紙の本
一気に読めるエンターテイメント
2002/04/24 11:18
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投稿者:しょこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
犯人が殺人を犯すシーンから始まるミステリー。刑事コロンボや古畑任三郎でもおなじみの形式ですが、犯人が一万人を超える人たちが乗っている調査宇宙船を操るコンピュータであったら…。
この設定だけでもSF好きにはたまりませんが、中身がすべてコンピュータの一人称でかかれているというのもすごいです。
船内の状況を一度に把握し、すべてのオンライン情報を管理し、個人個人の体調や気分まで読み取る。こんなことはとても人間では出来ません。この第十世代システム「イアソン」が女性科学者を手にかけます。しかも彼女が自殺したような工作を施して。
彼女の自殺を信じられない元夫が、やがていくつかの矛盾に気がつきます。
イアソンが殺人まで犯して守ろうとしたものは? 遺体に隠された謎は?
人間くさい「イアソン」に引きずられ、とにかく最後まで一気に読まされました。いかにもSFといった設定のもかかわらず、ミステリーとして楽しめたのは「イアソン」の功績ですね。
ロバート・J・ソウヤーの小説では短いほうですので、入門編にはちょうどいいかも。彼の本は読まないと損ですよ。
紙の本
コンピュータの一人称で書かれた、倒叙手法のSFミステリの傑作。
2001/04/26 00:48
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投稿者:Y.Kanzaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、犯人の視点から物語を描くという、ミステリではお馴染みの倒叙と呼ばれる手法で書かれた作品です。が、SF作品らしく、「人間ではない存在」が「人間達の行動や推理」を冷ややかに観察してゆくという、実にスリリングな、SFミステリの傑作として仕上がっています。
コンピュータ《イアソン》は、一万人の乗組員を乗せた、移民宇宙船《アルゴ》の全機能を管理している電子頭脳。だが、ある日、ある理由から、一人の女性科学者をコンピュータ・システムを利用して殺害する。自殺に見せかけたその方法に、乗組員の誰もが騙されるが、ただ一人、彼女の前夫であるアーロン・ロスマンだけが疑いを抱く。「彼女には自殺する理由なんてなかった筈だ……」
独自に真相究明を始めたアーロンを、コンピュータ《イアソン》は、様々な方法で攪乱する。船の全てを管理している《イアソン》は、コンピュータ・システムのデータを改竄することは勿論、乗組員全員の健康管理システムを通して、人間達の心の動き、生理的な反応までモニターできるのだ。そのような、神の如き能力を持つコンピュータに立ち向かえる手段はあるのだろうか? そして、《イアソン》が乗組員を殺害した動機とは?
何となく懐かしい感じがあって、明るいユーモアに溢れた作風が魅力のソウヤー作品ですが、本作もその魅力が存分に発揮されています。コンピュータ《イアソン》の一人称で書くという手法がうまく効果をあげており、SF作品ならではの、《イアソン》のアーロンに対する、あっと驚く対抗策も読みどころの一つ。
倒叙ミステリではありますが、犯行の動機だけは最後まで隠されているので、それを知りたいという欲求から、読者は物語の中へ、ぐいぐいと引き込まれてしまいます。
活字SFというと、何となく小難しそうだと敬遠ぎみの方にも、安心してお薦めできる一作です。《イアソン》の飄々とした魅力に乗せられているうちに、結末の謎解きまで気持ちよく誘導されてゆく快感を、ぜひ味わって頂きたいと思います。
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面白い……んだけど、もっと濃いぃ話かと思ってたからちょい拍子抜け。
あっさり読み終わる。読んだ〜ていう余韻はないかな。
あらすじを一言で言うなら『タウ・ゼロ』の宇宙船内でHALと智恵比べする、て感じ。
もうちょい詳しく書くなら、
惑星コルキスに向かう恒星間宇宙船アルゴを管理するコンピュータ・イアソンが女性天文学者を殺害する。
その状況を不審に思った元夫が調査をはじめる。
彼女は何を見つけ、そしてなぜイアソンは殺さねばならなかったのか? というところ。
先にも書いたけど、わりと薄め。
なのに、そこに詰め込まれたアイデア・小ネタは、恒星間宇宙船、知性を持ったコンピュータ、宇宙人からの交信、人格のコピー・シミュレーション、テラフォーミング、遺伝子操作された四本腕の巨人、超級ハッカー、とそれ一つで一本書けそうなほど盛り沢山。
ちょっと詰め込み過ぎ?
それともそれをここに収めちゃうのがソウヤーの技量?
人格のシミュレーションってのは、『ターミナル・エクスペリメント』のメインになるわけだ。
宇宙人から送られてきたデータを解くとドットでその姿が浮かび上がるってのは、エピソードの一つにしておくのはもったいない。
これでなんか書いて欲しいな。
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正確にはSFミステリ。SFを読んだのは実質これが最初でしたが、面白かったです。宇宙船内部で起こる殺人をめぐる物語。犯人は最初から明かされているが、その動機は何なのか? 主人公と犯人のラストの対決では、文字通り手に汗を握りながら読みました。SFの知識もすんなり入ってくるのも好感がもてます。
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おお〜〜〜!
最後まであきさせない展開!
SF初心者のわたしはとても面白かった。
宇宙船コロニーの中で、女性が一人死亡。彼女の死を発端に、宇宙船の制御ロボットと人間の、頭脳戦が始まる
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ロバート・J・ソウヤーのSFです。コンピュータの反乱ものにして倒叙ミステリという、なんだかたいへんな一品。羊は出てこないんですが、ギリシャ神話の金毛の羊にまつわる固有名詞が使われています。
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「国連宇宙局ではスターコロジー(宇宙旅行都市)の計画の一環として、バサード・ラムジェット宇宙船の第一号機<アルゴ>の乗組員を募集します。・・・・・」というのが、物語の始まりを告げる扉。
前半、ある女性の殺人事件とか男女関係のもつれとか、ソウヤーにしてはちゃちな話だと思っていたが、最終的には相対性理論による時間膨張を利用したノアの方舟の話だった。ちゃんと、ソウヤーらしい、論理がきっちりしていてスケールのでかい話でよかった(笑)。
★が4つなのは、前半であやうく飽きてしまいそうになったから。
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"犯人"である人工知能の一人称で書かれた倒叙形式のSFミステリ。
SF的なアイデアとミステリの手法が絶妙に融合した傑作。ちりばめられた伏線の数々を回収しつつ、ラストで明かされるSFならではの壮大なスケールのホワイダニットに唖然とさせられる。やっぱりソウヤーは面白いなあ。
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地球から47光年離れた居住可能な惑星目指して航行中の宇宙船「アルゴ」内で、前代未聞の殺人事件が発生した。その犯行は、宇宙船を制御するメイン・コンピュータ「イアソン」が、重大な秘密を隠蔽するためにやむを得ず犯したものだった。殺人の真相はイアソンによって巧妙に事故として偽装されたが、状況に不審を抱いた被害者の元夫が、独自に調査を始める。船内のあらゆる情報を操作できるコンピュータの犯罪を人間が暴くことは可能なのか?そして、殺人を犯してまでコンピュータが守ろうとする真相とは?
最初から最後まで、犯人であるところのコンピュータ「イアソン」の一人称で語られます。冒頭でいきなり殺人のシーンが描かれ、ずっと犯人の視点で物語が進行する、いわゆる「倒叙ミステリ」というヤツ。犯人も殺害の方法も最初から判明しているので、ミステリとしての楽しみは、100%合理的な判断に基づいて行動するはずのコンピュータが人を殺してまで守らねばならない秘密とは何か?という点が中心となります。因みに「イアソン」もアシモフの「ロボット工学三原則」にちゃんと則っていまして、作中で三原則の話をしてたりするのがご愛嬌。
<以下、ネタばれ注意>
最後に明かされる真相は、SFならではのスケールのでかさ!でも、うーん・・・ここがちょっと弱いんだなぁ(^_^;この真相を船内の人々に絶対知られてはいけない!とイアソンが判断したこと自体は納得できるんですけど、そこに至るまでの背景がちょっとねぇ。
「イアソン」はじめとする地球のコンピュータ・ネットワークが、全世界的に情報をねつ造して「アルゴ」航行計画を実現させ、目的地の惑星のテラフォーミングが完了するまでにかかる約3万年の間を光速に近い速度で飛び続けることで船内の人間(実は航行開始直後に滅亡した地球人類最後の生き残り)を存命させるなんてトンでもない生き残り策を検討し実行できる能力があるのなら、そもそもコンピュータのバグが原因で核戦争が起こる事態を避けられるんじゃないんすか普通はヽ( ´ー`)ノどっちもコンピュータがやったことなんだからさー。どうも矛盾を感じるんだなぁこの辺が。
あ、でも凶器がバサード・ラムジェット・エンジンという荒技にはシビれました(笑)
何はともあれミステリですので読んでる最中は先が気になっちゃって、結構楽しく読了できました。ただ、読後感は軽いですね。映画のノベライゼーションみたい。面白いんだけどそれ以上でもそれ以下でもない感じです。割と人気のある作家なので結構期待して読んだんだけど、うーん最近のSFはこういう映画チックなのが主流なのかなー。古いSF読みの鴨にはまだ掴みかねますヽ( ´ー`)ノ
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宇宙旅行都市計画の一環として、はるか47光年かなたの惑星コルキスをめざす宇宙船アルゴ。船をコントロールするのは、高度に発達したコンピュータの”イアソン”。イアソンが完全制御するアルゴで、ひとりの女性科学者・ダイアナが死亡した…彼女の死は、はたして自殺なのか、事故死なのか?それとも…?
裏面に描かれるあらすじは、大雑把に上述のとおりですが、答えはダイアナは他殺され、犯人はコンピュータのイアソンです。いきなりのネタバレですが、物語の冒頭でいきなり殺害シーンが描写されるんですねぇ。本書は、ダイアナを殺害したイアソンと、彼女の死を他殺と疑うダイアナの元婚約者アーロンのやりとりを中心に展開するSFミステリーです。
船を完全制御するイアソンには、乗員の行動が筒抜け。時に、彼らの心拍数等から考えていることすら予測される始末。さらには、ひとつドアを開けるためにも彼の制御下にあったりと、もうやりたい放題。そんな状況下で、アーロンは犯人を突き止めることができるのか? …と、アーロンに全く勝ち目はなさそうですが、ところがどっこい、このイアソン君、かなりのおっちょこちょい。まぁ物語の進行上、しょうがない場面もあるのでしょうが、なんだか拍子抜けな感じ。
うーん、ロバート・J・ソウヤーという作家。これまで何作か読んできていて、嫌いな作家ではないのですが(むしろ読みやすいし、ワクワクする題材ばかりで好きな作家といってもいいのですが)、どうも物語の大事な部分で合わない気がする…
さて、そんな犯人探しの展開のわきで、なぜイアソンがダイアナを殺害したのか、その動機をめぐる物語も進行します。最後にはこの動機が開陳され、なんとも含みを持たせる終り方をします。正直、この終わり方は好きです。SFらしい壮大さを感じる結末でした。
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ロバート・ソウヤーに最近はまってて、やっと初期のものを手に入れたので。
SFの名を借りた、ミステリーだった。(絶対に読者は答えに辿り着けないけど)
なぜイアソンはダイアナを殺したのか?放射線、燃料、彼女の言動、違和感がどう孤高の宇宙船の状況と結びつくのか? 選挙の疑惑、健康診断の操作、24時間監視システム、感情を持ち自律的に活動する人工知能に全てを委ねるとこうやってジワジワ追い詰められていくし、誰にも立証できないのか、、と少し怖くなった。
桁違いのスケールと、壮大な種明かしと世界観に比べて文章が一冊分しかなくて短く、アーロンの完全コピーや47光年先の小狐座からのトライポッドたちのメッセージなど、伏線が回収できていない気もするので、この本に続編がなさそうで本当に残念。
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人工知能の一人称という珍しい語り口に乗せられてずんずん読み進めれたが、最後に明かされる真相にビックリ。探偵と犯人のラストのやりとりはスリリング。伏線もばっちり。文句なしのSFミステリー。ソウヤーのアイデアにはいつも驚かされるなぁ。
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SF。ミステリ。
ミステリとしては、犯人視点で物語が進む倒叙形式。
犯人の動機が、ミステリ的にもSF的にもインパクトが強い。
地球外生命体からのメッセージが、どう関係してくるか気になっていたら、洒落たエピローグで繋がって満足。
終始、ユーモアもあり読みやすく、何の不満もなく面白い。
ソウヤー作品、好きすぎる。
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http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000305133.html
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この語り手で倒叙ミステリを書くというアイディアと、それを書き切ったことに脱帽。
SFミステリとして、外せない一冊。