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紙の本
良質な笑いは「心のゆとり」から
2007/07/04 11:47
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年位前からか、日本人に笑顔が減ったのが気になっていたので、本棚にあったこの本をひょいと読んで見た。いやぁ、面白い。「民族の心は笑いの誕生とともにある。本書は笑いの歴史的考察、日常的笑いとそのニュアンスなど、笑いの諸相について薀蓄を傾けた好著」
著者、宇井無愁さん。昭和43年に書かれている。
「大量生産・大量消費の経済成長というみせかけの繁栄のなかで、日本人は多くの貴重なものを失いつつあるが、笑いもその一つといえる。粗悪な笑いの氾濫が笑いの価値判断を狂わせ、良質な笑いは、企業利潤につながらないために、しめ出されている。これが近年のお笑いブームの実体にはかならない。(中略)
笑いの価値判断を狂わせている原因は、笑い手の心に「ゆとり」がないからだろう。良質な笑いは「心のゆとり」から生まれる。「心のゆとり」が仲間意識をつくり出し、相互コミュニケーションを緊密にする。
われわれの祖先は、いまよりもつと貧しい時代にも、おおらかな心のゆとりをもち、いまよりもっとすぐれた笑いを、もっていたのである。現代の繁栄がみせかけだけでないなら、現代の日本人はもっと良質な笑いをもってよいはずではないか。このおびただしい粗悪な笑いの氾濫は、「ゆとり」を失った心の貧しさの現われとしか思えない。」
動物の中で笑うのは人間だけ。笑う権利を失ったら、人間は不幸になるだけ、との指摘。現代人は、すでにその権利を放棄してしまったのか?心配だなぁ。
「いっしょに笑えるということは、相互理解の第一歩。言論と批判の自由のないところに笑いは起こらない。
「キミはえろうやせとるやないか」
太ったアチャコがエンタツに向かっていう。
「ハイ、エエとこの子はみなやせてます」
エンタツは軽くうけて、ジロリとアチャコの体格を眺め、
「キミはまた、えろう肥えとるなあ」
これで客が笑うのは、エンタツのコトバに言外の意味をよみとるからで、笑い手側にも頭を働かて協同作業となるから面白いのだそうだ。
「視聴率が番組の価値を決定する商業放送では、安全度を狙って、もっとも鈍感な最低の笑い手に目安をおき、一方的に笑いをおしつけてくる。協同作業など期待できないし、最初から期待もしていない。」
日本の祭り、神々のゴマをすって、現世利益を頂くために、神人交歓のカミシズメ(鎮魂)を行なうのが、「まつり」であり、神に笑ってもらうために、滑稽わざが演じられた。「日本の神々が笑いを好みたもうたことは、天ノ岩戸神話にもあきらかで、胸乳とホトをあらわしたアメノウズメのストリップに、神々は手をうち笑いえらいだ」のである。いいねぇ。性に対しておおらかで・・・
「笑い」を中心に、民族学の観点から、日本の祭り、伝承、芸能、神話などたいへん具体的に書いてあり、思わず笑ってしまいます。エロティックな場面も健康的で・・・しかも、歴史・宗教も織り交ぜた薀蓄がとっても勉強になりました。
表向き「笑わない」武士階級の習慣をひきついだ明治政府とキリスト教のおかげで、性に寛大でなくなり、「笑いを失った戦時体制」をへて、安物の笑いの現代となってしまい、これ以上笑いを失ったら、もう戦時体制なのかなぁと不安にもなります。
ここに書かれている伝統芸能が果たして今残っているのやらというのも気がかりです。盆踊りが若者の出会いの場でなくなり、「健全」な祭りばかりになってしまったのも、今の少子化の原因の一つではとも思います。
健康的で良質な笑いを取り戻したいねぇ。