紙の本
<あまりにも見事な江戸の街づくりに学べ>
2003/05/25 01:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まんでりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京を離れて10年をこえた。
都内およびその周辺をあちこちと移り住んだ。
板橋、神奈川、谷中・千駄木、千葉、小石川、亀有。
時と距離を隔てて眺めてみると渦中にあったときとは違ったように見えてくるのは何事によらずそうなのだが、東京も例外ではない。
著者は、現在法政大学の教授で、イタリアのベネチアと東京の類縁を解き明かす。
キーワードは水の都である。
川にせよ水上交通網にせよ、今の東京の何処ににあると言うのか?
地名にその名残を残すのみで水上交通網は自動車中心の道路交通網にとって代わられてしまったのである。
マンションは地形を無視して無造作に建てられている。
春日通の斜面にマンションが林立するのを見て、私はやばいなと思った。
川崎の、これも斜面に家が建っているのを見てやばいと思ったのはバブルのずっと前のことだったが、案の定、土砂崩れが起きた。
江戸時代は地形に逆らわずに建築したらしい。
地形に合わせて、高台に武家屋敷が、谷あいに町人町が形成されたようだ。
明治維新後は言うまでもなく、戦後に至るもこの基本構造は残されてきたようである。
ヨーロッパは、山を削り森林をなぎ払いすべてを平らにして石畳を貼り付けて道路を舗装して都市を創る。
この点で、東京は特異な都市構造を持つと言えるらしい。
住んでいるときは、坂がやたら多いなとか道が京都や大阪とは違って自らの使命感を感じていないと憤慨することが少なくなかったが、こうして離れて眺めてみると、結構いいところもあったなと思えてくるところが不思議である。
現在にいたって、これまで自覚的にせよ無自覚的にせよ温存されてきたこの都市構造が忘却され等閑(なおざり)にされてしまうのは忍び難いものがある。
都知事をはじめとする為政者は、この点への眼差しや配慮を忘れないで欲しいものだ。
そんなことをあれこれ思い起こさせ、考えさせてくれる本である。
紙の本
町へのまなざし
2021/04/05 22:37
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「混沌とした都市のなかにあって、どこにどういう形で住んでいるのかをほとんどの人が忘れかけ、町への愛着を失っている」など、厳しくもやさしい著者の指摘が随所にちりばめられていて、なぜかここちよい。
東京はヴェネチアのように「水」の町であると。それはいわゆる下町。
こんど両国橋あたりでゆっくり缶ビールでも飲もうと思いました。
余談ですが、文庫の地図は50近い身にはきびしく、初めて老眼鏡を買いました。
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江戸と東京には深いつながりがある。そういわれてもピンと来ない人にはぜひ読んで頂きたい一冊。「見えがくれする都市」と共通した視点を持ち、東京という街の魅力を江戸との連続性から解明している。読み物としても非常におもしろく読みやすい本であり、江戸から東京までの変化を追体験するような課題がでた時には持ってこいである。読み終わったときにはなぜ今の東京ができあがったのか、かなりの部分まで納得がつくであろう。
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都市の表面だけを見るのではなく、そこに隠された真相を読み取っていく内容です。東京のことはあまり詳しくないけど、なかなかどうして面白いっす。物事の真実をつかむって重要なことですね。
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江戸から続く東京、という見方で空間の使われ方の特徴の変遷を見て、そこから時代の要請や生活習慣の変化に紐づけて「今のまちはこうやってできてきた」と都市の地層を探っていくような一冊。今見えている東京に奥行きが足されるような一冊で読んでいておもしろかったです。東京に住んでいて、知っている場所が多々出てくるからこそ楽しめるようなところはある内容でしたが、ヨーロッパの都市とのつくりの違いとか「そういうことか」と思うようなことがいくつもありました。東京が独特な都市だということがよくわかった、勉強になる一冊でした。
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西欧が守っているのは建築であり、そのに表徴されている人々の営みの歴史である。
日本の都市に見られるのは、土地の歴史であり場所の特性である。東京の都市空間は理念ではなく、人々の我によってつくられた。ゆえに、人が見苦しいのと同じように、都市も見苦しい。
土地に宿る歴史性を守っている、とは言いがたいほどに都市は我に覆われているけれど、街並みの下敷きになっているのは尾根であり谷。普段歩いている坂道は、何百年も前からある坂道かもしれない。
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何度も自転車で辿ったことのある街道が、通学していた学校の周辺が、お出かけで歩いたことのある街並が、どうして「この形」なのか。ちょっとでも不思議に思ったことがある人なら、この本を読んでスッキリすることうけあい。
東京湾北側の自然地形を見渡すことからはじまり、江戸の町の成立、元禄以降の発展、明治維新以降の大名屋敷・長屋地域それぞれの土地の使われ方、関東大震災からの復興政策、戦後の経済発展と土地利用。これだけ追うと、東京の町が読み解ける。逆に言えば、これだけ歴史文脈を把握しなければ、東京の街の文法は理解できない。ヨーロッパの街と違って、雑然と感じられるのは、トップダウンの秩序がしかれていないから。ごちゃごちゃしているといって批判されてることもあるけれど、この本を読めば、その「ごちゃごちゃ」の面白さに気づけるようになるはず。
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都市について考えるのが好き。
おもしろい街と退屈な街。
おもしろいとは、商業建築にあふれていることではなく、有機的であるということ。
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内容(「BOOK」データベースより)
東京、このふしぎな都市空間を深層から探り、明快に解読した、都市学の定番本。著者と紙上の探訪をするうちに、基層の地形が甦り、水都のコスモロジー、江戸の記憶が呼びおこされ、都市造形の有機的な体系が見事に浮かびあがる。日本の都市を読む文法書としても必読。サントリー学芸賞受賞。
目次
1 「山の手」の表層と深層
2 「水の都」のコスモロジー
3 近代都市のレトリック
4 モダニズムの都市造形
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2011/03/18 成毛ブログ→石原天罰発言の件でKoushoublog紹介→その過去記事で本書紹介
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少し古い時代のものだが、古臭さは一切なく実に内容深い記述ばかりで参考になった。
江戸から明治大正昭和、戦後から現代に至るまでの東京の姿を多角的な見地と見事な記述で綴る。
江戸や東京の都市計画論としては最上の一書だろう。
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大正・昭和初期のモダニズムが東京の都市整備の頂点だった、江戸時代初期の町づくりが東京の基底になっている、江戸は水運の町だった、という著者のポイントがよくわかる。
違う論文を1冊にしているせいもあるが、もう少し簡潔に書けたのでないかとは思う。
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東北新幹線の行き帰りで読了。
陣内先生の東京ものは2冊目だが、今回の本は、山の手、そして水からの視点など、さらに進展している。
いろいろ、手厳しいことを言っているが、それでも、まだ、東京は捨てたものではない、という陣内先生の姿勢が大事だと思う。
高層ビルができて、昔の情緒がなくなった、とか言っても始まらないので、今の現状で、どういういいところがあるのか、大事な雰囲気がどこに残っているのか、をよく考えて、今後の都市計画に反映させていく必要がある。
気にいったフレーズ
(1)適度に狭くて視界がさえぎられ、その中に混沌とした人間の情感を流し込むことのできる猥雑で賑やかな町の空間こそ、日本の都市で、唯一生命感の張った場を形作っているようにみえるのである。(p195)
(2)(震災復興時の)橋梁と橋詰め広場は行政内で部局が異なっていたのにかかわらず、橋の高r欄と広場の手すりが同じ意匠で統一されているのが目をひく。(p262)
(3)大正末期から昭和初期につくられたもののなかには、それ(コンテクスチュアリズム)を先取りしたかのように、立地条件を巧みに読み込んで設計され、見事な都市空間を生み出すのに貢献しているすぐれた建築が多いのである。(p269)
復興まちづくの造成計画、建築計画でも、是非、立地条件にうまくあわせて、設計をしてほしい。その意味でも、マスターアーキテクトが必要だと思う。
今、市町村はそんな余裕はないが、全体として景観設計、あるいは、関東大震災の小学校と公園のように、公民合築の効率的で小規模な建築設計など、配慮する仕組みが必要。
そのために、復興まちづくり会社が貢献できないか?
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東京の各地で再開発が行われていたり、計画中のところもあり、景色が変わっていく。
古本まつりで偶然見つけて買った今回の本は、1985年に発行されたものだが、2023年に読んでも面白い。
東京のベースは、江戸時代に作られたと言ってもいい。
著者は次のように表現している。
まず、初期の江戸は、城下町の明快な理念に基づき、〈計画された空間〉としての為政者の意図通りに形成された。だが、明暦大火後、とりわけ中期以降の江戸は、城下町としての枠組みを超え、豊かな自然をとりこんで周辺部に大きく発展し、山の手では「田園都市」(川添登『東京の原風景』NHKブックス)、下町では「水の都」という、いずれも〈生きられた空間〉としての都市の魅力を大いに高めたのである。
明治以降、西欧を見本にしたが、江戸時代の枠を活用しながら、建物も西洋風でありながらどこか日本風という個性的なものができた。
所々に古い地図や写真を引用している。
浅草、東京、新橋、渋谷、新宿、池袋と浮かぶだけで、様々な顔を持つ東京。
読んでいくといろいろなことが頭の中をよぎる。
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