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ライク・ア・ローリングストーン | ||
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One nightララバイに背を向けて | ||
ナイトアンドデイ |
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紙の本
私も何となく覚えがあるような時代の話です
2005/06/14 22:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
21世紀になってしまってから1970年代を振り返ってみると、当時の日本そのものが青春時代だったのかもしれない。なんだかんだ言ってもまだ将来に希望は沢山あったのだろうし、その一方で時代に暗い陰が差していた頃でもあったのだろう。極端から極端へ価値が揺れ動き、どちらにも定まらず、不安定さは自信にもなり、不安にもなった。そんな状況は、1人の人間の青春時代とまったく同じと言っては言いすぎだろうか。
そんな日本の青春時代に、ちょうど自身の青春時代を迎えていた人たちは、毎日毎日をどうやって過ごしていたのだろうか。それを教えてくれそうなのだ、この栗本薫の中篇集だ。
「ライク・ア・ローリングストーン」は、不思議な女の子とその子にかかわることになった男の話。青春の終わりの迎え方を教えてくれると言ったらいいのか。不思議な女の子は自らをネコと呼んだが、その行動もまるで猫そのものだ。こんな子がある所には普通にいた、というのが1970年代だったのかもしれない。
「One Night ララバイに背を向けて」は、1970年代の若者そのものといった男の「壊れて」いく話だった。この壊れやすさもまた、青春の特徴なのかもしれない。皆この壊れやすさを繕いながら大人になっていくのに、この男は壊れていくしかなかった。結末が想像できてしまう部分もあるけれども、それがまたより一層切なくさせる。
「ナイトアンドデイ」は、青春とは言いにくい部分もあるけれども、奇妙なエロ漫画家にかかわることになった男が、やはり青春を終えていく物語だ。文字だけで奇妙さが強調されて、読む側の想像力を刺激する。
どの話も元歌というか、モチーフにした歌があるのだが、元歌を知らなくても十分楽しめる。もっとも楽しめるというよりは、1970年代の何とも淀んだというか重苦しいような雰囲気を感じることが出来ると言ったほうがいいかもしれない。
私は1970年代は青春時代と言うよりも、まだ子ども時代だったのだけれど、それでも何となく感じていた時代の雰囲気といったものを、この3篇で思い出すことができた。
21世紀の今、青春時代や子ども時代の人たちには、どのように読まれるのだろうか。そもそも、重くてかったるくてとても読んでられないよ、という感じなのだろうか。誰か、読んでくれないかなあ。