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紙の本
優れた「政治学入門」書
2009/11/18 16:18
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井陽之助氏は、本書において編者を務めるとともに、「1.政治学とは何か」「2.政治意識」を執筆しておられる。本書中でも、最も読みごたえのある部分である。 約1年前に亡くなられた永井教授の著作で、現在のところ、BK1で入手できる唯一の著作となっているようだ。
書名は「入門」となっており、大学教養課程の「政治学」の教科書を想定しているようであるが、特に永井教授執筆部分は、著者特有の華麗でレトリックに富んだ文体で、無駄のない叙述が展開されており、極めて稠密な内容となっている。ある程度の予備知識なしでは真の理解は困難であるかもしれない。
たとえば、「政治の定義」については次のように説かれる。
>政治生活というのは、D.イーストンの定義をかりれば「稀少資源の権威的配分」(authoritative allocation of scarce resources)をめぐる諸活動である。権威的配分とは、拘束的決定による価値配分のことである。・・・・・・近代社会では個人は、共通単位では通分できない、もろもろの選好・要求・利害関心をもっている。・・・・・この個人の選択を迂回して、全体的決定をつくる方式として、経済領域における市場のメカニズムと、政治領域における投票が制度化されている(p.5-6)。
現時点での我が国政治の現況を見れば、近づく来年度予算編成が当面の最大の問題点であろうが、「景気対策」と「財政規律回復」という、いずれも絶対に無視できない、多くの場合に相反する目的を考量しつつ、メリハリを効かせた構成としながら、しかも選挙での公約である「マニフェスト」を活かしていくということは容易なワザではないだろう。新内閣も、野党時代と異なり、「稀少資源の権威的配分」「拘束的決定による価値配分」による「全体的決定」を行なうことの難しさ、「責任」の重さを痛感しているのではないだろうか。
その他、「本質顕現的思考」という丸山真男氏の用語を使いながら「組織人の思考」について説かれる部分など(p.40)、60頁足らずの分量ではあるが、粕谷一希が言う「ブリリアントでスリリングな発想と分析、セクシーなともいえる表現力」を十分に味わうことができる。
刊行後約45年、改訂後でも25年を経ながら、現在でも色あせない、優れた「政治学入門」であると思う。