紙の本
いやぁ、面白い
2015/10/21 07:13
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなに面白いとは思っていなかった。主人公の振る舞いはやたらにバンバンと誰かを退治する日本のもも太郎、金太郎と違いなかなかにあざとく知恵ものである。
置かれている立場もこれまたやっかいである。こういう知恵をめぐらす冒険譚はおとぎ話とはちがいまことに俗世のあり様で、欲と色にまみれたものである。
英雄オデュッセウスなかなかやるんだこれが。
ギリシャ古典であることはすっかり忘れて愉しめる。
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英雄的行為とリーダーシップ
2018/10/06 12:58
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
力はあっても狼藉を働かず、疲労困憊しているときにも言葉を尽くして助けを求める。そんなオデュッセウスの姿が、古代ギリシャの人たちの考える英雄の一つの具体例なのだと思いました。宴席での振る舞い方に独特の作法があり、他の土地の有力者との受け答えで社会的身分を判断されるところも面白いです。テレマコスがパラス・アテネの助力を受けながら、ネストルとメネラオスを訪ねたとき、受け答えがいかに立派なものであったかを強調する表現に、古代における社会規範のようなものを感じます。
現代とは少し異なる文化を感じるところもありますが、現代に通じる人間味ある姿も多く見ることができます。オデュッセウスが部下を率いるリーダーとして、対外的な交渉には自ら当たり、今後の方針を自分自身で決断し、困難な仕事にも率先して取り組むところは現代でも十分に通用する理想のリーダー像だと思います。日本の昔話ではこのような姿はあまり見ません。他にも、宴会の席で外衣を頭から被ってこっそり泣いているところとか、パイエケス人の競技の場で受けた挑発に落とし前をつけるところとか、去り際にキュクロプスに罵声を浴びせかけるとか、英雄も意外と感情的だったりします。部下が言いつけを守らずにヒュペリオンの牛に手を出して窮地に陥るとか、現代でも似たようなことがありそうで、いつの時代にも変わらないものってあるんだなぁと思ってしまいます。
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テレマコス萌え
2015/02/07 19:06
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投稿者:坪井野球 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何かしらのバイブル的なものは、如何様にも読めるものが多いと聞く。
この作品もむろんそうで、今回既存の研究・批評に触れてうなったのは冒頭多くの初読者がかったるいと感じるであろうテレマコスの冒険こそ、この物語が『イリアス』を超えんとしてその意気込みとシンクロする、枢要かつ気高い部分なのだと。
なるほど同作者(とされている)の『イリアス』とセットで考えると、みえてくるものがあり(あれは超人、半神たちの繰り広げる非日常の半神話だ)、卑小で未熟な英雄の息子こそ、偉大な勇気を発して物語をスタートさせたという読みは近代小説、とくに十九世紀の長篇小説的なのかも。
主人公オデュッセウス登場が5/12(章)と悠揚とした感じも含め、ある程度年を経た人こそ楽しめる名作かと。
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既に完成されていた,“物語”の原型
2005/10/08 09:36
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投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
『イリアス』に比べて,こちらにはスタティクな印象を持ちました。と言っても,オデュッセウスの漂流譚は冒険に満ちていますし,クライマクスでは,きちんと盛り上がります。では,なぜ,私はそのように感じたのか? と言うと,『イリアス』がその全篇を通じて躁状態に近い群衆劇であるのに対して,『オデュッセイア』は,オデュッセウス父子の 2 人を中心とし,はっきりとした起伏を持つ──この相違点がその原因ではないか? と思います。2 大叙事詩の内,『イリアス』ではなく,『オデュッセイア』の方がなぜ度々現代を舞台にカヴァされるのか,その理由が判りました。■
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神様と人間とのお話
2019/07/14 01:49
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
兎に角、登場人物が多い多い!覚えていられないです。特にカタカナ表記が記号にしか見えない私(文系なのに高校の世界史はいつも20~30点ばかり。)には四苦八苦でしたが、神様と人間という視点では古事記なんかを連想しました。
主人公であるオデュッセウスの漂流譚としてのエンターテイメント性は或る程度楽しめましたが、神様のお話だけに破天荒ぶりにちょっとついていけない感はありました。
ただ独特の言い回しに対する新鮮さ(何度も繰り返されるので厭きるが)や、風景描写の清冽さには感嘆しました。
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盛りだくさん
2021/09/30 21:38
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投稿者:ただの人間 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サイクロプスやセイレーンなどかなり有名なエピソードも意外とあっさり書かれているという印象を受けた。
それでいて上下巻になるのはエピソードの豊富さを表しているのかもしれない。
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10年間続いたトロイア戦争が終結、帰国の途についたオデュッセウスはさらに10年の放浪の旅をすることに…。冒険譚だけに、戦争物「イリアス」よりストーリー展開が派手で、一気に読めます。3000年前の文学作品なのに、現代でも面白く読めてしまうのが凄い。現代の論理では納得の行かない部分ももちろんありますが、そうした違和感を超える普遍的な娯楽性のある作品です。全二巻。
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智謀に長けたオデュッセウスの物語。上巻の前半部分は息子のテレマコスが主人公でつまらないですが、後半に語られるオデュッセウス奇想天外な冒険譚は、何度読んでもおもしろい。
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第1歌から第12歌までを収めている。『オデュセイア』はトロイ陥落の後、オデュセウスが20年ぶりに帰国する話である。オデュセウスは仙女カリュプソの洞窟で二人で暮らしている。神々は「人の手」でオデュセウスを帰国させることを決議し、ヘルメスを使者にしてカリュプソにそれを伝える。一方、アテナはオデュセウスの息子、テレマコスを励まし、父を探す旅に出させる。オデュセウスの故国イタケでは、オデュセウスの妻、美貌のペネロペイアに求婚しに集まった男どもが好き勝手に牛や羊を殺して食らい、家産を蕩尽していたのであった。テレマコスはネストルの治めるピュロスにいき、歓迎をうけ、父の消息を尋ねるが、スパルタのメネラオスを尋ねるようにいわれる。続いて、テレマコスはネストルの息子とスパルタを訪れ、ここでもメネラオスとヘレネから歓待をうけたが、オデュセウスの消息はつかめなかった。だた、メネラオスはエジプトの神プロテウスから、オデュセウスがカリュプソの洞窟で生きていると聞いたと、テレマコスに伝える。一方、オデュセウスはカリュプソに別れを告げ、筏で大洋に旅立つが、この筏もポセイドンの怒りで難破し、パイエケス人の島にたどり着く。心優しいナウシカアに助けられ、王妃に目通りし、アルキノオス王から歓待をうけ、宴会や競技会に参加し、また、この国のみごとな舞踊をみる。オルフェウスは楽人デモドコスに「木馬の計」の詩を所望し、涙をながす。それをみた王が客人の名を尋ねると、オデュセウスは身分を明かす。ここからオデュセウスの驚異の航海の話になる。トロイからの帰り道、オデュセウスはキコネス族の町を攻撃するが、逆襲にあい逃げ出す。次に着いたのはロートバゴイ族の島、乗組員の一部はロートス(蓮・ユリ科の植物説もあり)を食べ、望郷の念を忘れてしまう。オデュセウスは「麻薬中毒」の乗組員を無理矢理乗船させる。次についたの一つ目巨人キュクロプスの島、ここで一行ははぐれキュクロプスの洞窟に閉じ込められ、一人づつ食われるという事態に陥る。オデュセウスは「ウーテウス」(誰もいないの意)という偽名を名のり、キュプロプスを酔わせ、その一つ目を杭で潰し、羊の腹にしがみついて脱出する。キュプロクスは仲間を呼ぼうとするが、「ウーテウス」のために仲間を呼ぶことができない。オデュセウスは仲間を食われた怒りから本名を名のりなから、船で去っていく。しかし、このキュクロプスがポセイドンの息子で、以後、オデュセウスはポセイドンに呪われることになる。風神アイオロスの島では歓待をうけ、順風を詰めた袋をもらい、故郷の間近までくるが、欲に目のくらんだ乗組員が財宝と思い、袋を開けてしまい、アイオロスの島に逆戻り、風神から呪われていると言われ、追い返される。つぎに、ライストリュゴネス族(巨人族)の島では仲間が料理されて食われる。脱出して、人を薬で獣に変える女神キルケの島にたどりつく、ヘルメスに助けられ、キルケの難を避け、逆にキルケから歓待され、助言をうけることになる。キルケはまずオデュセウスに冥府に旅立ち、既に死んだテパイの大予言者テイレイシアスの予言を聞くように言う。オケアノス(大洋)の流れを越え、生きながら冥府へいったオデュセウスは、そこで、亡き母の亡霊、オイデュプス王やアリアドネら数々の神話上の人物、だまし討ちで死んだアガメムノン、アキレウス、アイアスらの戦友、そして、ヘラクレスに会う。冥府で助言を得たオデュセウスはキルケの島に戻り、故郷へ旅立つことになるが、それは苦難の旅であった。まず、セイレーンの誘惑を突破し、怪物スキュレと大渦カリュブディスの海域を犠牲をだしながらも乗りきる。しかし、太陽神ヒューペリオンの島で禁じられた神の牛を、乗組員が飢えのために食べてしまう。ヒューペリオンの陳情をうけたゼウスに呪いを受け、船が大洋の真ん中で落雷をうけ、乗組員は全員死亡、船は大破、オデュセウスは船材にのって漂流し、カリュプソの島にたどりついたのであった。『イリアス』は残虐な描写もあるが、基本的に真っ直ぐな男たちの情念のぶつかり合いであり、ある意味「思い邪なし」であるが、『オデュセイア』には神々や民話的な「悪意」が多く、「経済」もでてくる。アドルノやホルクハイマー(『啓蒙の弁証法』)は、オデュセウスに近代市民の原型をみて、自然や迷信の克服、人間の解放を読み取ったりしている。しかし、基本的には『オデュセイア』は神の呪いに翻弄される人間の姿を描いていると思う。知恵と体力でこれを克服していくのが「市民」なのかもしれない。また「誰もいない」ともいうべき匿名性の都市で生きているのが、「市民」なのかもしれない。しかし、運命と表現されるべきものが現代でもなくなったわけではない。むしろ、環境問題やエネルギー問題など、自然の逆襲をうけているのが現状であろう。ギリシア古典を読むことは自然に対する敬虔の念を想い出すためにもよいし、都市文明を考え直すにもよいのではないだろうか。
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ジョイスの『ユリシーズ』を読むにあたっての再読です。
『オデュッセイア』は、言わずと知れたホメロスの『イリアス』と並ぶ長編叙事詩。
ポセイドンの逆鱗に触れたオデュッセウスは、トロイア戦争終結後、10年もの間、苦難の冒険を続け、やっと妻子の待つ故郷のイタケ島に帰り着く。
『オデュッセイア』12110行から成る英雄叙事詩であり、『イリアス』よりのちに誕生したものらしい。
オデュッセウスといえば、トロイア戦争で、トロイの木馬と呼ばれることになる木で作った大きな馬を城内に運び込み、味方を勝利に導いた英雄である。
トロイア戦争勃発時、オデュッセウスには、若く美しい妻ペネロペと生まれたばかりの息子テレマコスがあった。
オデュッセウスは、後ろ髪を引かれる思いで出征する。
予想以上に戦は長引き、10年も続いた。
しかし、オデュッセウスは、そののち、ポセイドンの怒りはおさまらず、10年、海上及び諸国を漂流し、やっと故郷に帰り着く。
オデュッセウスの留守の間に息子のテレマコスは20歳の若者に成長し、妻のペネロペは夫の無事帰還を信じて待ち続けるが、城は厚顔無恥な求婚者で溢れ、妻子は悲嘆の日々を送っていた。
そこに、オデュッセウスが乞食の身なりで現れ、彼自身の弓で、矢を12本の斧の穴に通し、無礼者たちを格好よく成敗する。
叙事詩は、オデュッセウスの漂流中の数ある冒険談と、帰国後の彼の活躍ぶりで構成されている。
とにかくオデュッセウスは格好よく、英雄のなかの英雄であり、絵画の素材としても多く描かれている。
近世、映画として、フランシス・F・コッポラ製作総指揮で、「オデュッセイア 魔の海の大航海」が作られている。
1922年刊行のジョイスの小説『ユリシーズ』は、『オデュッセイア』を下敷きに描かれている。
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ギリシア神話に初めて触れたのがコレ。めちゃくちゃ面白かった…!!多分この松平千秋さん訳のはかなり読み易いんじゃないかな。
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上下巻。ギリシアの智将オデュッセウスがトロイア戦争勝利後の漂流から、帰国するまで。戦が主であるイーリアスとはまったく違った趣の物語。漂流の途上にさまざまな不思議な出来事やものがある。こういう話は好きだ。ちなみにオデュッセウスとサイクロプスの逸話はそのままアラビアの千夜一夜物語に流れ込むという。
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「ホメロス オデュッセイア(上)」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1994.09.16
394p ¥670 C0198 (2022.10.27読了)(2016.09.16購入)(1996.05.07/4刷)
【目次】
凡 例
第 一 歌 神々の会議。女神アテネ、テレマコスを激励する(四四四行)
第 二 歌 イタケ人の集会、テレマコスの旅立ち(四三四行)
第 三 歌 ピュロスにて(四九七行)
第 四 歌 ラケダイモンにて(八四七行)
第 五 歌 カリュプソの洞窟。オデュッセウスの筏作り(四九三行)
第 六 歌 オデュッセウス、パイエケス人の国に着く(三三一行)
第 七 歌 オデュッセウス、アルキノオスに対面す(三四七行)
第 八 歌 オデュッセウスとパイエケス人との交歓(五八六行)
第 九 歌 アルキノオス邸でオデュッセウスの語る漂流談、キュクロプス物語(五六六行)
第 十 歌 風神アイオロス、ライストリュゴネス族、およびキルケの物語(五七四行)
第十一歌 冥府行(六四〇行)
第十二歌 セイレンの誘惑。スキュレとカリュブディス、陽の神の牛(四五三行)
訳 注
解 説
☆関連図書(既読)
「イリアス〈上〉」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1992.09.16
「イリアス〈下〉」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1992.09.16
「ホメロス物語」森進一著、岩波ジュニア新書、1984.08.20
「ギリシャ神話」山室靜著、現代教養文庫、1963.07.30
「古代への情熱」シュリーマン著・村田数之亮訳、岩波文庫、1954.11.25
「オイディプス王」ソポクレス著・藤沢令夫訳、岩波文庫、1967.09.16
「コロノスのオイディプス」ソポクレス著・高津春繁訳、岩波文庫、1973.04.16
「アンティゴネー」ソポクレース著・呉茂一訳、岩波文庫、1961.09.05
「ソポクレス『オイディプス王』」島田雅彦著、NHK出版、2015.06.01
「アガメムノン」アイスキュロス著・呉茂一訳、岩波文庫、1951.07.05
「テーバイ攻めの七将」アイスキュロス著・高津春繁訳、岩波文庫、1973.06.18
「縛られたプロメーテウス」アイスキュロス著・呉茂一訳、岩波文庫、1974.09.17
「ギリシア悲劇入門」中村善也著、岩波新書、1974.01.21
「古代エーゲ・ギリシアの謎」田名部昭著、光文社文庫、1987.08.20
「驚異の世界史 古代地中海血ぬられた神話」森本哲郎編著、文春文庫、1988.01.10
「古代ギリシアの旅」高野義郎著、岩波新書、2002.04.19
「カラー版 ギリシャを巡る」萩野矢慶記著、中公新書、2004.05.25
(「BOOK」データベースより)amazon
トロイア戦争が終結。英雄オデュッセウスは故国イタケへの帰途、嵐に襲われて漂流、さらに10年にわたる冒険が始まる。『イリアス』とともにヨーロッパ文学の源泉と仰がれる、ギリシア最古の大英雄叙事詩の、新たな訳者による新版。(全二冊)
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ホメーロスの言わずと知れた英雄叙事詩。
上巻はキュクロプスや冥府行など神話的要素があっておもしろい。
特に冥府行はギリシア神話の死者の有名どころが出てきて一読の価値有り。
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それはそれは有名な一大叙事詩ですが、そんなに面白いかなぁ。
オデュッセウスは困難に遭うと「なんで俺ばっかりこんな目に?誰か助けて!」て泣き言言ってるだけで何にもしてない気が。女神たちが何で助けてくれるのか分りません。
塩野七生さんがエッセイで書いていた「オデュッセウスは恐妻家で、妻への浮気の言い訳に壮大な物語にした」って話をもとに読むとちょっと楽しめます。