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紙の本
他に類を見ない、奇抜で独創的なプロットの犯罪小説
2005/04/14 23:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国海軍省の役人クライヴ・イーストンは、美しい人妻イザベルと恋に落ちる。駆け落ちしたいが、金がない。そこで、機密書類を盗んで敵国に逃げたと誤解されるような状況を作り出し、マスコミが騒ぎ立てたところで “無実” を証明、名誉毀損でマスコミを訴え、多額の賠償金をせしめようとたくらむ…という他に類を見ない、非常に奇抜で、独創的なプロットの犯罪小説。このプロットだけでも、充分読む価値がある。
また、不倫がらみの犯罪物でよく見られるような、暗くドロドロした雰囲気が全然ないのも気に入っている。パズルを組み立てるように、論理的かつ綿密に計画が立てられ、実行されていく筋運びも一因だろう。また、クライヴがイザベルに恋しながらも、決して恋におぼれず、最後まで自分を見失わない事も、本書がいやな話になるのを防いでいる。
なお、訳者あとがきによると、アンドリュウ・ガーヴの作品には、あらすじから予想される後味の悪さが全くないとの事。作風はやや地味だが、この作家、好きになれそうだ。