紙の本
短編推理小説を確立した珠玉の短編集
2002/07/14 00:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コナン・ドイルによるホームズ譚、第一の短編集。
初期の名作がそろう珠玉と呼ぶに相応しい短編集で、若きドイルのアイデアと情熱に溢れた勢いが感じられる。ポオの『黄金虫』を読んで衝撃を受けた幼いドイル少年が、偉大な幻想作家への畏敬の念、そして自らの文学に対する情熱を注ぎ込んだ先には、現代にも受け継がれる推理小説の形を確立するという偉業が待っていた。このことを、果たしてドイルが意識していたのだろうか。文学の大きな変化をもたらした彼は、世界を変えたとも考えられる。本当の天才だったということもできるだろう。
特別な一冊だ。
ドイルはこの作品集によって、短編推理小説のスタイルを確立させたと評される。今となってはホームズ譚は有名すぎるキャラクター──この点については、一度は自らの手で彼を殺めたこともあるコナン・ドイルもおおいに首肯することだろう──シャーロック・ホームズありきの物語として扱われていることが多い。だが、少し時代を遡るか、ミステリやその生い立ちについて考察している一部の人間にとっては、ホームズ譚は後の短編ミステリの優れた教本ともいえる、素晴らしい作品群だったのだ。
胡散臭いヒーローとして見ている人たちにとっては、古い推理小説であることは認知されているだろうが、数多のホームズ像が存在する弊害なのか、エキセントリックなキャラクターとしてのホームズのイメージが非常に強いらしく、優れた短編ミステリとしての評価を下しづらいようだ。
ホームズを愛するシャーロキアンたちにとっても、ホームズの心情やワトスンとの友情、事件の裏に隠されている事実や、当時の風俗や名士たちの存在を知るための《聖典》──シャーロキアンたちは、ドイルの遺した六〇の長編と短編を敬意を込めて聖典と呼び習わしている──としての丁重な扱いを受けるのみで、推理小説を確立させたという評価について触れているホームズの研究書を目にする機会は少ない。
これでは、余りにも勿体ない。もっと単純に純粋に、この『シャーロック・ホームズの冒険』という作品が、短編ミステリを確立したと評される所以を愉しむべきだ。確立した云々という話自体も少しまどろっこしい。ただ単に、意外な結末が用意されている面白いミステリとして愉しむという、1890年代の状態に戻らないものだろうか。
こんなことを考えながら、僕は久しぶりに本書を手に取った。期待は裏切られなかった。意外性からくる驚きを堪能し、コナン・ドイルのストーリー・テリング力が申し分なく高いことを再確認した。そして、ホームズ以外のキャラクターたちも、非常によく書けていることにも注目したい。短い物語であるにも関わらず、非常に生き生きとして、彼らの暮す日常をベーカー街221bにまで持ち込んでいるのだ。
限られた紙の白い面と、少量の黒いインクだけで、何度もの読書に耐えうる素晴らしい小説の形態を生みだした、短編推理小説の父とも呼べるコナン・ドイルには敬意を表したい。
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シャーロック・ホームズという魔法の様な言葉の羅列が掻き立てる古き良き時代への郷愁。勿論それは19世紀のロンドンではなく、自分の少年時代へ向けられたものだ。
ほんとこれがシェリントン・ホームズだったらダメだったと思うよ、マジで。
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中学時代からの愛読書。
初めて読んだ本、とかそのくらいの勢いなのでは?
そして、なぜかホームズは創元推理文庫で読むという、大した根拠もないこだわりがあります。
(といって「四人の署名」は新潮社で読みましたが)
シャーロックとワトソンのキャラクターがすごい好きです。
なんだかこれ書いてたらまた読みたくなってきた・・・!
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我々にとって、これは“聖典”である。
ホームズ先生の手により解決された事件記録をDr.ワトソンが小説風にアレンジし短編形式で著述した物の第一集。
短編形式だから誰にも読み易く、勿論、何処から読み始めてもいいと言う点で、宗教の聖典と同じである。
これを読まずして何を読む。
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いや〜面白いですね。
事件の内容も面白いですけど、僕ゎシャーロック・ホームズ自身に魅力を感じました。
一度読み始めると止まらなくなる本ですね。
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ホームズのシリーズには独特の空気感、があると思う。本をひらいたときに感じるもの。推理小説はあんまりよまないんだけど、やっぱりホームズはおもしろい。何度でも読みたくなる不思議な魅力。
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時々読み返したくなるシャーロックホームズです。この間古本屋で購入。何度も読んだ作品もあり、全然記憶にない作品もありで楽しかったです。
それにしてもシャーロックホームズと言うと昔NHKで放映されていたBBC版の番組を思い出します。あの物悲しいヴァイオリンの音と馬車の走り去る音のオープニング。ホームズもワトソン君もどうしてもあの役者さんの顔が浮かんでしまいます。また見たいものです…
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『ボヘミアの醜聞』
『赤毛組合』
『花婿の正体』
『ボスコム渓谷の惨劇』
『オレンジの種五つ』
『唇のねじれた男』
『青い紅玉』
『まだらの紐』
『技師の親指』
『独身の貴族』
『緑柱石王冠事件』
『ぶなの木立ち』
2009年9月1日購入
2009年9月16日読了
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シャーロック・ホームズの第一短編集。はじめて読んだホームズシリーズでこの一冊をきっかけにホームズが大好きになりました。とくに面白いとおもったのは「赤毛連盟」「唇のねじれた男」「まだらの紐」。どれもさくっと読めるのでおすすめ。ホームズの言葉にも、心に残るものが多くあります。
▼ボヘミアの醜聞▼赤髪連盟▼花婿の正体▼ボスコム渓谷の惨劇▼五個のオレンジの種▼唇のねじれた男▼青い紅玉▼まだらの紐▼技師の親指▼独身の貴族▼緑柱石宝冠事件▼ぶなの木立ち
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結局はここに始まり、ここに還ると言う作品じゃないかと。
全てのミステリの原点は、ここにあると言っても良いかもしれません。
中学の頃に貪るように読み、大人になってもまだ読みます。
犯人とかわかってるのに。
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全12編を収めた短編集。
~収録作品~
*ボヘミアの醜聞*赤髪連盟*花婿の正体*ボスコム渓谷の惨劇*五個のオレンジの種*唇のねじれた男*青い紅玉*まだらの紐*技師の親指*独身の貴族*緑柱石宝冠事件*ぶなの木立ち
今までまともに読んだことはないものの、聞いたことのある代表作がいくつも含まれていて、何て豪華な短編集。
多くの人に読まれ、読んだことはなくともその名はあまりにも有名、名探偵の代名詞的存在。
ミステリ好きで本屋に勤めているくせに、ようやく読んだ、彼の冒険のかけら。
すっかり彼の語りに、所作に、夢中になってしまった。
なんて、カッコいいんだろう。
カッコイイ!ホームズ!
依頼人が事務所に入って来、座っている姿を見ただけで、その人の職業やその日の行動もズバリ言い当ててしまう彼の観察眼は、感嘆もの。
そして、彼に欠かすことの出来ない相棒、ワトスン。
推理に関しては度々ダメだしをされながらもホームズから絶対の信頼を得ている医者の彼。
「ぼくの友人といえばきみひとりだよ」(五個のオレンジの種)とホームズに言わしめる存在。
今回の短編集では、ホームズがワトスンを語った言葉が印象的でした。
(唇のねじれた男)
「ワトスン。きみは沈黙というすばらしい天分をもっている」と彼はいった。
「だからきみは、ぼくの親友になれるのだ。」
「では、ワトスン、これから事件のいきさつをわかりやすくまとめて話すよ。そうすれば、ぼくが暗中模索していることのなかから、きみがなにか光明をみつけてくれるかもしれない」
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大学のレポートのために読み始めた言わずと知れた名探偵ホームズシリーズの短編集
「まだらの紐」、「赤髪連盟」など、高い評価を受けている作品はやはり面白かったが、最後の「ぶなの木立ち」の独特な雰囲気もよかった
解説のなかで、推理作家レックス・スタウトが「ワトソン博士は女性だった」という研究発表をしたとあって、自分には思いつきもしないテーマだったので読んでみたいと思った
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シャーロック・ホームズの観察眼はとにかくすごい。ほとんど読み進めないと、解決がわからなかったが、最後の娘さんの分などは、これまでの蓄積のおかげだったのか、少しだけ謎解きができるようになっていた。日頃からちょっとした観察を心がけたいと思ったり。推理小説は、時に残酷な感じもあるけれど、それでも謎解きはワクワクするものだなあ。
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文豪ポオによって誕生した推理小説は、それから半世紀、シャーロック・ホームズの登場によって、いよいよ新時代を迎えるにいたった。
ホームズは世界中の国語に訳され、無数の模倣者を生んだ。
しかしホームズの前にホームズはなく、ホームズのあとにホームズはない。
シャーロック・ホームズこそは名探偵の代名詞であり、推理小説そのものである。
本書は処女短編「ボヘミアの醜聞」を筆頭に全十二編の傑作を収めた不滅の第一短編集。
集中の「赤髪連盟」「唇のねじれた男」「まだらの紐」などは、推理小説史上にさん然と輝く名作中の名作である。
コナンドイルの生涯 阿部知二
解説 中島河太郎
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イギリスの作家「アーサー・コナン・ドイル」の短篇ミステリ作品集『シャーロック・ホームズの冒険(原題:The Adventures of Sherlock)』を読みました。
ここのところ、名探偵「シャーロック・ホームズ」関連の作品が続いていますが、本家本元の名探偵「シャーロック・ホームズ」シリーズは、2011年(平成23年)に読んだ『シャーロック・ホームズ傑作選』以来なので、ほぼ10年振りですね。
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ミステリ史上最大にして最高の名探偵「シャーロック・ホームズ」の推理と活躍を、「ワトスン」が綴るシリーズ第1短編集。
「ホームズ」の緻密な計画がひとりの女性によって破られる『ボヘミアの醜聞』、赤毛の男を求める奇妙な団体の意図が鮮やかに解明される『赤毛組合』、閉ざされた部屋での怪死事件に秘められたおそるべき真相『まだらの紐』など、いずれも忘れ難き12の名品を収録する。
*第4位『IN★POCKET』2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/読者部門
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1892年(明治25年)に刊行された名探偵「シャーロック・ホームズ」の記念すべき第一短篇集です、、、
『東西ミステリーベスト10』では、海外篇の3位にランクインしている作品で、イギリスの『ストランド・マガジン』1891年(明治24年)7月号から1892年(明治25年)6月号にかけて発表された以下の12篇が収録されています。
■ボヘミアの醜聞
A Scandal in Bohemia
■赤毛連盟
The Red-Headed League
■花婿の正体
A Case Of Identity
■ボスコム渓谷の惨劇
The Boscombe Valley Mystery
■五個のオレンジの種
The Five Orange Pips
■唇のねじれた男
The Man with the Twisted Lip
■青い紅玉
The Adventure of the Blue Carbuncle
■まだらの紐
The Adventure of the Speckled Band
■技師の親指
The Adventure of the Engineer's Thumb
■独身の貴族
The Adventure of the Noble Bachelor
■緑柱石宝冠事件
he Adventure of the Beryl Coronet
■ぶなの木立ち
The Adventure of the Copper Beeches
■コナンドイルの生涯 阿部知二
■解説 中島河太郎
懐かしい雰囲気が漂い、安心して読める作品集でしたね… 何度か読んでいる作品も多いのですが、そんな中でも個人的には、
「ホームズ」が「アイリーン・アドラー」に出し抜かれてしまう『ボヘミアの醜聞』、
赤毛の男を求め、大英百科事典を筆写することで高給を貰えるという奇妙な団体の真の意図が鮮やかに解明される『赤毛組合』、
家庭教師として異常な高給で雇われ、知らないうちに娘の身代わりを演じさせられていた『ぶなの木立ち』、
の3作品が好みかな。
あとは、盗んだ指輪の隠し場所が絶妙な『青い紅玉』や、雪の上に残された足跡の分析が凱歌をあげる『緑柱石宝冠事件』も印象的です、、、
トリッキーなのは、殺害手段は沼毒蛇だった『ぶまだらの紐』ですかね… 印象的ですが、ミルクで沼毒蛇を飼いならすとか、確実性とか、色んな意味で現実感��薄いですけどね。
変装ネタの『花婿の正体』と『唇のねじれた男』も、ここまで巧くできるのは、ちょっと疑問です… でも、広く言えばエンターテイメント作品だと思うので許容範囲ですね、、、
当時の作品としては、非常に幅広い発想ができたこと自体を評価すべきだと思いますね… 久しぶりに名探偵「シャーロック・ホームズ」の聖典を愉しみました。