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死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇 (岩波文庫)
フランス文学の魔術師テオフィル・ゴーチエ(1811‐72)の傑作短篇5篇を選び収める。ヨーロッパでもっとも傑れた吸血鬼小説の一つと賞される「死霊の恋」、青年のよせる烈しい...
死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇 (岩波文庫)
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商品説明
フランス文学の魔術師テオフィル・ゴーチエ(1811‐72)の傑作短篇5篇を選び収める。ヨーロッパでもっとも傑れた吸血鬼小説の一つと賞される「死霊の恋」、青年のよせる烈しい思慕に古代ポンペイの麗人が甦える「ポンペイ夜話」など、いずれも愛と美と夢に彩られたあでやかな幻想の世界へと読者をいざなう。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
死霊の恋 | アレクサンドル・アントノーフ 出演 | 5−61 |
---|---|---|
ポンペイ夜話 | ニーナ=アガジャーノ・シュトコ 原作 | 63−112 |
二人一役 | ジョン・リード 原作 | 113−130 |
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死霊と悪魔の間の快楽
2009/08/01 15:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
「死霊の恋」は創元推理文庫「怪奇小説傑作集」にも収められているインパクト強い作品。美貌と恐ろしい力を持った女と激しい恋に落ちるが、それは女の死後になって成就する。女はその甘美な時間を永続させるために、さらに恐ろしい行為を求めてくる。しかしこの話でいちばんすごいのは、死女に誘惑される司祭の方でそれを恐怖と感じておらず、むしろ儚く燃えた記憶として残っていることだ。恋のためには死も背徳も恐れないことが、まったく当たり前のことのように語られる。周囲からもそれを責められることもなく、しかしまあ自分が死んじゃってはねえ、というのが心配されるせいぜいのところ。たしかにその官能の魅力は、指が触れられただけ全身が震えるような、すべての至上とするのも当然と思われるだけの夢のような時間を約束する。
「ポンペイ夜話」では、ポンペイ遺跡から発掘されたビーナス像のひとかけらの美しい曲線に魅せられた男が、なんと火山噴火前のポンペイの町に彷徨い込む。かなりフェチズム的な要素もあり、またこれも死者との恋とも言えなくもない。主人公は自分の置かれた状況はさておき、愛の世界にどんどんのめり込んでしまうのがなかなか実直だ。
夢の世界から現実へ侵入してくる死霊、あるいは古代都市の滅亡というシチュエーションは、そこに幻想的な美でもあるが、未来を感じることのできない刹那的な美でもあり、そのために更なる昂まりがもたらされる。とめどのない享楽は恐ろしくなるほどだ。
「コーヒー沸かし」も、束の間の逢瀬がもたらした歓びをこの世の外に求めざるを得ない結末は残酷だが、僅かな時間の牢獄に囚われて生きることへの憧れをそそる。
幻想そのもののまがまがしさよりは、その働きによって露出され肥大していく歓びを謳っていくといった作風だろうか。一方で「一人二役」「オニュフリユス」では、狂気が幻想を生むのか、悪魔が狂気をもたらすのかを揺れ動く。快楽にしろ苦悩にしろ、生気に溢れた物語たちだ。