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生物進化を考える(岩波新書 新赤版)
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1988.4
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波新書 新赤版
  • サイズ:18cm/290p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-430019-3
  • 国内送料無料
新書

紙の本

生物進化を考える (岩波新書 新赤版)

著者 木村 資生 (著)

生物進化を考える (岩波新書 新赤版)

929(税込)

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紙の本

分子遺伝学入門と優生学

2012/01/25 22:11

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

分子進化の中立説を提唱した遺伝学者木村資生による進化学史と遺伝学入門をかねた、ややハイレベルな入門書。

これまで遺伝学関係のものはあまり触れてこなかったので、遺伝学について書かれた部分は知らなかったことが多く非常に面白い。中立説っていったい何なのかよくわからない状態から読んだのだけれど、詳しい数理的な部分はともかくとして、どういうことが問題になっているのかがある程度つかむことができると思う。

進化というと、それまでは目に見える表現型をもとに考えられてきたけれど、遺伝子という内部構造を精査する手段を得たことで、いろいろ意外な事実が判明してきた。その一つが分子時計を可能にした、分子進化の速度が一定だという発見だろう。外部形態等の表現型が急速に変化した生物でも、生きた化石と呼ばれるほど形態に変化を生じていない生物であっても、その遺伝子レベルでの変異の大きさが変わらないというのはなかなか意外。これによってある生物同士が遺伝的にどれだけ離れているのか、またどれくらい過去に分岐したのか、というのがわかる。

ここら辺はもっとも基礎的な部分で、ではそうした遺伝学の知見と進化学とをどう橋渡しするかということについてなど、より高度な、数学的な議論もなされているので、初心者にはややハードルが高い部分もある。


この本では、終章の優生学の導入を主張したところがよく問題になる。以下、その内容について。

木村氏は、蠅の劣性致死遺伝子(ホモ接合になると高確率で致死性を持つ遺伝子)などを事例として、医療の進歩により人体に不都合を生じる変異に自然淘汰が働かなくなってくると、変異遺伝子が淘汰に対して中立となり、次第に集団中に固定されてしまう、そして究極的には人類の退化を引き起こすだろうという危惧を語っている。さらに何万年も先の話になるかも知れないと保留しているものの、知能、労力、資源等を、そうしたものの治療ではなく、建設的発展的な事業に使うためには優生的な措置が必要だと主張している。

この章は最終的に宇宙植民がどうとか思いっきりSF的な話になっていくので、優生の話もそうした遠未来を見ての議論としてある。だから、そんな未来の集団においての変異遺伝子の固定の害を理由に、「有害遺伝子」保有者の子供の数の制限とかを主張されてもどうにも納得できない。変異遺伝子の固定というのも、千年、万年単位の将来においてようやく意味を持つようなスケールの話で、そんなに先なら遺伝子操作によって有害と見なされる部分のみを除去するなどの方法が可能になるんじゃないかと思うのだけれど、木村はいろいろ理由をつけてそういう対策には消極的だ。

とりわけ問題だと思うのは、「とくに染色体異常を含む受精卵を発育させないのは、その個体自身にとっても社会全体にとっても、好ましいことと考えられる」と言い、続けて出生前診断によって染色体異常を中絶で除去できるようになったのは「明るいニュース」だ、と述べ、アメリカの遺伝学者による、健康に生まれることは基本的人権と考えられるときが来るだろう、という発言を引用しているところだ。中絶を人権によって正当化しようと言うのはさすがに倒錯が過ぎるのではないか。健康に生きること、なら生存権として理解できるけれども、健康に生まれること、となると中絶その他出生前診断の是非等、かなり話が難しくなってくる。

劣性致死遺伝子のような変異の保存は将来的に発現リスクを増大させるというのは、数の大小はともかく想定されうる。しかし、遺伝病などが淘汰的に中立になるような状況にあるのはきわめて限られた先進国の、ごく限られた状況(遺伝的な病気などがまったくハンデにならないようなパラダイスな社会が今、あると言えるのだろうか)だろうし、この想定にどこまで具体的な現実性があるのか。数万年単位の未来予測をもとに重大な人権侵害になりうる措置を現在において行うというのは天秤の片側が軽すぎるのではないか。

SF作家や科学者はその合理性指向や技術至上主義的な態度から、人間性を欠いているとか非倫理的だとかいうレッテルを貼られる時があるけれど、木村氏はそれがレッテルではない実例のように見えてしまう。何にしろ、出生制限について語るときにはまるで無視していた「人権」を、中絶正当化の文脈でのみ持ち出したりする感覚は、ずいぶん歪だと思う。

まあ、いろいろな意味で面白い本だということは間違いない。グールドは木村の『分子進化の中立説』を「ダーウィン以来の本」と評したというけれど、この本の優生学の記述を読んだらどう思うのか。どっかで言及してるかも知れないけれど。

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2004/12/03 18:49

投稿元:ブクログ

進化という誤解されやすい現象について、世界に認められた「分子進化の中立説」を提唱した著者自身による一般向けの本。生存率を高める突然変異だけが進化のドライビングフォースではなかった。

2015/10/13 20:08

投稿元:ブクログ

(2015.10.12読了)(2008.06.22購入)
生物進化についての本を読んでいると、参考文献としてこの本がわりと頻繁に出てくるので、読んでおこうと手に取りました。
この本は、学問としての進化論は、どんなものかの紹介なのでしょう。数式のようなものが出てきて、ちっともわかりませんでした。まったくお手上げでした。
ダーウィンは、メンデルの遺伝の法則もDNAのことも知らなかったので、進化について論じるのに苦労したわけですが、メンデルの法則やDNAによって、論じやすくなったし、実証実験的なものもやりやすくなったのだと思います。
それにしても、突然変異と自然淘汰で、進化を説明しようという、ネオダーウィニズムには、納得しがたいものがあるのも事実で、趣味としての進化論の肩を持ちたくなります。
いろんな種の生き方の仕組みを見ていると、その見事さを突然変異と自然淘汰によるものという説明で、なるほどそうですかとは、とても言えないわけです。
どうしても、生き物の意思みたいなものを想定したくなります。意思が遺伝子に影響を与えることができるか、と言われると、答えに窮してしまうわけではありますが。

【目次】
はしがき
第一章 生物の多様性と進化の考え
第二章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
第三章 進化の道すじをたどる
第四章 進化要因としての突然変異
第五章 自然淘汰と適応の考え
第六章 集団遺伝学入門
第七章 分子進化学序説
第八章 中立説と分子進化
第九章 進化遺伝学的世界観
参考文献

●ダーウィン(13頁)
彼(ダーウィン)はビーグル号による世界周航以後長年にわたって集めた膨大な資料を用いて生物進化が事実であることを世界の学者に納得させただけでなく、自然淘汰によって適応的進化が起こることを明らかにした。
●遺伝の仕組み(17頁)
ダーウィンが自説を『種の起源』にまとめるにあたって、彼を悩ました最大の難点は、遺伝の仕組みが分からぬことであった。
●集団遺伝学(31頁)
集団遺伝学の研究対象は生物の集団とくに有性繁殖によって結ばれた同種個体の集まり、言い換えると繁殖社会である。このうちには各種の対立遺伝子がいろいろな割合で含まれており、これらを「遺伝子頻度」と呼ぶ。集団遺伝学では、これらの頻度が突然変異、自然淘汰などの進化要因の下でどのように変化していくかを追求する。言うまでもなく、集団遺伝学の重要な目標の一つは進化機構の解明である。
●突然変異(114頁)
「突然変異、すなわち著しい奇型」といった観念は間違っている

☆関連図書(既読)
「ダーウィン先生地球航海記(1)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.06.23
「ダーウィン先生地球航海記(2)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.10.02
「ダーウィン先生地球航海記(3)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.11.20
「ダーウィン先生地球航海記(4)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.01.20
「ダーウィン先生地球航海記(5)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.02.23
「ダーウィン」八��龍一編、平凡社、1977.01.14
「種の起原」チャールズ・ダーウィン著・堀伸夫・堀大才訳、朝倉書店、2009.05.10
「ダーウィンの思想」内井惣七著、岩波新書、2009.08.20
「ダーウィン『種の起源』」長谷川眞理子著、NHK出版、2015.08.01
「生物の世界」今西錦司著、講談社文庫、1972.01.15
「私の進化論」今西錦司著、思索社、1970.05.01
「進化とはなにか」今西錦司著、講談社学術文庫、1976.06.30
「ダーウィン論」今西錦司著、中公新書、1977.09.25
「主体性の進化論」今西錦司著、中公新書、1980.07.25
「さよならダーウィニズム」池田清彦著、講談社選書メチエ、1997.12.10
「38億年生物進化の旅」池田清彦著、新潮社、2010.02.25
「「進化論」を書き換える」池田清彦著、新潮社、2011.03.25
「失われた化石記録」J.ウィリアム・ショップ著・阿部勝巳訳、講談社現代新書、1998.03.20
「NHKスペシャル 生命大躍進」生命大躍進制作班著、NHK出版、2015.07.10
(2015年10月13日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ダーウィンによって確立された進化論はどのように発展していったのか。分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。進化の道筋は現在どのように考えられているのか。革命的な「分子進化の中立説」を提唱して世界の学界に大論争を巻き起した著者が、『種の起原』から中立説までの進化の考え方をやさしく説き、人類の未来にも想いを馳せる。

2011/04/24 16:51

投稿元:ブクログ

[ 内容 ]
ダーウィンによって確立された進化論はどのように発展していったのか。
分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。
進化の道筋は現在どのように考えられているのか。
革命的な「分子進化の中立説」を提唱して世界の学界に大論争を巻き起した著者が、『種の起原』から中立説までの進化の考え方をやさしく説き、人類の未来にも想いを馳せる。

[ 目次 ]
第1章 生物の多様性と進化の考え
第2章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
第3章 進化の道すじをたどる
第4章 進化要因としての突然変異
第5章 自然淘汰と適応の考え
第6章 集団遺伝学入門
第7章 分子進化学序説
第8章 中立説と分子進化
第9章 進化遺伝学的世界観

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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

2012/05/01 14:12

投稿元:ブクログ

集団遺伝学という学問を初めて知った。確率統計学に基づいた非常に数学的な学問分野であり、説得力がある。

それにしても、評価の困る本である。

まず、難易度。言葉遣い、概念とも直感的に分かりにくい。これは現代生物学の基礎知識が社会常識の範疇にないことが大きいかもしれない。

そして、優生学の考え方。これは私的にはにわかに受け入れがたいが、ある立場からは検討の余地のあるものなのかもしれない。

しかし、出版後、24年もたっているにもかかわらず、いまだ色あせていない部分がある。

・P3 極限生物の記述
・P60 共生説:ミトコンドリア、葉緑体、鞭毛などの細胞小器官は太古に共生することでできた。
・実際の進化の歴史がよくわかるようになったのは、カンブリア紀になってから。今から6億年前。
・人間をつくる最低の情報量は大英百科事典1セット(23巻)分。
・SOS修復。死ぬより突然変異の方がマシ。
・突然変異=著しい奇形は誤り
・遺伝率。人の背丈は乳牛の乳料より高い。
・P155 人が偶然から生まれる可能性はないが、進化によって生まれる可能性は高い。
・いとこから劣性遺伝病が生まれるのは、そうでない場合に比べて、7倍になる。
・アミノ酸座位の増減による違いは、ヒトとコイ(約4億年前)の分岐で初めて見られる。
・分子レベルでは突然変異の蓄積速度は一定
・黒人 東洋人 白人 の順に発生
・全生物を横断的に調べるためにリボソーム5SーRNAが使われる。
・古細菌はむしろ新しく真核生物に近い。コケはシダの退化系。
・変化の保守性は分子進化の大きな特徴。
・人類が進化の過程で脳の容量が300万年で2倍になったのが表現型進化としては異例。

2016/03/09 06:12

投稿元:ブクログ

中立説のことを知りたくて読んだ。
統計の話しになると難しいのだがが、進化についての丁寧な記述は読んでいて気持ちが良かった。

2012/09/21 08:48

投稿元:ブクログ

現在の遺伝学の基礎となっている書籍である。
これには、ダーウィンから今までの遺伝学の流れが網羅されており、どんな人でもスラスラ読むことができると思う。

2017/01/24 19:04

投稿元:ブクログ

1988年刊。著者は国立遺伝学研究所名誉教授。◆分子進化における中立説と表現型に関するダーウィン的進化論とを組み合わせつつ、現代生物進化学までの議論展開と現代の到達点を解説。◆中立説関連叙述はそれほど違和感なし。ただより詳しい書はあるかも。◆一方の表現型。ダーウィン擁護と今西進化論への批判(生理的嫌悪にも思える書きぶり)が喧しいが、本書の全体がダーウィン擁護になっているかはかなり疑問。優位個体が集団に拡散し、種全体の変容・進化を齎すというのが、ダーウィン進化の肝とするのに、①観察では劣位個体の除去のみ。
②蜜蜂など社会性昆虫の働き蜂の如く、群進化としか言えないものや、クジャクなど性淘汰進化の説明が上手くできていない。③ヒトの脳やキリンの首などの急激な表現型の変容の説明に窮する。④環境大激変(隕石落下・大火山活動等)で恐竜絶滅、鳥類残存なんてのは優勝劣敗と言える?。◇むしろこれらは、環境適応の程度の差、つまり環境には食性・競合種・環境の多様性と変異の大小・棲み分け可能な変異化など多様な要因が含まれる上、種の生存如何はその複合要因と見た方が納得しやすいのでは。少なくともダーウィン一元論的崇拝は疑問。

◇勿論ダーウィン進化論も、環境適応性の強弱で種絶滅が起きる場合もあるという意味に抽象化すればそれほど違和感はない。このように記述内容に違和感はないのに、その一方で著者が何故これほど自然淘汰仮説の正しさだけを強調・強弁するのか??。◆また、分子進化と表現型進化との接合を「隔離」だけしか出せないのはかなり乱暴?。◆なお、狼から犬への短期間での進化、犬の多様な表現型など、分子進化が小さくとも表現型の多様性が実現できる実例がある。ここから色々派生させて考えると面白いかもしれない。

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