
そこで、宇宙飛行士はその者を抹殺しようとするのだが、その者は他の星に滞在している兄に会いに行くために宇宙船に乗り込んだ女の子だった――
民主的な国の刑法では、人は殺してはならないと定めている。本書の場合、殺人の違法性が阻却されるのだろう。だが、違法性がないからといって、人を殺すという行為が容易になるわけではない。
そこには葛藤や疑問があるだろう。本書に出てくる宇宙飛行士もその葛藤に悩むこととなる。だが、規則は規則である…
(2009年8月2日)
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約50年前のSF短編ばかりでまとめられたアンソロジー。いたる所でモチーフとして取り上げられている名作「冷たい方程式」を今回初めて読む事が出来てちょっと感動(^o^)。個人的には「接触汚染」「信念」もお気に入りです(^-^)
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表題作が感動的に良かった。短編SFの傑作だと思う。方程式モノという一つのジャンルを作ってしまったほど。
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話は全部よかったです。
それぞれがジャンルが違って読み応えがありました。
接触汚染はハラハラ。
大いなる祖先はへぇ!なくはないよね…。
過去へ来た男はまぁそうなるよね><
冷たい方程式は女の子の気持ちになってキューってなります。
信念は言葉巧みですごい。
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SFならではの「グロテスク」さを存分に味わえる短編集。SF初心者に是非読んでいただきたいです。
表題作は言わずもがなの名作なので、紹介は省略。鴨的におススメなのは、巨匠・アシモフの「信念」。じわじわと来ます(笑)
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知る人ぞ知るトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」を読みたくて買った。
一人分しか燃料を積んでいない船に、兄に会いたいあまり子供が密航していたら…とあらすじは何てことないのだが、タイムリミットまでの限られた時間の中でのパイロットとその女の子の感情描写があまりにもリアルで、域が詰まりそうになった。
それ程奇抜でもないたった1つのシチュエーションで、ここまでドラマを見せられる作品は滅多にない。
他の短編も、巨匠アシモフを始め読み応えがあるが、キャサリン・マクレインの「接触汚染」はおすすめ。
意図的にのんびりとした前半から、徐々にミステリー性を深め、謎が解けても救われない。
とんでもない結末には、自分だったらどうするか?と考えずにはいられなかった。