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紙の本
井上ひさし全著作レヴュー56
2011/05/03 11:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1980年1月~1981年12月まで「朝日新聞」文芸時評欄に掲載された文章を収録。
力量のある作家なら、掲載媒体や読者層を鑑みてその題材やスタイル、読み易さ(難易度)を選択していくだろう。井上ひさしはエッセイも夥しい量を書いているが、『家庭口論』(「婦人公論」連載)や『日本亭主図鑑』(「朝日新聞」日曜版連載)などは、その狙いとスタイルが上手く一致した事例である。では、かの「朝日新聞」文芸時評に連載した本作はどうかというと、何て肩肘張った難解晦渋な文章なんだと、ファンとしてはぼやきたくなる。
その膨大な読書量と対象の広さと独自の視点から、当代随一の「読み巧者」と一目も二目もおかれている井上ひさしが文芸時評を担当するのだから、通常のお堅い「時評」とは異なった、融通無碍の硬派軟派両刀使い清濁併せのむ評論が読めるのかと思いきや、何ともはや観念的なお堅い文章ばかりが並んでしまった。余りこういう言い方はしたくないが、「朝日」の文芸時評に書くというので、井上ひさしですら余計な力が入ってしまったのだろう。連載最終回で「付け焼き刃の竹馬をはいて批評家ぶるのはやめ、普段の読書生活をできるだけ拡充させながら、書物をとおして日本語=ことばについて考えてみよう」と著者は自ら記している。されど、さすがと唸らせる鋭い分析は随所にあるものの、総体として裃を着た余りに堅苦しいスタイルから最後まで解脱できなかったのが、残念である。