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紙の本
バルザック小説の神髄
2018/05/18 09:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
バルザックの単品小説集であり、「知られざる傑作」自体がまさにあまり世の中には知られていない名作である。文学・芸術・美学に関する書籍を読めば、「知られざる傑作」が引用されることが多い小説であることに気づく。本書では、バルザックの小説論を展開している部分があり、有名な箇所である。そのその真意を知るか知らないかで、小説の見方が変わる。
紙の本
知られざる傑作
2001/05/20 23:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この単行本には六篇の短篇が収められているのだが、間違いなく表題作の「知られざる傑作」が名作だと思う。
この作品は、芸術に見入られた老人の話なのだが、老人の異常なまでの狂気には圧倒される。絵を書いている人にも読んで欲しい。あの、セザンヌはこの作品を呼んだとき「これは私だ」と叫んだという。
紙の本
文字通り「知られざる傑作」
2004/05/16 03:48
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はけの道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「芸術の使命は自然を模写することではない、自然を表現することだ。君はいやしい筆耕ではない、詩人なんだ」と、老人は頭ごなしポルピュスをさえぎって、強く叫んだ…。(本文150頁より)
恐らく本短編の中では、一番大事な言葉であろう。又時の画家、セザンヌもこの言葉に何度か、うなずいた事であろう。その後ヨーロッパ絵画史は現代に至るまで目まぐるしく変遷して来た。私はこの作品こそ、今までの古い「自然写実主義芸術」の殻を破る、終結宣言だと見ている。文豪が、こういったものを書くというのも珍しい。この小説が出て、もう170年が過ぎようとしているのに、未だに、我が国日本では洋画といえば自然描写の風景画などが愛されている…と言うのは、どうかと思う。もっともっと、個性溢れる抽象絵画のようなモダンアートが大衆生活に密着しなければならないはずである。
又、これを書いたバルザック、この他にも一連の「人間喜劇」始め、多くの面白い作品を残している。もっと若い人達に読まれ親しまれて好い筈である。
紙の本
長編もよいが、短編も素晴らしいバルザック
2014/09/07 22:18
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アトレーユ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無駄のない美しい文章、描写のリアル感、ともにとてもレベルの高い文体だと気づかされる。
バルザック、どうみても“肉屋のおっちゃん”の風体なのになぜ美文?(笑)と思う。
どれも秀逸ながら『砂漠の情熱』がやはり印象深いかな。
身近にありうる感覚(絶対、身近にないシチュエーションだが)は、ともすると粘着質な描かれ方になりがちだが(心理小説とか)、しっくり・すっきりに感じるのは
やはりバルザックならでは、か。
紙の本
「人間喜劇」読破への道は険しい
2021/03/09 22:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の野望の一つに、バルザックの「人間喜劇」を読破するというのがある。随分と壮大な目標で、「ゴリオ爺さん」「従妹ベット」「従兄ポンス」「あら皮」などの有名どころは呼んでいるのだが、全作品読破となると遥かなる道のりだ。バルザックは「ゴリオ爺さん」のおもしろさから長編小説の人という印象を持っているのだが、以前読んだ、元ベネチア貴族がとんでもなかった人生を主人公に語って聞かせる「ファチーノ・カーネ」という短編が面白かったので、今回は「人間喜劇」の中で訳者・水野氏が選りすぐったという6つの作品を読むことにした。訳者が1928年に出版したものだから翻訳としては言葉が古かったりするのかな危惧していたがそれほどでもなく読めた、「ざくろ屋敷」の兄弟が大きくなった後の話というのも「人間喜劇」はあるということなのでそれを読むのも楽しみだ
紙の本
知られている、知られざる傑作
2000/10/28 21:12
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
バルザックくらいだとけっこう昔に読んでいるもんだね。題名は覚えがないんだけど、読みすすんでいると思い当たる。とくに最初の「沙漠の情熱」はありありと覚えてた。まるで昨日読んだように20年くらい前に読んだ本の内容をありありと覚えているのも、人間の記憶力の不思議さに感心しちゃう。もっと覚えてなきゃいけないことは他にもたくさんあると思うんだけど(笑)詳しくは
紙の本
時代が移っても変わらない芸術の力
2009/09/20 22:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
これもバルザックの「人間喜劇」の中の短篇を集めたもの。
「砂漠の情熱」エジプト遠征中に捕虜となって逃亡した兵士が、砂漠の真ん中で一匹の豹に出くわし、奇妙な膠着状態の中で、その恐怖、そして野生の美しさを感じ取る。ナポレオンや革命といった社会の混乱、戦争という究極の混乱に覆われた世界の隣で、またこのような幻想的な現実が存在することの意外感がある。
「ことづけ」愛人の死に直面した伯爵夫人。相当に坦々と書かれてる印象。
「恐怖時代の一挿話」革命における恐怖時代、弾圧されたカトリック神父の目を通して描かれる、世俗の盲点にある出来事。革命、解放という名の下に旧いものたちには却って弾圧が加えられる事情は、古今を通じて変わらぬものらしいが、その中で神父の「フランスのどこにも勇気が見あたらぬときに」という言葉の意味が重い。
「ざくろ屋敷」ある閑村の屋敷に住む一人の夫人と二人の息子。その土地の叙情溢れる描写の丹念さは「谷間のゆり」にも通ずるものがあるだろう。このトゥレーヌ州というのはバルザックの故郷ということで、愛情をもって書くということの凄みを見る思いがする。
「エル・ベルディウゴ」スペインを攻撃したフランス軍と、イギリス軍を含めた駆け引きの中、運命とも言える皮肉な顛末による悲劇が、最新鋭軍艦に囲まれた中で神話的な哀感を帯びている。
「知られざる傑作」世に知られざる技巧を持つ老画家の、一枚の肖像画にかける執念を描いたものだが、ひどくもの狂おしい思いにさせられる。芸術家の狂気と世間的な成功と、その両方に対して肯定的な思いがあるからだ。語られる芸術論にひどく熱気に溢れているように感じるのは気のせいだろうか。
とにかく、なんでもかんでも題材にしているという印象だが、統一感を見いだすとすれば、身分差、貧富の格差といったものが雑多に混合し始め、価値観がひっくり返り、併存し、消費社会が進行し始める中での人間群像に何ものかを見いだそうとしているということだろうか。視点はその渦中にあって、批判や分析は横において、筆力にまかせて押し切っている。表現する力こそが芸術なのだという老画家の姿勢にも共通していそうだが、とにかく迫力でぐいぐいと読み進めさせられてしまうのには恐れ入らざるを得ない。