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頻闇にいのち惑ひぬ (光文社文庫)
頻闇にいのち惑ひぬ
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紙の本
頻闇に還る
2007/09/06 23:10
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
寿行様が亡くなられたとのこと。肝不全。
中郷と伊能は警察からの退職金で、山中の湯治場でドブロクを作って余生を過そうとしていた。そこに暴力団が大挙して押し寄せる。再び二人を呼び戻すことを命じられた警視総監は、ヘリで急行しながら叫ぶ「奴らを墓場に引きずり込めるのは肝硬変だけですよ」。
元はと言えば、公安特科隊パリ支局でバーボンに浸りながら鮫狩りを思いついた中郷が、ポルトガル沖で鮫のかわりに全裸の女を釣り上げたところに始まる。女の残した言葉をつてに、やはりパリ日本大使館の二等書記官となっていた伊能とともに、奇蹟とやらをその目で確かめるためにアフリカのスワジランドに潜入する。汎欧州主義を唱えるテロ組織と戦って全欧州に名を響かせた二人はもう仕事はしないはずだったが、「悪魔が人間に勝つのよ」の意味を確かめなくてはならなくなった。そして(略)強制帰国させられて退職届を叩き付けたはずの二人は、警視総監からギリシャで起きた大量誘拐事件を聞き、「頻闇だ!」と叫んで、再度ヨーロッパに発つ。報酬は一人一億円。二人の推理は、悪魔の天才科学者の存在を嗅ぎ当て、死闘となる。
素手で戦う。蛮刀を持つ。拳銃、軽機関銃、バズーカ砲、手榴弾。ヘリコの空中戦、C130輸送機からのパラシュート降下。狂気とも言える猛訓練で対テロ組織公安特科隊を作り上げた中郷、その二代隊長を継いだ伊能、二人軍隊とも言えるコンビは、女の裏切りにあい、軍隊に追われ、部族戦争を引き起こし、遂に秘かに全世界を覆う陰謀を突き止める。二人は無数の人々を頻闇に放り込み、自らも幾度も絶体絶命の危機に陥る。既に彼ら自身が頻闇の住人なのであろう。
寿行作品では「鬼」がよく登場する。鬼は人間が生み出すものだという。自然の猛威の前に滅びさる人々がいる。巨大な陰謀に押し潰されていく男達、女達がいる。イキがって暴走するチンピラがいて、目的も大義も知らないまま斃される兵士がいて、炎に焼かれ濁流に飲まれる群集がいる。誰も彼も、生と死は紙一重にある。
彼らのところへ帰ったのですね。鷲と羆と巨猪と狼と鮫と、愛する猟犬のいるところへ。海と荒野と原生林と凍土と砂漠の国へ。バーボンを抱えて。