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紙の本
北国のエキゾチズム
2013/11/24 21:47
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
女シリーズという短篇集は、「京都の女」「銀座の女」「札幌の女」「博多の女」とあり、さらに海外を舞台にした「女巡拝記」となる。この「札幌の女」では、札幌、函館、釧路、青森、花巻、米沢、新潟、金沢と、北国を舞台にした作品を集めている。
だいたいの話は、東京から地方に出張したサラリーマンが、ふとした縁で地元の女とねんごろになり、なんとなくその土地の人情機微に通じたような気になるという按配である。中には東京まで追いかけて来るような娘もあるが、それもまた甲斐性ではあるが、当時の地方の若者がチャンスがあれば東京に出ようという意欲満々だったことの現れでもあるだろう。
女たちの行動力は、男へのこだわりと上昇志向のいずれが勝っているのか判然としない。若さというだけではない憤激にとらわれて突進しているように見える。
その一方で男たちは若い彼女らの勢いに押されつつ、なんとかうまいところに着地するわけで、そこは中年の手練手管の見せどころ。ただ土地の方言で口にされる、慎みや猥語に潜む激情の欠片に愛らしさを感じてしまい、ますますの深みに嵌ってしまうのだ。
ばれるか、ばれないか、うまく言い逃れが出来るか、あやまって許してもらえるのか、どうも緊張感の乏しいことおびただしいが、元は遊びのはずだった男達にとっても、それは思いがけず訪れた生命の噴出でもあり、それは人生を変える出来事なのだ。たとえ転落に見えるようでも、それもまた人生という明るさがあるのがこの作者の持ち味でもあるだろう。
高度成長時代に吐き出されまくったエネルギーの余波の一つの形であるが、そこはかとなくエキゾチズムの香りも漂わせ、ちょっとした冒険心をくすぐる。こういうファンタジーを求めるのも、健全というのか知らないが、ある種の活力の証明。男も女もギラギラした欲望を抱えていた日本が存在している。