紙の本
小野不由美さんの『屍鬼』と合わせて読むとよい!
2007/06/07 06:29
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投稿者:Yostos - この投稿者のレビュー一覧を見る
初期のスティーヴン・キングの作品、原題は『Salem’s Lot』。
かつてブラム・ストーカーが描いた『ドラキュラ』のような吸血鬼が現代に現れたら?というのは今では割と使い古された設定だけれど、これを70年代中期にリアリティを持って描いているのだからやはり先駆的な作品だと思う。
描かれているのは吸血鬼により町が崩壊して行く姿だが、アメリカの地方都市で軍隊に入るしか生活の場がないフリントのような町を重ねてみることもできる。とするとここで吸血鬼として描かれているものの意図は……というのはちょっと読みすぎだろう。
何故こんな本を今ごろ読み出したかというと、以前読んだ小野不由美さんの屍鬼』を最近読み返し、これがこのスティーヴン・キングの作品のオマージュであることに気がついたから(最初のページに”To Salem’s Lot”って書いてあるのだけどね)。
こちらのほうが、日本のありそうな過疎の町を舞台にしているだけによりリアル。しかもあくまで善と悪の対決だったスティーヴン・キングの作品と比べると、こちらは最後はデビルマンのように人の本性の恐ろしさもでて、より怖く悲しい。
成人男子の一般的な血液量は約5リットル。これを一気に飲み干すことは無理。その前に血液の20%を失うとショック症状を呈するのでそれくらいの殺されるまでの吸血量だとすると、約1リットル。一回で殺されてしまうケースもあるが、大抵ヒロインの女性は数回に渡る襲撃を受けるので3〜4回で1リットルと考えると、丁度缶コーヒー一本分くらいを一回で吸われる勘定に……なんて怖いリアルに読ませるうんちくがたくさん出てくる。
暑くなってきたので、まずはスティーヴン・キングの作品、で次に小野不由美さんの作品を読むと良いかと。
紙の本
怖がりたい、あなたに。
2002/12/09 09:49
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投稿者:葉月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
わたしは、恐怖に鈍感な人間だとしばしば思う。
有名無名の多くのホラー映画を見たけれど、どれも「怖い」と実感出来るほどの恐怖感はなかった。
本に関しても、話題になったオカルト本や心霊体験集、ホラー小説をいくつか手にとってはみたものの、さしたる感動もなく記憶の彼方へと追いやられていった。
当時の自分は、正直「恐怖」という娯楽に落胆し、見下していたように思う。所詮人間が作り上げる恐怖などこの程度のものだ、と。そんな風に高をくくっていた。
そんな時、キングという作家を知った。
知らない人間はもぐりだ、と言われるほどに、すでにスティーブン=キングという作家は、日本でも有名なホラー作家となっていた。
「へぇ、そんなにすごいホラー作家の作品なら、一つ読んでみようじゃないか」
そう思って手にとったのが、この「呪われた町」だった。
家に帰って制服を着替え、さっそく部屋に寝転んで読み始めた。
最初の印象は、いやに読みやすいな、というものだった。読みやすいから、どんどん読み進んだ。
しかしページを捲るごとに、自分が緊張していくのが感じられた。
この緊張感はなんだろう?
わからないまま、まるで操られているように、一心不乱に読み進んだ。
母親の「ごはんよー」という声すら聞こえなかった。
いきなり肩を叩かれて、飛び上がるほど驚いた。
いぶかしげな顔の母親に、興奮しきった声でわたしは叫んだ。
「すごい面白い本を買っちゃった!」
夕食を終えると、また自室にこもって続きを読んだ。
読めば読むほど、手に力が入る。
結局その日の内に、上巻を読み切った。
半徹夜の頭で学校へ行き、またその帰りに同じ本屋へ寄って下巻を買った。……わたしの悪い癖だ。いつも上巻だけ買って、後で下巻も買うべきだったと後悔する。
眠い頭で、それでもまた熱心に下巻を読んだ。
背中がゾクゾクした。
読み進めるのにためらいがあるのに、読まずにはいられない。
何かに憑かれたように本を読むわたしを、家族が呆れた目で見ていた。
読み終わった途端、激しい脱力感と、まだ何かに追われているような、そんな感覚に陥った。
慌てて周囲を見回し、不浄へ向かう時も廊下の闇に怯えた。
—— わたし、怖がっている!?
初めての経験だった。
キングという作家のこの作品に出会い、わたしはようやく恐怖を知った。
紙の本
吸血鬼現る
2001/08/29 19:24
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投稿者:王様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
吸血鬼伝説を現代に甦らせるという大胆不敵な試みを成功させた傑作。古典的なディティールが、現代アメリカの田舎町で生き生きと再現されている。小野不由美が「屍鬼」でオマージュを捧げたのも記憶に新しい。
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キング自身は、この作品をブラムストーカーの『ドラキュラ』の「文学的イミテーションのようなもの」と語っているらしい。『ドラキュラ』よりもこちらの方がリアリティがある分、かなり怖い。
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キングオブホラー、Sキングの作品。先に紹介した「屍鬼」のヒナガタになった作品というコトで読んでみました。
小さな町、その規模が小さいホド大きなシガラミがある。だからこそ付け入るスキがある。
吸血鬼なんてイマドキ、ていわんといてや、そこにはそんな小さな町ならではの人間ドラマがあんねんで。この上巻、最初はとっつきにくさもあるが、長いめのプロローグて思てや。(つづく)
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いやー、恐かったな。けっこう何日もかかって読んだんだけど夜が来るたびに恐くなってあんまり読み進められないの。こういうの迫真のリアリティというのでしょうか。
メイン州の田舎町に吸血鬼が蘇る。亡者と、いち早く町の異変に気づいた主人公と冷静な少年達の対決物語。
吸血鬼ってのは招かれないと他人の家の中に入れないんだって。そういうとこ礼儀正しいよね。それとか日中は外出歩けないとかさ。だから昼の間に「こっち」は杭を打って回れるという救いがある。その点得体の知れないモノとの戦いはやりきれない。エイリアンとかプレデターとかお祈りの通じない相手は恐い。イスラム圏にもモンスターっているのだろうか。日本のおばけってあんまり大量に発生しないよな……うーん、こういう違いも面白い。魔を魔と見破った事典で大方勝敗は決まってしまってる。○○の仕業だ……と分かる印さえ見えれば、慎重に行動しさえすれば伝統のモンスターは恐くない……カナ?マーク少年の冷静さが好きだ。
下巻の感想にはネタバレあるかも。注意。'94
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小野不由美の「屍鬼」の外国バージョン。
小野不由美はたぶんこれを意識して屍鬼を書いたんだと思う。
というわけで読んだ。
母がこのヒトの本が好きで家にあったし。
感想は…夏留的には屍鬼の方が好き。
人間1人1人について細かく書いてあるから感情移入しやすい。
…って屍鬼の感想になってしまった。
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吸血鬼小説。傑作といって良いかと。小野不由美『屍鬼』はこの作品のオマージュ(実際、『屍鬼』の最初で献辞が捧げられている)なので、両方読み比べてみると楽しいかも。
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最初に読んだのはこれと「スタンド・バイ・ミー」でした。それ以降、結構夢中になってキングばっかり読んでいた気がしていますよ(笑)
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スティーブン・キングの作品を全部読んだわけではないけど、彼の作品の中で、一番好きな作品。
静かに、滅びていく街。怖くてせつない。
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初めて読んだスティーブン・キングの作品。
発売当時にハードカバーで読んだと思う。
当時は大藪春彦や西村寿行のハードバイオレンスにはまっていたが、「怪奇小説」(古っ!)系は小学生のころから好きで、久々の吸血鬼ものということで読んだのだが、怖かった。
キングの作品はたまに読み返すのだが、「呪われた町」は、2年に1度くらいの感じで繰り返し読んでいる。
キング作品のなかでは、ベスト10というよりも好きな作品トップ10には入る。
キング作品は、古本屋などで買わずに新刊で買って読んで欲しいと思う。
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現代版吸血鬼ものの傑作。
アメリカのありふれた田舎の村で次々と起こる異変。
昨日までの平和な毎日が、幸せな家族が・・・。
特に吸血鬼に訪問されて眷族にされてゆく過程の描写が陶酔的にすさまじくて、惹きこまれました。
恋人を奪われた男と両親を惨殺された少年が命からがら村を逃れて、決意を胸に故郷に帰って行く部分が特に、特に好きです。
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今さらS・キングなんて紹介しなくてもいいと思うのだけど、この『呪われた街』は「怖い」という点ではキングのナンバー1だと思うので挙げておく。
人にはそれぞれ「怖い」基準があって、虫とか死体とか暗い場所とか高い場所とかヘビとか霊とか…まあ、本当にいろいろあるのだけれど、その中でも怪物という点で一番怖いのは私は吸血鬼だと思う。例えば、ミイラ男とフランケンシュタインとゾンビと吸血鬼のどれかを選べと言われたら、迷わず吸血鬼から逃げる。だって、増殖するんですよ、吸血鬼。
ミイラ男はピラミッドの中にいた昔の死体がよみがえっただけだから、まあ逃げればいい。火をつけたら燃えそうな気もする。フランケンシュタイン(の造った怪物)は怪力の持ち主だけど、まあ仲間を増やす心配はない。ゾンビも、あれは死体がブードゥーの呪術で甦ったものだから、イージーに仲間が増えるわけではない…はずだ。だが、吸血鬼は血を吸われた人が吸血鬼になってしまうのだ。しかも、ネズミ算式に子−孫−曾孫と増えていく。怖い。非常に怖い。
この本は、小さな普通の街が、ある日現れた人間を装う吸血鬼によって密かに、しかし確実にじわじわと侵食されていく様子を克明に追った小説だ。登場する大元の吸血鬼は非常にスタンダードな吸血鬼で、紳士で人当たりがよく、人に招かれない限り相手の家には入れないという約束事に縛られている。だが、もう怖いのだ。死んだはずのあの人が、窓の外に立っている恐怖。わが子は死んだと分かっていても、ついつい自室に招き入れてしまう情の悲しさ。「なんでこんなことしちゃうの、わけわかんない」という不条理さのない人が人ゆえにとってしまう行動と、その結果の当然の帰結の恐怖。リアル過ぎて怖いのだ。
読んでいる間中、怖くて窓の近くを通る時は、意識的に窓から目を背けてしまったくらい、この小説は怖い。作品的な繋がりとしては、文春文庫から出ている『ペット・セメタリー』が一番近いかなと思う。
ちなみに、『呪われた街』も『ペット・セメタリー』も映画化されているけれど、出来としては『ペット・セメタリー』の方が数段上だと……。
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表紙を見るからにとても怖そうな表紙である。吸血鬼は人間の血をすって生き延びている、また吸われたものは吸血鬼になる。とてもリアリティあふれる一冊になっております。
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人物の描写が凄い。
その人の私生活まで想像出来る様な生き生きとした描写は、キングの小説に一貫して現れる魅力だ。