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紙の本
「逝きし人々」からの警告
2012/11/11 13:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:moriji - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう、35年も前に出版された本ですが、今、ますますその価値を高めている本だと思います。地球規模の災害、原発事故、財政の危機、くりかえされる紛争、環境の破壊、貧富の格差拡大、・・・
21世紀の様々な世界規模の問題が凝縮されて起こっている現在、人類は今、これまでの生活様式や考え方の変換を迫られていますが、そんな時、この本はかつての暮らしと思想を考え直すための貴重な資料を提供してくれています。
「イシ」とは、アメリカインデイアンとして最後に生き残っていた主人公の名前です。インデイアン保護区には保護されたインデイアンが暮らしていますが、「イシ」はまさに野性のままの暮らしを続けていた最後の一人として保護されました。この物語(イシの語ったドキュメンタリーでもあります)は、ヤヒ族の一員として仲間と暮らしていたイシを白人(サルドウー)がどんどんと追いつめ、最後に残った4人(母、伯父、姪)も、次々に「死者の地」に赴いてしまいます。そんな苛酷な日々の出来事を綴ったこの本は、そのまま、文明が野性を駆逐していく物語ともなっています。「どんぐりの窪地」や「月桂樹の村」「緑の洞窟」や「穴熊の川」これら地名にあらわれた人と自然が一体となったすばらしく豊かな世界。そいれが一転、みじめな逃亡生活に変わり果ててしまいます。白人からの追跡を逃れるための様々な智恵と冒険の物語のスピーデイーな展開と、「文明」とは何なのか?という強い思いが充満した本となっています。挿絵(Ruth Robbins)のすばらしさも特筆されます。
なお、著者 シオドーラ・クーパーの娘さんが、「ゲド戦記」のアーシュラ・ル・グインであることも、グ・インの「アースシー」の世界との繋がりで、理解されるところでしょう。