紙の本
だれにでもわかる真の哲学書
2001/11/24 11:43
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ダメ太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
故大森荘蔵氏の代表作である。現代の日本には哲学を研究する学者は掃いて捨てるほどいるが、本当の哲学者はほとんど存在しない。著者はそんな数少ない哲学者の一人である。
哲学書というと、難解な文章で書かれているものを想像するが、本書はごく身近な言葉だけで、だれにでも読むことができるように書かれている。それにもかかわらず、そこで思索されている内容は深遠なものであるところが秀逸なのである。
秋の夜長を哲学的思考に耽るのもいいのでは。
紙の本
物事を考える上での根本思想となります。
2020/09/26 18:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
凄い本に出会えたな、というのが最初の感想です。これから先、死に絶える迄の自身の幹となるバイブルになりました。
日常よく関わる事象なども含めた様々な題材が選出されて述べられています。どの題材も腑に落ちる結論でした。文体自体が滔々と流れるような比較的平易なものであり、更に意外と理屈を捏ね回したような表現も無いというのが拍車をかけています。
物事の道理を適切に説いている、そんな一書と言えます。人に薦めたくなります。
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認識論を舞台に透徹なる思索を展開した哲学者大森荘蔵。朝日ジャーナル誌に連載されたエッセイを集成した書であるが、その思索の絶妙さには感服。真の知性とはかくも凄まじいものか!鏡は何故上下逆に写らない?過去は何処へ言ったか?赤いサングラスをかけると何故赤く見える?←何が謎か解らないでしょ?読んでごらん!!
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西洋の思想や日本の思想、などといった哲学ではなく、自分の生きている世界について直接自分の頭で考えたいと思う人にとっての準備の書となるでしょう。
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第18回:降水確率0%なのに雨が降った
2章・「確率と人生」〜...(07.02.21)
第20回:『一瞬』って何秒くらい?
14章・「時を刻み切り取る」〜...(07.02.26)
第25回:人は同じ川に2度足を浸す事はできない
10章・「同じもの、同じこと」〜...(07.03.07)
第26回:バカと天才は紙一重
6章・「「論理的」ということ」〜...(07.03.09)
第28回:声で人を殺せるか
11章・「身振り、声ぶり」〜...(07.03.11)
第35回:「根はいいヤツ」というのが当てにならない理由
4章・「真実の百面相」〜...(07.03.30)
第36回:なぜ『他人の痛み』は痛くないのか
9章・「ロボットが人間になるとき」〜...(07.04.07)
第37回:記憶と写真はどこがどう違うのか
3章・「記憶について」〜...(07.04.14)
第40回:夢を食べて生きていけるだろうか
1章・「夢まぼろし」〜...(07.04.27)
第43回:レンズに何が映るのか
12章・「逆さまメガネと股のぞき」〜...(07.05.09)
第47回:ニューロン興奮する、故に我あり?
13章「古くて新しい生理学」...(07.06.02)
第48回:『悲しみ』は泣き顔の『どこ』にあるのか〜名前と相貌
5章「ミリンダ王の車」...(07.06.09)
第49回:心の『中』ってどこさ〜心身二元論の亀裂
「はじめに」...(07.06.15)
第54回:心の中って『どこ』?
第15章「心の中」...(07.08.09)
第57回:鉄腕アトムはなぜ人間でないのか
第11章「身振り、声振り」...(07.08.27)
第62回:カノジョが望んだボクの世界〜セカイ系な『現実』
第一章「夢まぼろし」...(07.09.08)
第76回:行列のできる宝くじ売り場
第2章「確率と人生」...(07.12.13)
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これは文句なしにおもしろい。読みやすく、スリリングな思想。自我論・独我論、時間論、心身問題などなど、哲学入門としての「お役立ち」さもあると思う。、、、と言うと、筆者および関係者に叱られそうだけど。(200502)
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彼は非常識極まりないことを平然と言うが、その非常識に反論するところから我々の哲学が始まる。すごく議論がうまく文章もうまいので、いかに言いくるめられないようにするかが至難の業。
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一年に何度かは手に取る珍しい本。とても平易な言葉で書かれていて、哲学書とは思えないほど優しい語調で優しい表現。人に難しい話を退屈しないように、しかもちゃんと理解できるように聞いてもらうにはこういう書き方をしなきゃいけないんだなととても勉強になる一冊。
身近な生活の中に哲学的な態度を埋め込んで、日々を哲学するという、ある意味贅沢な生き方の指南書とも言えるか。
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「哲学モドキ・入門書のタグイ」を濫読(乱読)し、哲学者達の難解な考察・専門用語(造語?)を理解したフリの末に「哲学とは概念をもてあそぶ空虚な学問」という印象を持ち、このごろは自爆していた。この書籍は、当然と思い込んでいる自然科学が描く世界観を「心・精神の存在」という切り口で、ほとんどは日常の言葉を使い「テツガクヲスル」ことを再認識させてくれた。好感を持って読了。
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『だまされない議論力』吉岡友治 の巻末の読書案内に出ていたもの。そのうち読む予定-「「論理は繰り返しである」という原理をわかりやすく書いた名著。もちろん他我概念・時間概念などについての議論も明晰」
…読んでも理解できなさそうだけど、一応メモ。
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人の真実はどこか奥深くかくされているのではない。かくそうにもかくし場所がないのである。その真実の断片は否応なく表面にむきだしにさらされている。
人の真実は水深ゼロメートルにある。28
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ヨウカンあっての切り口であって切り口あってのヨウカンではないのである。それと同様、持続あっての切り口であってその逆ではないのである。108
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円から丸さを剥ぎとることができようか。118
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だが「意志」と呼ばれるものの本性はこのようなむしろ人目をひかない行為の中でかえって明瞭に見てとれるように私には思われる。236
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過去はわれわれの生死に超然として在る、あるいは無いのではなく、われわれが過去を負うその負い方が過去の在り方そのものであること、このことが浮びでてくるのではあるまいか。257
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ものを考えるひとの原点にして頂点。
特に池田某、永井さん、野矢さんはこの方の流れとともにいるということが改めてわかった。ものを考えるという点でいえば、養老さん、なだいなだも同じ系譜にいると思う。
そのくらい、ものを考えるということの連続性、バトン、宮沢賢治のいうところの交流電流の明滅は、続いていく。
時間の作用、夢と現実、自分と他人、それらは存在するということ、ことばが事実として存在してしまうという一点に尽きる。ひとはコンピュータのような記録媒体ではなく、レンズのような存在。過去を思い出すということは、ないものを思い出しているのではない。ほんとうに存在しないものは思い出せない。思い出すとはすでに何かが存在してしまっている以上、実体のないものではないのではないか。
そうすると、時間とは一体なんなのか。今とは。今?いったい今を問うこれは一体何なのだ。疑問は尽きない。疑問を見つめながらも時間は流れていく。変化していく
。川は流れているが、川は川としてそこにある。あってしまう。
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哲学者・大森荘蔵の雑誌寄稿のエッセイ集。
科学や現代社会常識の世界観と、東洋思想の世界観の間くらいに自分が生きている現実のリアリティを感じている僕としては、この人のテーマはとても興味深い。
久しぶりに読む哲学者の文章は、積み木のようだと思った。一般の人が生活の中でなんとなく積み上げた認識の山を、一番下から一つ一つ手に取って、丁寧に積み上げていく。その性質上、短いエッセイは積み木がまだ上の方まで積み上がらず、少し退屈してしまう感がある。けれど巻末にいくつか添えられたもう少し長い論考は、この積み木をもう数段上まで積み上げることができるので、一気に見たことのない世界に入る。面白い。
もしこれを読まれる方がいれば、最初の15ほどのエッセイで挫折しそうになったら、その前に最後の論考を読まれることをお勧めしたい。「18.世界の眺め」「20.心身問題、その一答案」「21.過去は消えず、過ぎゆくのみ」は、文句なしにおもしろかった!
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我々は自分の脳を通してみた世界の中に生きている。これは、なんとなくわかります。大森荘蔵「流れとよどみ」、哲学断章、1981.5発行。「朝日ジャーナル」に掲載されていたそうです。なんと七面倒くさい論旨w。いわゆる哲学の、私の嫌いな一面です。飛ばし読み、拾い読みで終わりました。
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大尊敬している方から、イーガンの『万物理論』の感想として「大森荘蔵と野矢茂樹」というキーワードを頂戴したので、これは読むしか…!!となり読み易そうなものを借りてまいりました。
野矢先生は、野矢哲といわれる名物授業を1年生の時に取っていたのですが(めちゃくちゃ教室を覚えている笑)、授業は面白かった!という感想のみで、中身は覚えていないのが残念というか反省ものです…今は退官されて別の大学にいらっしゃるんだな…懐かしいなあ…
本書を読み進めると、これどこかで見た表現かもと思うことが度々あったのですが、野矢先生の授業で見たもののような気がする。他人の痛さは想像できないとか。
以下好きだった箇所
3. 記憶について
しかし、では死んで久しい亡友を思い出すときもその人をじかに思い出しているのか、と問われよう。私はその通りであると思う。生前の友人のそのありし日のままをじかに思い出しているのである。その友人は今は生きては存在しない。しかし生前の友人は今なおじかに私の思い出にあらわれるのである。…そのとき、彼の影のような「写し」とか「痕跡」とかがあらわれるのではなく、生前の彼がそのままじかにあらわれるのである。「彼の思い出」がかろうじて今残されているのではなく、「思い出」の中に今彼自身が居るのである。(p.23)
13.古くて新しい生理学
われわれの住むこの一つしかない世界を科学的に描いたものが物質的生理学、その同じ世界を知覚的に描いたものが感覚の世界、そしてこの二つの描写はただ「重ね描き」さるべきものであって、一方が他方を生んだり感じたりする必要はない。そのように思われる。(p.104)
15.心の中
恐怖と夜の森の話
ありもせぬ「心の中」があるとすれば、それはただありもせぬ心の中でしかあるまい。(p.120)
17.ロボットの申し分
ということはすなわち、あなたが人間である限り、正気の人間である限り、他人に心を「吹き込む」ことをやめないということです。この「吹き込み」は人間性の中核だからです。このお互いの「吹き込み」によって人間の生活があり人間の歴史があるのです。それによってお互いの人間がお互いを人間にするのです。…どうして私にも心を「吹き込んで」くれないのですか。いや既に吹き込んでいることを認めて下さらないのですか。
どうか今少しあなた方の心を開いて私もあなた方同士の間のアニミズムの中に入れて戴きたい。それによってあなた方の人間性もより豊かになろうというものです。(p.140-141)
21.過去は消えず、過ぎゆくのみ
だが「過去」という言葉も失せるとき一体過去について何を語ることができるのだろうか。それは生の言語で死を語るのに似たことだからである。(p.278)