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死のようにロマンティック (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック)

著者 サイモン・ブレット (著),嵯峨 静江 (訳)

死のようにロマンティック (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック)

税込 855 7pt

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紙の本

死にそうなくらいにロマンチックな男女の悲喜劇

2001/04/30 01:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:松谷嘉平 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 現代イギリス・ミステリの実力派による、ひねりの効いた異色サスペンス・ノベル(1985年)

▼語学教師マデリーンは37歳にして、やっと「理想の男性」にめぐり合えた。一方、マデリーンの生徒で19歳のポールはマデリーンを「理想の女性」として密かに思いを抱いていたのだが、彼女が同僚のホプキンズと関係を持とうとしていると知ったとき、この奇妙な三角関係は一つの死をもって終わる運命へと動き出したのだった。▲

 原題は"Dead Romantic"。邦題はあんまり合っていないような…。'dead serious'「クソ真面目」という用法と同じように、'dead'は「否定的な強調」の意味で使われているのでは?だとしたら「死にたくなるほど〜」とか「死にそうなくらい〜」という方が良いのでは。
 というのも、登場人物たちはロマンティシズムに「毒された」人々ばかり。そして、彼らはみんな、自分自身のロマンスの主人公/ヒロインを演じるんですが、その「理想」と「セックス」との齟齬の間に嵌り込んでしまいます。
 オールドミスになりかけているマデリーンは自分が教えているイギリスロマン派の詩の世界にどっぷりと浸りきってロマンスを夢見ているし、ポールの頭のなかはセックスに対する観念的な妄想ばかりが渦巻いている。またホプキンスは妻が病床に伏していることを理由に影のある中年男の悲哀を演じている、といった具合。
 サスペンスには「ロマンティック」なものが含まれていることが多いですが、これはそれに対するパロディー的な感じ。
 一方、ミステリ的な仕掛けにも捻りが効いてます。まあ、いわゆる「クライム・クラブ」系ってやつ。これが全体の'dead romantic'な調子とあいまって小気味いい効果を上げています。
 しかも「二捻り」。一つは「流し読み」してると、ちょっと判らないものかもしれませんが。

 軽妙ではあるが軽くはない秀作。

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