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収録作品一覧
岡村昭彦を悼む | 池上正治 著 | 5-10 |
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現実・予測・幻想 | 饒忠華 著 | 11-32 |
人文科学と自然科学を結ぶ橋 | 王逢振 著 | 33-58 |
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紙の本
文化大革命はSFをどう扱ったか気になる
2004/03/09 23:59
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
科学幻想小説とは、SFのこと。その中国のSF事情を物語る時評2編、創作3編、そして魯迅が滞日時に記したヴェルヌ「月世界旅行」の紹介文を載せる。
魯迅を除いては、いずれも4人組失脚後の80年前後のものらしい。ここから中国の近代化、工業化、国際社会への参加が始まると言っていいのだろう。そのために利用できるものはなんでも利用した。サッカーなどのスポーツから、芸術、囲碁・象棋・ブリッジ・麻雀まで。特に、科学を指向するSFは、目的に格好の題材だったと思われる。
その、党ご推薦の作品は、もちろん実にまっとうで健康的。やたらめった煽情的な英米エンターテイメント作品、リピドーと怨念爆発な文学志向の日本作品などとは一線を画す。よーするに、あんまり面白くないってことか? その素直さ、クサさを、まずは楽しんでしまおうという姿勢でどうでしょうか。現実の中国社会がそんな言葉通りの健全なわきゃーないってことは折り込み済みで。
時評では、チベットで恐竜を発見したという作品を読んで、内容を事実だと思い込んだ読者がたくさんいた、なんていう、どこかで聞いたようなエピソードも紹介されていて、やっぱり人間ってどこでも同じなんだと感じさせてくれる。やはり科学のいかがわしさ、人間のいかがわしさを前提にしてこそ、SFは深い構造を持ち得るのだろう。
小説は,「雪山魔笛」がチベットでの古のラマ高僧の骨笛の発見を契機にする物語で、なかなかの雰囲気を醸し出している。「太平洋人」は地球に向かってくる小惑星の話で、宇宙飛行士と海洋研究者になった双子達の恋愛模様と、J.P.ホーガン張りの仮説で楽しく読める好作。「飛べ、冥王星へ」がまたもやチベットと宇宙旅行をかけ合わせた、これはかなり政治宣伝色の強い話、そういうの嫌いな人は楽しめないかも。
まずこのような本をまとめて出版されたことに敬意を表したい。
巻末の年表を見ると、50〜60年代にもSFは発表されているのだが、64年から75年の間がばったりと谷間になっている。