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紙の本
感動的な物語
2008/03/11 14:55
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
レイモン・クノーによって編集されたパリ高等研究院における1933-39年に至るヘーゲル『精神現象学』に関する諸講義の抄訳。
著者アレクサンドル・コジェーヴは1902年ロシアに生まれ、十月革命に際して西欧に逃れた亡命知識人である。みずからの運命に導かれるようにマルクス主義からその源流たるヘーゲルにさかのぼり、実存主義的な死の哲学を背景に、フッサール、ハイデッガーなどの現象学を参照したと思しいヘーゲル読解を行った。コジェーヴの理解する『精神現象学』は、ほとんど発生論的な歴史哲学であって、全体の論理構成と言うか構造は二部に分たれ、人間の意識と自己意識の展開をもって人間の現存在を構成する諸契機を取り扱う章と、理性以後の展開をもって歴史に現れる具体的な人間のあり方を扱う章として提示されたその構成のうち、コジェーヴは特に前者を重視し、自己意識の基本形態としての欲望の弁証法を、死をめぐる闘争たる主人と奴隷の弁証法として記述し、自然的生命のうちに埋没する人間が自然を否定して自然とは異なる精神の世界を創造し、人間が人間として歴史的社会的に現存在するにいたる、とするビジョンを、認識の方法としてではなく世界の構造として、意識に生起する現象として記述したところに、ヘーゲルの従来の哲学者たちとはまったく異なる姿勢を見出すわけである。まあほとんどヨタ話であるが、しかし強引ともとれる世界の記述の体系的構造性が素晴らしい。感動した。ちなみにこの講義はバタイユ、ラカン、メルロ=ポンティ、レイモン・アロン、ピエール・クロソウスキー、ロジェ・カイヨワ、サルトルなどが受講し、フランス現代思想はここからはじまった、とされる。ぜひともちくま学芸文庫あたりで三分冊くらいで全訳を望む。