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  • みんなの評価 5つ星のうち 4.2 59件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1990.4
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波文庫
  • サイズ:15cm/325p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-310106-5
文庫

紙の本

三四郎 改版 (岩波文庫)

著者 夏目 漱石 (作)

三四郎

税込 432 4pt

三四郎

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みんなのレビュー59件

みんなの評価4.2

評価内訳

紙の本

ストレイ・シープの行方

2004/01/18 23:46

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る

三四郎は、上京する際の汽車のなかにおいて、乗り合わせた人から
ことばにおける痛烈な一撃をくらう。すごいぞ。このシーンは!
なにせ美味なる桃を腹いっぱい喰ったあとなのだからして。
おっと、正確にいうと、一撃ではなく二撃でありました。窓の外に
は雄大な?富士山がみえている。この冒頭におけるレトリックのギャ
ップ的手法に漱石のおそるべきストーリーテラーとしての才能が感じ
られる訳である。

さて、東京に着きました。三四郎は、歩く。歩いて歩いて歩きまくる。
与次郎なる絶妙なナビゲーターが登場するので、何処でもいけるので
あるし、面白いのかそうでないのか本人も解りかねるところまでいろ
いろと連れ廻されるので、本書のなかほどあたりでは、三四郎はもは
や、散歩の達人と化すのであるが、これがまた一寸した当時の東京風
物誌としても楽しめる訳で、この小説が、新聞小説であったことも考
慮すると、読者に対する漱石のサービス精神にも脱帽せざるを得ない
のである。

出ました! 漱石一流の三角関係。二角ではない。いつもいつも三角で
なければ話が始まらないのは、若干困った事態ではあるけれど、本書
における三角形の頂点は、果たして三四郎なのでしょうか? もしそう
であるとすれば、なんとも鈍角な頂点であるのだけれども、もう一人
の主人公ともいえる女性であるとすれば、うーん、これは鋭角きわま
りない頂点ではある。まあ、三角関係におけるイニシアティブの持ち
主が頂点であるとすれば、この女性としたほうが妥当であるとは思う
のだけれど、この辺の消息に関してはいささか経験不足なので、読者
の様々な判断におまかせしたいと思います。

でも、ここで物理学の先生やその妹君も登場して三角関係はより複雑
になってくる。すなわち三角が、四角や五角にも変貌していくわけで
机上では、難解な数理的問題を解きまくる物理学の先生も、こんな難
しい問題はお手上げであるかのようだが、さて主人公たる三四郎はど
う解答していくかと思いきや、なんと、問題のないところに解答はな
い(ベケットORヴィトゲンシュタイン)といわんばかりの一見呑気
な生活姿勢を貫いているのでこれは見習うべき立派なことであるのか
そうではないのか解答に窮する事態ではある。

かくして、この複雑な問題も、末尾においてはあっけなく終了してし
まうのであるが、一応、この問題を形作っていた、角、はそれぞれに
きずついている訳なのであるが、それにしても、末尾にほど近いシー
ンにおいてかの女性がつぶやくことばは、何度読んでも、官能的きわ
まりない・甘く危険な誘惑・に満ちている。このことばを聞けただけ
でも三四郎は良しとすべきであろうといつも考えてしまうのである。

余韻に満ちた高度の恋愛小説として読めてしまう事も本書の大いなる
魅力ではあるが、さてストレイ・シープとは、果たして本当は誰なの
か? そして何処に向かおうとするのか? 深読みも充分OKである。

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紙の本

精神の健全な部分を共鳴させてくれる。純情な青年が、美しく小利巧な女性に誘惑されていく物語。「不倫」「援交」「ストーカー」「SM」−−異常な現実世界と小説世界の男女に疲れた読み手のために。

2001/06/15 12:19

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 漱石という人は、「常人と狂人の間」と周りの人たちから言われていたらしい。来る者は拒まずで、教えを乞う人があれば、ふところ広く迎え入れていたらしいが、その精神はいつも抽象世界に遊び「社会はどう動いているか」「人はどうあるべきか」「文学に何ができるか」と哲学に働いていたと思う。

 若い頃から漱石読みであった夫と「不思議だねえ」と語り合うのは、そのインテリの漱石が、どのようにしてこのような庶民の行動や会話をあざとくも書けたのだろうかということである。
 朝寝で悪妻と言われていた俗世間に住む妻のことや、その親戚・友人との会話をよっぽど注意深く観察・密偵していたのではないかと私は思う。

 わずか40年の明治の間に開化が進み、西洋の300年の歴史に匹敵する変化がもたらされたと漱石は作中人物に語らせている。それにより大切なものが内部から徐々に崩壊していくことを彼は嘆き、古き良き日本に深いノスタルジアを感じている。
 作品に通底するその感覚が、通信技術のスピードとともに歪んでいく身体感覚や対人関係に危機感を持つ私たちにシンクロするから、100年前に書かれたのに共感を呼ぶのではないか。

 そのような意識を小説世界に注ぎこみながら、わかりやすい性格の平凡な男子・三四郎が進学のため上京し体験する見知らぬ世界のこまごまを、面白く親しみやすく書いている。

 上京の途次、宿さがしを頼まれた女性と同じ部屋、同じ布団で夜を明かすことになり、手ごめにでも何でもできたのにシーツで壁をつくって眠る。翌朝、女に「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」と言われてしまって萎縮する三四郎。

 田舎の母の知人の妹を見舞った帰り、いつか大学構内の池のところで見初めた美女にすれ違って物を問われたというのに、名前も訊けなければ誘いもできなかった三四郎。

 ようやく知り合いになれた美女の言葉や手紙に、自分への特別な思いがないかどうか可能性を検討してみる三四郎。
 美女の一身上のことを知っている様子の友人に対し、なかなかストレートにその内容を訊き出せないでいる三四郎。

 対象に対する健全な心の働きや反応が見てとれる。それが、こまごまとあざとくまな板に挙げられ、しかしユーモラスに味付けされていく。
 想像を絶するような異常な設定の中で、異常な判断をくだし行動していく人々が多く描かれる現代の小説世界に慣れさせられていると、これは何とも新鮮な読書体験である。

 このような指摘をすると、「正常」「異常」の判定をつけることだってナンセンスだと批判されかねない。個人の自由じゃないか、それが民主主義だと責められることさえある。しかし、「正常」「異常」の共通感覚さえ育てられない社会とは何だろう。
 そこをしっかり描き出し、健全な三四郎を提示してみせてくれたからこそ、『それから』『門』という連作で崩壊の恐ろしさの前に立ち尽くしてしまう。漱石の小説に対するもくろみやポテンシャルの提起の鋭さは読んでも読んでも汲み尽きることがない。

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紙の本

女性が魅力的

2018/06/25 16:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:けんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「三四郎」に登場する女性は,皆とても魅力的です。
特に,あの「ストレイ シープ」のセリフで知られる美禰子は,現代女性には無い魅力を持っています。
迷える羊と化した三四郎の恋の行方を追いつつ,ページをめくりました。

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紙の本

現代に通ずる青春ドラマ

2016/09/06 00:25

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

熊本出身の帝大(東大)生、小川三四郎の東京での生活を描いた小説。学業の内と外とで彼が出会う人びととのさまざまな交渉が綴られるが、その中心となるのは、美禰子という知的で美しい女性への三四郎の一方的な思慕の感情である。美禰子はまた自らを“stray sheep”(迷える子羊)と呼ぶ、かげのある女性である。(モデルがあの平塚らいてうというのを聞いたときは、やや興ざめだったが...)その態度は、三四郎に気があるようにもとれるし、彼を弄んでいるようでもある。三四郎もそんな彼女の真意を確かめるべく行動することもなく、最終的に彼女は、あたりまえのようにひとの妻となる。物語の冒頭、上京途中の三四郎に向かってある女が放った「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」は、彼のこのような性格を予兆した言葉であり、三四郎ばかりでなくこの年頃の男に一般的な性質といってよいだろう。
 このほかにも、同郷の先輩で光学の研究をしている野々宮、調子のよい学友の与次郎、与次郎の恩師で彼が下宿をしている高校教師の広田など、ユニークかつ現代の世でもいそうな数々の人びとについても語られる。
 特に広田先生の議論は、まさに漱石の人間観炸裂という感じで、興味深い。
 「この二十世紀になってから妙なのが流行る。利他本位の内容を利己本位でみたすというむずかしいやり口なんだが、君そんな人に出会ったですか。・・・昔の偽善家はね、なんでも人によく思われたいが先に立つんでしょう。ところがその反対で、人の感触を害するために、わざわざ偽善をやる。横から見ても縦から見ても、相手には偽善としか思われないようにしむけてゆく。相手はむろんいやな心持ちがする。そこで本人の目的は達せられる。偽善を偽善そのままで先方に通用させようとする正直なところが露悪家の特色で、しかも表面上の行為言語はあくまでも善に違いない・・・この方法を巧妙に用いる者が近来だいぶふえてきたようだ。きわめて神経の鋭敏になった文明人種が、もっとも優美に露悪家になろうとすると、これがいちばんいい方法になる。血を出さなければ人が殺せないというのはずいぶん野蛮な話だからな君、だんだん流行はやらなくなる」
 特に大きな事件が起きるわけでもない、ある意味とりとめのない物語であるが、逆にこれらエピソードのどれもがこの年頃の若者にありがちな経験を映し出しているように思われる。そういう意味では、現代の若者にも共通する情景を描いた名作といえよう。

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2006/05/06 15:08

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2006/11/20 14:09

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