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紙の本
贈り物
2017/04/30 23:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:844 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新潮文庫の「カラー版 作曲家の生涯」シリーズの一冊。モノクロやカラー写真、楽譜、絵が豊富で見ていて楽しくブラームスの生涯がコンパクトにまとめられている。最近はブラームスの音楽が身にしみる。音楽の理解や感じ方は年齢とともに変わるのだとつくづく思う。クライバーの指揮する交響曲、グールドの弾く間奏曲…。私はフランス生まれのピアニストでブラームスのピアノ協奏曲を録音しているエレーヌ・グリモーのリサイタルを聴きに行った際、本書を贈った。日本語は読めなくとも、写真、絵、楽譜、手紙を見て喜んでくれただろうか?
紙の本
“freiabereinsam”哀しくも魅力的な調べ
2005/03/20 01:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
『F.A.E.ソナタ』と呼ばれる作品がある。ヴァイオリンとピアノのために作曲されたこのソナタは、第一楽章をアルベルト・ディートリヒ、第二楽章と第四楽章をロベルト・シューマン、そして第三楽章を本書の主人公となるヨハネス・ブラームスが手掛けたものである。「スケルツォ」楽章だけがブラームスの作として今日世に伝えられているが、本書を読んだ後にこの伴奏譜を奏でてみると、ブラームスの人生がここから溢れ出てくるのが感じられる。これは決してセンチメンタルな誇張ではない。ブラームスの音楽が持つ普遍的な力であり、その力ゆえに、センセーショナルな新ドイツ楽派との確執にも耐えることができた。リストとワーグナーは19世紀の楽壇を嵐のように去ったが、<競争相手が世を去ってしまったいま、彼がドイツ音楽界を代表する唯一の巨匠となってしまったのである>(p.143)という一文にすべてが帰結する。本書では特に、このあたりの事情が注意深く扱われており、複雑な事情をより客観的に描写する努力が見られる。三宅氏によって丹念に引用されたブラームス周辺の言動や手紙文が、ブラームスという人物像をよりリアルに描いている。つまり、ブラームスというのは途方もなくいい人で、途方もなく気難しい人だったということだ。肯定的な要素は否定的なものの影に吸われていく…ブラームスの作品の多くに見られるものだが、その空気は彼自身の性格内に留まらず、ブラームス亡き後に堰を切ったように氾濫するペシミズム的雰囲気の予兆でもある。フルトヴェングラーがブラームスを「ドイツ音楽の評価を最後に確立した人」と評したことの意味深さよ!
音楽は常に不完全である。常に虚飾と真実との闘いを、作曲家は繰り広げている。故に、傷つけ、傷つけられる関係が絶えない。ブラームスも旧敵が一人ずつ去っていく中で、丸山眞男が言ったように「音楽的内容は楽聖たちの後継者として少しも恥ずかしくないものだったけれど、なんせ話す言葉が古すぎた」(中野雄『丸山眞男 音楽の対話』p.228)己の姿に、増していく孤独を重ねていたのだろう。<秋のソナタ>という象徴的な比喩から、ブラームスの哀しくも魅力的な晩年の調べが聞かれてやまない。