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紙の本
自分の居場所はやっぱり家族のいる家だということ
2005/10/23 18:11
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yan - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼いときにかかった病気が元で
歩行が不自由になったサトクリフは
海軍将校の父、想像力豊かな
厳しい母に育てられ
細密画家として出発、失恋を乗り越えて
作家になるまでのことが書かれている。
ローマンブリテンのアクイラや
自らの生き映しであるような
「太陽の戦士」「はるかスコットランドの丘を越えて」
「イルカの家」の主人公たちが
この自伝の中に現われている様だった。
サトクリフの作品のテーマは
生きがいを見失った少年がいかにして
自分の居場所を見つけ、生きる道を見つけるかということだが
自伝の中からは、必死に生きようとする彼女自身の向こうに
その母の献身的でまっすぐな姿がはっきりと見える。
父の仕事の関係で、何度も転居し、入院生活が長くて
同じ世代の友人がいなかったというのが
自分の居場所という観念を生んだのだと思う。
父の故郷であるデヴォン州のビディフォードに
移り住んだときの家のこと、あたりの景色のこと
その表現が心に焼きつくほど美しくてやさしい。
サトクリフは、この家に居場所を見つけ
作家になることを決意したのだ。
父の故郷の風景と厳しすぎる母、
想像力豊かな母の聞かせてくれた
ケルトや北欧の物語がサトクリフの物語の原点なのだ
ということが理解できた。