紙の本
読むのがしんどいけど、それだけの価値のある作品
2023/12/04 09:41
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1980年に百人余りのスペイン語圏の作家、批評家たちに対して行われたアンケート、「ラテンアメリカ文学の最良の作品」でガルシアマルケスの「百年の孤独」と首位を分かち合ったという作品、と聞いては読まないではいられない。現存している作品(というのも、何が気に入らなかったのか彼は作品をよく破棄していたらしい)は、後、短篇集の「燃える平原」だけだという、私が思うところのラテンアメリカ作品らしい作品で、時系列はバラバラ、今、喋っているのは生きている人なのか、死んでいる人なのかどっちなのか、この人とあの人の関係はどうなっているんだ、ということが読み込んでいかないとわからない、というかはじめのうちはついていくのが大変という難敵、でも、そこが面白い、ちょっとたってからもう一度、いや二度、読み直してみたい、新しい発見があるかもしれない
紙の本
現世と彼岸の混合
2020/11/14 19:16
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペドロ・パラモという父親を求めてコマラという街にやってきた男。ペドロ・パラモはすでに死者になっていた。実は・・・種明かしが主眼でもないのか早々にほぼ全員が死者であることがわかる。エピソードが連なるなかでさらに事態を変えてモノローグが挿入されて最初は混乱するが、それも次第に慣れて心地よさを感じるかもしれない。短いので一読それほど時間はかからないものの、理解できたとは言えない。後書きに解説があって少しわかった気にはなる。でもこれは過大評価ではないかという気もした。
紙の本
記憶はいのち
2016/03/30 10:59
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
この世への思いを断ち切れない使者たちが集まって物語を語り続ける。生きている我々が持っているものは、生命だけではなくあらゆる記憶なのかもしれない。
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生者と死者、現在と過去が数々の断片になって散りばめられており、ペースをつかむまでは読むのは大変かもしれないが慣れると何とも言えない良さがある。ラテンアメリカ文学らしい、幽霊・・・というか死者の魂がよく出てくる作品で、怪しげな雰囲気が漂いつつも暗くはない。
ガルシア=マルケスよりは幾分読みやすいので、ラテンアメリカ文学入門にはいいかも。
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一度読んだだけでは、理解不能。
でも二度目はなかなかおもしろい。
きっと次に読むとさらにおもしろい。
生と死の混交がメキシコの世界観なんだと思う。この世界観は他にはない。
静かで悲しいおとぎ話。
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何度読んでも心が震える。この物語が終わってしまうのがもったいなくて、ゆーっくり、ゆーっくり読む。訳も素晴らしいと思います。映画化されているそうですが、この世界をどのように映像化しているのかという興味はあるものの、こわくて観られません(恐怖ではなく)。
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再読&模写。
これは・・・読めば読むほど言葉を失ってしまう。二回読み、すべて書き写して、断章ごとに分析して、圧倒される。そしてもう一度読む。
書き写すと、非の打ち所の無い簡潔な文章と精密機械の設計図のような構成が身にしみて感じられ全然苦じゃない。
何度読み返しても永遠に「発見」し続けることのできる作品。そう断言できるくらい細かいからくりが多い。
20年かけたという翻訳も凄まじいできばえであるが、この原文を堪能せんがためだけにでもスペイン語をはじめたくなる。
うわー、ベストなんかなあ、これ、ベストかもしれん!
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生者と死者がごちゃまぜに入り交じり語り合う独特の世界観。
緻密で精巧な構成がなされているそうですが、解説を読むまでちょっとからなかった。
再読することで、味わいが増していく本でしょうか。
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顔も知らない父親、ペドロ・パラモを探しに来たファン・プレシアドがたどり着いたのは生者と死者の交わる町だった。町をさ迷ううちにファン・プレシアドも息絶え、墓の中で死者たちは囁き続ける。
ペドロは冷酷な地主だった。町は発展するが、ペドロが唯一欲したのは、幼馴染のスサナだけだった。30年ぶりに再会したスサナは精神に異常をきたし、父親とは近親相姦にあった。スサナを手に入れたペドロだが、二人はまともに言葉を交わすことも出来ない。スサナの死後ペドロは町を荒むに任せる。数年後、ペドロの私生児の一人がペドロを殺す。ペドロは乾いた石の様に大地に倒れ、その数年後、ファン・プレシアドがペドロを探しに町へやってくる…
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文学の凄さが伝わってくる傑作です。過去と現在が交わり死者と生者が語らう幻想的な筆運びの中にメキシコ社会が見えてくる作品。作者のルルフォはメキシコ革命の混乱で土地と家族を焼かれ、生涯2冊の本しか残していませんが、その2冊をして史上最高の作家。
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以前レビューしたイタロ・カルヴィーノの「冬の夜、ひとりの旅人が」の中には、作中作としていろいろな小説の冒頭部分だけが沢山出てきましたが、その中で一番「おいおい、続き読ませてくれよ!!」と思ったのが、終盤に入って出てくるラテンアメリカ小説のパスティーシュでした。
その元ネタがこれだと聞いたのが、この「ペドロ・パラモ」を読んだきっかけです。
ペドロ・パラモと言う名の父親に会いに行けと母親に言い遺された青年が、会ったこともない父親を探して母親の故郷を訪れる。荒れ果てた街で出会う人たちは、どうやらすでに生きてはいないらしい…。
と、書くと普通の幻想小説っぽいのですが、この青年の語りの断片から、説明なくほかの断片に移って誰かのモノローグになったりしていくうちに、ペドロ・パラモの人生と、街の歴史が意外な形でぐーっと立ち上がって来ます。
ラテンアメリカ独特ともいえる死生観、激しい愛憎、五感に迫り来る無駄のない文章、伏線を張り巡らした緻密な構成。
中篇ではあるんですが、思わず読了後最初に戻ってもう1回味わいなおしました。本の再読は良くしますが、読んだ直後に飛ばしもせずきっちり再読するのは、私にしてはかなり珍しいです。これからも折に触れて読み返すだろうとも思っています。
「百年の孤独」とならび賞されるラテンアメリカの古典的傑作、との評判どおりのすばらしさ。
日本では最近まで入手困難だったらしいですが、この秋めでたく岩波から重版が出ました。
岩波文庫、それほど(日本では)名前の知られていない作家、と言うことで難しそう、と敬遠される向きもありそうですが、これは読まないと損。文庫安いし、またいつ版元品切れになるかわからないし…。特に「百年の孤独」が面白かった人なら、ぜひ。
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ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。
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南米っぽいものを読み始めたところなので全然分からないですが、グルグル回って結局みんな墓の中で、読み進むにつれてどんどん足場が切り崩されて行く感じでした。
視点がコロコロ変わるので、ちょっと僕には読みにくかったです。
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ラテンアメリカ文学において、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並ぶ傑作だそうで。
そこまで分量があるわけではない中篇だが、夜中に読み始めたにもかかわらず、どうしても止められなくて一気に読み切った。
読むのを止められなかったのは、複雑な構成なので間を開けたくなかったこともあるが、何よりもこの独特の世界観に浸り続けたかったからだ。
会ったことのない父親ペドロ・パラモを探して訪れた田舎の街でのファンに起こる出来事を中心に描かれるかと思いきや、話は過去にも飛ぶし、目の前で話している人間が読み進めていくと死者だったりする。
70の断片からなる物語だそうだが、その断片は時間軸も、生死の境も、すべて交錯した状態で次から次へ迫ってくる。
読んでいて何のことだかさっぱり理解ができない場面もしばしば。だが、ざらついた荒野の情景が常に頭に浮かびながら読み進める迷宮世界は、ある種の心地良さを与えつつ、緊迫感でぐいぐい心を攻めてくる。
メキシコを舞台にしたと仮定したデビッド・リンチの映画を観ているような感覚だろうか。物語の理解よりも、その圧倒的な世界観の洞窟に潜り込むような。
しかし、この文庫版は解説もすごく丁寧で、読後にかなり理解を深めてくれる優れもの。指摘された箇所を改めて読み返すと、より魅力的な一篇だと感じられます。
イマジネーションをかきたてる驚異の小説です。ルルフォはこれを含め2作しか発表していないようだが、そりゃ崇められるだろうよ!
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どういうわけか、自分の周りに大きい鳥が無数にいて、ばさばさと羽をばたつかせ風で煽られているところを想像してしまった。そのばたつかせた羽から向かってくる風が本作で扱われる「死」のようであり「時」のようであり、鳥菌やら砂埃やら乗せてばさばさと私の顔やら体やらにぶつかって過ぎ去って行く。鳥は無数にいるのであちこちから風はやってくる。それは一定のリズムを保っていない。顔にも風はくるので、つい顔をしかめてしまう。しかめると言っても不快だから、というのではなく奇妙だからである。鳥菌にやられてお熱。
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死んでいる人が起き上がり普通に人と話し生活をしているならばそれは生きているのと何も変わらない。でも町は死んでいく一方だ。