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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:1992/03/16
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波文庫
  • サイズ:15cm/270p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-320681-9
文庫

紙の本

バガヴァッド・ギーター (岩波文庫)

著者 上村 勝彦 (訳)

バガヴァッド・ギーター (岩波文庫)

税込 858 7pt

バガヴァッド・ギーター

税込 792 7pt

バガヴァッド・ギーター

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みんなのレビュー51件

みんなの評価4.2

評価内訳

紙の本

ああっ、バガヴァッド様ぁ

2004/08/24 22:47

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

 インドの超長編叙事詩「マハーバーラタ」長く愛され続けている物語ということで、本書序文でその粗筋が紹介されているが、これがまた人と神様が入り乱れてのヤヤコシイ話ですらすらとは頭に入らない。古典的表現の「百年の孤独」みたいなものか。やがて国を二分して親族同士が相対する大戦争に至るのだが、片方の王がこんな戦争をしていいのかって悩み始めちゃうところを、一人のクリシュナ聖バガヴァッドが神学を元に開戦を決心させるという段、ここだけを抜き出して1冊にしたのが本書「バガヴァッド・ギーター」またの呼び名を「神の歌」というわけです。
 知識のヨーガ、行為のヨーガなどを通じてアートマンからブラフマンへ至る道を示して美しく完結した理論であり、恍惚と恐怖を備えてびっくらこくほどに壮大。インドのみならず世界中の人々に影響を与えてきたのは納得できる。
 そして物語の中で語られているため、ある意味インドの思想について分かりやすく学ぶのにお手頃かもしれない。ただしあくまで物語なので、話の進行に都合のいいように教義をねじ曲げて解釈してるのかもしれないし、実はバガヴァッドに意図があって王をうまく言いくるめてるのかもしれない。だっていいのか、そんなに簡単に戦争させて。そこは現代に向けられたミステリーだろう。いかにマクロによきものであっても、ミクロレベルに応用するときに詭弁と化すのは常道。それでもこの流麗な語りなら騙されて幸せだ。
 ついでに、巷でよく耳にする胡散臭い教義に出てくる言葉がいっぱいなので、なんとなく知ったかぶった気分になれます。
 同じ「マハーバーラタ」からの独立した1編として「ナラ王の物語」も岩波文庫で出てますが、こちらはストーリーの中でさらに古代の物語として語られる作中作で、ナラ王と腰あでやかなダヤマンティー姫の芳醇な愛と冒険の物語。インド古代の物語を味わいたい方にはこちらの方がおススメと思います(が、現在取り扱い無しだそうで、店頭で見かけたら)。さらにマハーバーラタの全訳はちくま学芸文庫から出てますが、これは巨大で、読むのはよほどの決意が要るかも。同じ岩波文庫の「インド古典説話集 カター・サリット・サーガラ」全4巻も楽しく読めると思います。
 1冊の半分が訳註と解説という本書はどえらい労作で、真剣に勉強しようと言う人にはうってつけでしょうが、本編を読むだけでも面白さは十分に伝わる、名訳でもあります。

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電子書籍

これは名訳

2021/02/27 23:55

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:orient - この投稿者のレビュー一覧を見る

美しく洗練されたシンプルな和訳。著者の深い理解や共感あっての無駄のない言葉選びが心にストンと染み込んでくる。

実は、バガヴァッドギーターを知ろうとして最初の頃に読んだ時にはシンプルすぎて理解できなかった。同著者の解説本でNHKラジオ講座の内容をまとめた『バガヴァッドギーターの世界』も併せて読みたい。

ギーターの和訳は入手できるものはほとんど読了したが、物語的に面白くても本質の部分が読み取れなかったり、激しい誤字脱字に独自解釈で元の意味が分からなかったり、神様のお陰を連呼する宗教団体の意図が上書きされていたり、ひたすら原典に忠実であったり。

様々な和訳の中で、日本語として美しく親しみやすく、違和感なく、原文にないものが追加されてるでもなく、しかし日本人には馴染みのない様々な呼称などはあっさり省略し本筋を見失わないよう工夫している。誰の発言か明確な構成。繰り返し読みたい、味わいたい。書き写しながら何度も読み返しているほど最推しの訳。

大体の意味を掴んでから本文だけササッと読みたい時、この薄い文庫本はコンパクトでとても良い。

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紙の本

ヒンドゥー教の聖典

2022/10/19 18:10

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Toshi - この投稿者のレビュー一覧を見る

“もしかしたら、誰もがこのゲームから降りたがっていて、けれど世間の空気というやつがあまりに手強い関門なので降りることを諦めてしまっているのではないだろうか。”
ー伊藤計劃『ハーモニー』ー

“何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。”
ー羽生善治ー

ヒンドゥー教の聖典の一つ。
東洋の宗教や哲学は往々にして、悟りに至る為には世捨て人になることを要求する傾向が多いが、この本はその点について大きく異なり、社会人として義務を果たしながら、悟りに至る道を教えてくれる。

内容としては、統治する国が異なる親族間で争いが起き、その身内同士の喧嘩がそのまま国家間の戦争に発展してしまい、かつての兄弟や従兄弟や師匠を殺さないといけなくなった勇士アルジュナと、彼に助言を与えるクリシュナ神(聖バガヴァッド)を中心とする物語。

親族間の争いに嫌気が差して戦いを放棄するアルジュナに対して、クリシュナがそれでも戦うように要求する中で、自身の教えを説いていく形式となっている。

ヒンドゥー教や仏教の共通の世界観として、万物は絶えず移ろい、確かなものは何も無く、あらゆる生き物が自らの利益の為にお互いを出し抜く無常なサイクルが延々と繰り返されるというものがあり、これを”輪廻”〈サムサラ〉と呼ぶ。

信者達の目標はそのサイクルから抜け出して永遠の幸福に至ることであり、それこそが”悟り”や”涅槃”〈ニルヴァーナ〉と呼ばれる。

クリシュナによれば、自己の利益に捉われず、利益も損失も区別することなく同じものとして考え、行為の結果を動機とせず、ただそれが義務であるという理由だけで何の見返りも無しに為すべきことを為せとのことだ。

そして、最終的にはただクリシュナへの信仰の為だけにあらゆる行いを実行すれば、悟りに至ることができるとのこと。

まるで原始仏教とカルヴァン派キリスト教を融合させたような感じだ。

本書を手に取ったきっかけとして、こうした輪廻〈サムサラ〉を中心とするヒンドゥー教や仏教の価値観は実は進化論との相性が良く(詳しくは「赤の女王仮説」を参照)、前回読んだジョナサン・ハイトの『しあわせ仮説』の中でも本書が引用されていたからというのがある。

また個人的な話だけど、僕の人生観が本書で述べられている価値観と似ていたことも理由の一つである。

そうした営みが報われる保障は無いのに、意識的であれ無意識的であれ、誰もが自身の取り分を増やす為に対立と協調を繰り返すことを強いられ、何一つ確かなものも無い無常なこの世の中で、唯一人間にできることは、ただ自身に課せられた義務を黙々と果たすことだけだと考えている僕にとっては、とても共感できる内容だった。

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紙の本

ガンディーを理解するための一助として。主題は「無償の行為」。

2005/05/05 03:41

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:花代 - この投稿者のレビュー一覧を見る

インドの二大叙事詩のひとつ「マハーバーラタ」の第六巻に編入されているこの有名な聖典を、私が手に取るきっかけとなったのは、ガンディーのギーター信仰である。「ガンジー自伝」第五部「ギーター研究」では、「わたしにとって、ギーターは行為における不可欠の指針になった。それは、わたしの日常必携の辞典となった」としている。
この聖典の主題はシンプルだ。「この世に生きる我々は、定められた自分の職務を、結果を期待せずに、ただ行為のために行為することによって解脱できる。行為の結果は神に預け、成功・不成功に執着してはならない」。つまり、究極の「無償の行為」を説くものだ。
さまざまな宗教書についてほぼ無知の私が、今わかる範囲でギーターおよびヒンドゥー教の特徴を並べると、下記のようになる。
・私たちのような普通の社会人が、特別な修行をしなくとも、自分の仕事をしながら解脱に近づけるのだという明快さ。
・自分の職務は予め定まっており、それを行うべしとする、カーストに立脚した教え。
・よって、武士は人を殺すのが与えられた役割だから、たとえ人を殺しても罪にはならず、気にしなくてよいという教え。
・ブラフマンは最高神であり、他の信仰の対象も実はブラフマンだという解釈。
・しかし、他の信仰対象は最終絶対神ではないので、輪廻を繰り返す。ブラフマンを信仰し一体化した人はもう生まれ変わらない(=安寧)というのが面白い。
・目指す境地は「無我、無私の状態」であり、仏教に非常に近い(当然といえば当然だが)。
・「放擲者(結果を求めず行為する人)」→「ヨーギン(行為の超越を成就した隠棲者)」→「ブラフマン(最高神)との一体化」と、解脱への到達過程を二段階に分けているのが特徴的。
この文庫本の読み方としては、まずp.18の家系図を見ながら、「まえがき」にあるマハーバーラタのあらすじを一気に読む。登場人物が異常に多いがギーター本編にはほとんど関係ないので斜め読みで結構。次に巻末の「解説」を熟読。ようやく本編に入るが、再度「解説」をガイドにしながら読むとよい。訳注は学問的な解釈方法についてなので見る必要はない。

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