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紙の本
正攻法の英語学習法
2010/03/14 10:36
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の一人柴田徹士は旧制の中等学校卒(現在でいう高校卒)の学歴ながら、高検(高等学校教員試験検定)に合格し、のちに大阪大学教授となった経歴の持主。アンカー英和辞典(スーパーアンカー英和辞典の前身)の編集主幹としても知られる。
もう一人の著者藤井治彦は柴田の大阪大学時代の教え子で、自身も大阪大学文学部教授を務めた。
本書は、弟子の藤井が柴田に英語の学習法について質問する形で進められる。
対談形式の本はわかりやすいものの、概して内容が薄くなりがちである。しかし、この本については、内容が薄いなどということはない。それどころか、英語学習法に関する本でこれほど内容の濃密な本を私は読んだことはない。
最初に、「初めにー英語には特殊な学習法があるか」と題する項目で、柴田は言う。
「英語の能率的な学び方なんぞ現実にはない。あるのは非能率的な学び方だけだ、ということです。その非能率的な学び方の方が世間では多い。だから、みんな苦労して、結局、成績があがらないのです。」
なんて正直で誠実な言葉なんだろう。
次に、「英語体験の回顧」と題して柴田自身の英語体験が語られる。
中学卒業後、家業の「うすあげ製造卸業」を手伝いながら高検に合格した際の勉強方法も紹介されている。
その後、具体的な英語学習法が語られるのだが、内容はあくまで正攻法。まったく奇をてらうところはない。
柴田は言う。
「なるべく苦労するな。」「楽しめ、そして手間だけはかけよ。」
話題は発音にまで及ぶ。
[f]、[l]、[r]などの発音について日本人が苦手とすることはたびたび語られるが、柴田は[n]の発音に関しても、次のように言う。
「たとえば、日本語の「ん」の発音です。「ん」に四種類の発音があることを知らない人が大部分でしょうね。」「これがはっきりわかっていないと、英語の"nonsense"の発音は正しくできない。」「日本人でこの[n]が正しく発音できる人は少ないでしょう。」
そして話題は精読と多読に及び、最後には実際の英文を読みながら話が進められるのである。散文と詩が一つずつ取り上げられるのだが、英語学習法に関する本で詩が取り上げられることは、他の本ではまずありえない。
柴田の英語に関する造詣の深さもさることながら、藤井の聞き手としての力量も並大抵ではない。ここまで内容の濃い対談ができるものかと感心する。
「英語『再』入門」と題されているとおり、完全な初心者を対象とする本ではない。わかりやすい本ではあるが、特に後半部分は内容的に高度な部分もあり、初心者には理解がむずかしいだろう。むしろある程度の英語力のある人にとって有益である。ぜひ一読することをお勧めする。