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紙の本
黄色いアメリカ「日本」は果たして可能か
2004/01/06 22:34
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はカナダで教鞭をとった量子化学の研究者で、アメリカ史学者ではない。この組み合わせには奇異な感じを受ける。著者がカナダに移住した当時の、今は昔の「大学問題」に対する自分なりの「答案」だという。決して新しい本ではない。単行本は1972年刊行だ。しかし著者が描いた事実は、時を経て、ますます鮮やかになりつつあるようだ。しかも我々の暮らしの上に。
「はじめに」に、こういう言葉がある。
北米インディアンの悲史をたどることは、そのまま「アメリカ」の本質を、くもりのない目で見さだめることにほかならぬ。…黄色いアメリカ「日本」は果たして可能かどうかを、未来に向かて自らに問いただしてみることである。
本書は、ベトナム戦争当時の有名なソンミ虐殺事件から始まる。小村落の無辜の農民家族450人の虐殺だ。「兵士達こそアメリカ市場始めての汚い戦争の犠牲者である」といった声がアメリカではしきりだった。
「良いベトナム人は、死んだ奴だけ。」というあの頃の米兵の言葉、実は「良いインディアンは死んだインディアン」という昔の将軍の言葉の焼き直しだった。
土地所有の概念のないインディアンを詐欺同然の手口でだまし、農業、たばこ栽培用の土地を奪い取る。戦いとなれば、分割して統治だ。
「裏切り者に手引きさせて酋長を捕らえる」という手口は、最近も中近東でニュースになった。毛布で天然痘を伝染させるという生物兵器を活用したのも白人だ。
酒を知らなかった彼等をアルコール漬けし、借金だらけにして、土地を奪う。
自分に言い聞かせるために「神の思し召しに従って」という「正当な理由」をつける。「神が撃てと命じた」というセリフも最近きいたような気がする。
戦わず、より勤勉に働き、英語を身につけ、法に忠実に暮らしたインディアンはどうなったろう。チェロキー・ネーションの結末がそれを示している。彼等は明治憲法に先立つこと50年前に憲法まで作った。独立国家など作られてしまえば、土地が手にはいらなくなる連中は組織破壊に狂奔する。おりしもチェロキー国内で金が発見される。ジョージア州は、チェロキーによる金採掘を禁じる法律を可決する。チェロキー側元首ロスの留守を狙って、傀儡の手により詐欺的な契約が署名されてしまい、強制移住となる。武力抵抗をせず、あくまで文化に同化しようとした結果、強制移住だったというのは余りに悲しい。
かの国と軍事同盟を結び、国債を買い続け、英語を学び、今やはるかな異国で異教徒との戦いに血を流そうとしている我々の運命は、チェロキーの人々とどれだけ違っているのだろう。何か良い解はあるのだろうか? これからもあの国と同盟を続けてゆく上で、本書は冷厳な必読参考書であるように思えてならない。