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光抱く友よ (新潮文庫)
光抱く友よ
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紙の本
高樹のぶ子さんってこんなのでデビューだったんですね。
2003/12/06 06:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:地主 修一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を最近読んで、とても感動しました。とても短いですが、美しい作品と思います。購入したのは文庫版ですが、図書館で探して芥川賞全集の方も借りました。そこに収録されている「選評」を読み、プロがこの作品をどう思ったか知りたかったのです。
ちょっと古い本ですが、絶版でなく、案外あちこちで置いてあるようなので、皆さんにお奨めしたいです。
僕はこれまでたまたま読んだ本から、著者は官能的な恋愛ばかりを書いているという認識でしたが、これを読んで認識を改めました。
敢えて本作品のテーマを言えば「友情」だと思います。わりと優等生風の主人公の少女がすれっからしの不良(らしく見える)少女のことが気になって色々と悩み近づいていく様子にどんどんと感情移入してしまいました。
ちょっとネタばれですが、不良少女にはどうしょうもないアル中のお母さんがいます。主人公とその少女の関係が接近するエピソード、不良少女が星空にあこがれるエピソードなどは心に残ります。結末は寂しいですが、主人公が不良少女を心配して色々考えを逡巡させる様子は本当に美しくかかれていると思います。
本作品はストーリーが分かっていても読めるものですので上に書いた“ちょっと”のネタばれは許してくださいね。ストーリーじゃなくて、文章が僕らの胸の中を揺さぶるのを味わう作品だと思いますから。
著者がもう一回こんな話書いてくれたらなあと思います。とにかくお奨めです。
さて芥川賞受賞時の選評ではどう書かれていたかというと、高樹さんが受賞時に若かったせいか「美しい話だ」という評価よりは、「これからプロとしてやっていくにはもっと毒のある話をかけるようにならねばならない。」というようなせっかくのこのときの高樹さんの持ち味を失わせるような発言が目立ちました。
芥川賞の選考委員ってスノッブな人が多そうですね。素直に感動できないのかなと思いました。たくさん色んなものを読みすぎて文豪たちの感性が麻痺しているのかとも感じました。
僕は純文学というジャンルを認めているわけではないですが、昨今社会がすさんでいるこの時代にこそ、芥川賞には心が洗われるような作品が書ける人を掘り出して欲しいものです。社会の最先端のすさみぶりを飛び越すような作品が選ばれるのはどうかと思います(そういうノミネートが多いような気がするんです)。
本作品は最近の文壇が忘れている本来の物語なんじゃないでしょうか。
紙の本
「退屈さに対する態度」
2004/09/14 01:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森山達矢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説がテーマとしているもの、それは
「退屈さの外にいること」と「退屈さの内にいること」だと思う。
僕には、そう読めた。
外部にいる涼子は、内部にいる松尾に「なにか」を見る。
涼子は、その「なにか」を知りたいと思う。
外にいる涼子は、中にいる松尾を通して、その「なにか」を理解しようとする。
しかし、結局それは誤解されたままに終わる。その理由は、大学教授を父親に持つ裕福な家庭の娘とアルコール中毒症の母親しか持たない貧しい家庭の娘という経済的・物質的な格差にあるのではない。
そこにあるのは、「退屈さに対する態度」である。
それは、幸せに生きているかどうかということとは関係ない。
また、濃密な「生」を送っているかということとも関係ない。
「退屈さに対する態度」の違いとは、彼らが「退屈さ」に気づいているかどうかということである。
この違いは、決定的である。
松尾の次の言葉を涼子は決して理解し得ないのである。
「顕微鏡もこの部屋の写真(=星々の写真)もね、どちみちさあ、
人間の肉眼じゃ見えん世界なんよね。うち、こういう写真見てると、
何ていうかすごく虚しい気分になってくる。
人間はとことん無力だと思えてくる。
…自分の力が本当に何もないんだって。
チリかゴミみたいなものでね、だってそうじゃない、真実在るもんを、
この目で見ることが出来んわけよ、そう考えたら、
人間なんて生きてるのも死んでるもの似たような、
あれよ、細菌とかバクテリアとどっこも違いがないみたいな…」
涼子は、この言葉を単に松尾は星が好きなのだと受け取ってしまう。
「退屈さの内にいる」人というのは、「生」には「死」「絶望」「虚無」が内在していることに気がついてしまった人間である。
「退屈さの外」にいる人間は、「退屈さの内」にいる人間のまなざしの先になにがあるか、理解できない。
「退屈さの外にいること」と「退屈さの内にいること」。この「退屈さ」の内と外に引かれる境界線にある壁は、想像以上に厚い。この厚い壁を越えて、「内」から「外」へと脱出できるのだろうか。それが問題なのである。
紙の本
光抱く友よ
2001/11/04 16:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:333 - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の女子高生の脆くも崩れやすい心理を描き出した青春小説。性格のまったく違う二人が、織り成す物語が面白い。恋に揺れる、不良少女松尾と涼子の関係がうまく、描写されている。芥川賞受賞作。
紙の本
ノスタルジックな気分に浸りたい夜の一冊
2001/02/16 00:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Vivian - この投稿者のレビュー一覧を見る
女子高校生2人のぎこちなさと純粋さが入り混じった「友情」が綴られたこの小説のテーマは、一方では「恋愛」と重なる部分も大いにあるとも思った。思ったことを率直に表現できない、どちらかというとぼんやりした性格の相馬涼子が、まさに自分とは正反対で、自分の感性に従って行動する真っ直ぐで、しかし早熟でアンニュイな雰囲気をかもし出す松尾勝美との出会いによって自分が変わっていくことを実感する。とまどいながらも彼女の新鮮さに刺激を受けるのだ。何の共通点もない2人が初めて接点を持つところから次第に互いに心を開いていく様が深々と描かれている。
「松尾さんは、これまでの17年間、うちの心がきちんと片付いとったところをひっくり返したんよ。何が上等で、何が下らないか、何が正しくて何が間違ってるかわからんようにしてしまった」という涼子の台詞があるが、「これだ!」と思った。これはまさに、自分を変えるほどの恋人と出会ったときの感情だ。これまでずっと自分の中で積み上げてきた価値観をがらりと覆す存在は恋人である場合が多いのではないかな、と(個人的には)思ったからだ。
読み進めていくうちに、涼子に感情移入し、松尾勝美をかつて自分の価値観をがらりとひっくり返した恋人に置き換えて読んでいる自分がいた。人間の表情から読み取れる感情の移り変わりや悲しさや苦悩といった負の感情も繊細かつ丁寧に綴られた純文学で、ノスタルジックな気分に浸りたい夜長にふさわしい一冊だと思う。