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時代おくれの酒場でもいいもんだ
2021/05/14 06:54
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1963年に『江分利満氏の優雅な生活』で第48回直木賞を受賞した山口瞳さんは1995年に亡くなるまで人気作家だった。
特にサラリーマンの読者が多かったという印象が強く、山口さんの代名詞ともなったエッセイ『男性自身』に勇気をもらった人は多いのではないだろうか。
そんな山口さんの代表作のひとつが、1982年に発表されたこの連作長編だ。
なんといっても、この作品は翌年降旗康男監督で映画化され、今でも人気が高い。
主人公の兆治を高倉健が演じ、彼を慕い忘れられない薄幸の女性を大原麗子が熱演している。今観ても、この時の大原麗子は美しい。
高倉健、つまり兆治の親友を演じていたのが先日亡くなった田中邦衛といったように、脇を固める俳優たちもいい。
映画の舞台は函館だったので、兆治の店がそこにあるようについ思ってしまうが、原作では山口さんが愛してやまなかった東京・国立になっている。
しかも、兆治のモデルとなったやきとりの店が国立にあったという。山口さんはそのお店の常連でもあったそうで、お客の酔う様や発する言葉を頭にとどめていたのだろう。
お酒を飲んでくだをまいたり、笑ったり、泣いたりする。
そんな時間をやさしく包み込んでくれる場所が居酒屋で、特に昭和の居酒屋にお世話になった人も多いにちがいない。
だから、互いに好きであっても別れるしかなかった男と女や、リストラで仲間を馘首するには忍びなく会社をやめていった男など、今では聴けなくなった演歌の世界のようだが、その良さを忘れたくない。