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主人公はいずれも「僕」。粒ぞろいの短編集
2001/01/21 12:21
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投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
6つの短編が収録されている。
表題作の『パン屋再襲撃』は、夜中に空腹に耐えられなくなった「僕」と妻が、パン屋を襲おうとする物語。“再”襲撃なのは、「僕」がかつてパン屋を襲撃したことがあるから。引け目な「僕」とは対照的に、妻が乗り気なのが印象的。金がないわけではない。なのに、深夜営業のレストランなどには行かず、パン屋を襲おうとする。その姿は倫理的ですらあるし、その感触が、コミカルで不可思議な雰囲気を産んでいる。
『象の消滅』は、町の象舎から象が消えてしまったことが奇妙に心に残ってる「僕」の話。象の消滅事件の謎めいた雰囲気と、それとは対照的な理路整然とした記述(例えば随所に現れる時刻の数字や、箇条書き)のバランスが面白い。
『ファミリー・アフェア』は、村上春樹には珍しい家族ドラマ。「僕」が妹の婚約者と会い、彼を受け入れていくまでを描く。とはいえ、筆使いは決してセンチでもメロウでもなく、淡々としている。いつも以上に春樹的なジョークを言う「僕」の姿が、兄としての「僕」の違和案を現わしている佳作。
『双子と沈んだ太陽』は、双子の姉妹と別れた「僕」の喪失感を描く。この双子——それぞれ208と209という番号のついたトレーナーを着ていた——は、『1973年のピンボール』に登場していた双子である。
『ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界』は、風が強く吹いた日にガールフレンドが「僕」の家に来てカキ鍋を作る話。何気ない光景に分単位の時刻が紛れ込み、異様な感触を産んでいる。タイトルが秀逸。
『ねじまき鳥と火曜日の女たち』は、平穏に過していた「僕」の火曜日をいろんな女たちが刺激する物語。ねじまき鳥は、ネジを巻くような泣き声を出す。ねじまき鳥の反復性と、女たちの突発性。その中で、「僕」は一日を過し、日々を過し続ける。
主人公はいずれも「僕」だが、バリエーションは豊富な作品群。いずれも短編ながら確かな読み応えがあり、粒ぞろいだと言える。
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村上春樹は苦手だけど、これはなんだか良い雰囲気だった。読み返すたびに、読後感が違うけど、不快感はない。
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情熱のない犯罪。傷口もなく、血も流れない。
高校の頃図書館で借りて読んだ。その後文庫で買って読んだ。
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思わず題名がツボで手にとってみたけれど、村上春樹は短編集に向いてないと思った。独自の世界観が数10ページじゃ広がりきれず、かつ収まりきれずに終わってしまう話しばかり。「ねじまき鳥クロニクル」などを読む前の準備運動に読むなら◎。
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『パン屋再襲撃』が短編のなかでかなり好きな作品のひとつ。ありえない話なのにリアルに感じられる。わからないんだけど、しっくりくる。彼の作品のなかでも比較的わかりやすい作品がたくさん入っていてとてもおもしろい。
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良く言って、不思議ちゃんな世界。でも、金曜の夜の中央線、つぶれかけのサラリーマンの頭の中って感じ。あっ、それも昭和40年代。
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読み終わり。
初めての村上作品となりました。
おもったとおり、というか以上というか、ものすごくあたしのリズムにあう本ですね。
意味がないのかあるのかわからない人物の行動、でもどこかしら心にひっかかってくる。
主題のパン屋再襲撃はもちろんだが、あたしは象の消滅が1番すきだ。
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サイモン・マクバーニー演出の舞台「エレファント・バニッシュ」の原作の日本語版が読める、「象の消滅」と「パン屋再襲撃」が収録された短編集。ねじまき鳥クロニクルの元となるねじまき鳥と火曜日の女たちも収録。夜中にビッグマックが食べたくなる。
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恐らく一番好きな短編集。まず、「ねじまき鳥クロニクル」の元となる「ねじまき鳥と火曜日の女たち」は、これが後に長編となるのもうなずける程、短編でも実に完成度が高い。「象の消滅」は短編でも十分に村上ワールドを楽しめる。「双子と沈んだ大陸」はピンボール作品を懐かしくさせ、改めて読んでしまった。?
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『ファミリー・アフェア』好き。タイトルにもなった『パン屋再襲撃』奇想天外な展開に楽しめた。そんなにビックマック食べきれないよォ。ねじまき鳥の短編も読めた。これがあんなに広がるのか〜とっても感慨深い。
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サクッと読める短編集。
ほんとーにサクッと読めて
サクッとしている。
さーっと眺めてふ〜んっといった感じ。
表題作のイカしかたがめっちゃクール。
やっぱりねじまき鳥の「笠原メイ」にとても惹かれる。
「最近いつもそのこと考えるのよ。きっと毎日暇なせいね。本当にそう思うわ。
暇だと考えがどんどん遠くまで行っちゃうのよ。考えが遠くまで行きすぎて、うまくそのあとが辿れなくなるの」
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イメージからテーマへの移行。そんなことを感じさせる中期短編集。
ストーリーは味も素っ気も無く、起伏に欠ける。不可解なことばかりが起き、
主人公はそれを傍観するばかり。彼は日常にきちんと組み込まれていないのだ。
「1973年のピンボール」の双子や「ダンス〜」のメイ(別人)、
「ねじまき鳥〜」のワタナベノボル(猫)等、様々な作品とリンクしている(ように見える)。
雰囲気を知りたい春樹初心者にも、既に上記の長編を読んだ中級者にも、
読み飽きるほど読んだという上級者にも薦められる、読むほどに魅力の増す一冊。
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双子と沈んだ大陸だけが未読だったので購入。これはピンボールと羊を巡る〜の間くらいの話なんですかね。村上春樹ワールド全開。ずっとこの中から出ずに居たいと思いました。ファミリー・アフェア、パン屋再襲撃・象の消滅も改めて呼んですごく面白かったけど、今回一番良い!と思ったのは強風世界でした。何だろう、前読んだ時はファミリー・アフェアが一番好きだったのですが。「風については私たちの知らないことはいっぱいあるのよ。古代史や癌や海底や宇宙やセックスについて知らないことがいっぱいあるようにね」どうしてこの空気はこんなにわたしに優しくしてくれるんでしょう。すごく好きです。
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2007.02.05
ファミリーアフェア(だった気がする)がとってもよかった!もしかして一番好きか!?なんかかわいくてテンポもよくて、やりとりの軽快さが気持ちよかった。
ねじまき鳥の原型みたいな話もあったのでなんか久しぶりに読みたくなったかも。
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短編が6つ載ってる。
お気に入りはパン屋再襲撃
他の村上作品とリンクしてる短編が多数あるのが面白い。