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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1994.11
- 出版社: 創元社
- サイズ:18cm/158p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-422-21092-0
紙の本
ミイラの謎 (「知の再発見」双書)
著者 フランソワーズ・デュナン (著),ロジェ・リシタンベール (著),南条 郁子 (訳)
ミイラはどのように作られたのか。古代エジプトの死生観とどのようなつながりがあったのか。信じがたいエピソードをちりばめながら、古代科学・宗教・盗掘史など多様な視点でミイラを...
ミイラの謎 (「知の再発見」双書)
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商品説明
ミイラはどのように作られたのか。古代エジプトの死生観とどのようなつながりがあったのか。信じがたいエピソードをちりばめながら、古代科学・宗教・盗掘史など多様な視点でミイラを解読していく。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
フランソワーズ・デュナン
- 略歴
- 〈フランソワーズ・デュナン〉ストラスブール第2大学教授。古代エジプト後期の宗教について著作多数。
〈ロジェ・リシタンベール〉パリ・アルチュール・ヴァルヌ研究所放射線医学部長。医学博士。
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紙の本
死後の世界を夢見てのミイラ作りのはずだったが・・・。
2011/09/26 22:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さとあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んでの一番の収穫は、ミイラの作り方が分かったことである。ミイラもの写真も沢山あり、一寸、博物館に行った気分が味わえる。ミイラの作り方は次のとおりである。
1 遺体は死後2・3日してミイラ職人のもとに運ばれ、ミイラ職人はただちに左脇腹に切れ目を入れ、内蔵を取り除く。肝臓、胃、腸、肺は専用の容器に入れられるが、この際、肝臓は肝臓を守るとされている人頭のイムセト神、肺は肺を守るとされているヒヒ頭のハピ神、胃は山犬頭のドゥアムテフ神、腸はハヤブサ頭のベセンネフ神(4神はホルス神の息子)を象った人形のような入れ物、カノポス壷に入れられる。
このシリーズは図版が多いので、この入れ物も写真が出ているが、顔があり、眼、鼻、耳は動物で、髪型はワンレングスのようになっていて面白い。エジプトの人の想像力のユニークさが微笑ましくも感じられる。
心臓は体内に残される。心臓は死後計量がされ、真実と正義の女神マアトの象徴である羽根と一緒に天秤にのせられる。もし、悪行が善行より多いと心臓が羽根より重くなり、死者は秤の側で口を開けて待っている怪獣アムミットに食べられてしまい、2度とよみがえることが出来なくなってしまう。この心臓の計量の為にとっておかなければならないのだが、間違って心臓を取り出してしまうこともあったそうである。そうすると、切り口のあたりに詰めこんだりもしていたそうである。勿論、貴族、王族、身分の高い人のミイラは細心の注意を払ってつくってはいたのだと思う。
腎臓、脾臓、膀胱、子宮は何の処理も施されないのが普通だった。
2 新王国時代になると、脳の除去が始まり、左の外鼻腔から青銅の鈎棒をさしこんで篩板(鼻腔と頭蓋骨を分ける篩骨の平板。嗅神経を通る多数の細孔があるため篩のように見える)を壊し、そこから脳髄を出した。
3 そのあと樹脂を暖めて液状にし、引き出した後の空洞に流し込む。
ラムセス2世の頸椎は骨折をしていたが、生前に骨折をしたのではなく、この樹脂を入れる作業中に骨折している。ラムセス2世のミイラも写真になっているが、とてもよく出来ており、人格までもがわかるほど精巧に出来ている。見た所、骨太で背も高そうである。顔立ちもはっきりと分かり、やはりとても偉大な王だったことが窺える。それにしても、この骨折には大変驚いた。こんなこともあるのだなあと思った。本にも書いてあったが、それだけミイラ作りというのは難しい作業だということを思い知らされた。樹脂はまもなく冷えて固まるが、樹脂の成分は判明していない。
4 これらの作業が終わると脇腹を縫い合わせる。
5 遺体を洗う。
6 ナトロン(自然の鉱床に産する炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムの混合物。吸水性に富む)で覆う。ナトロン槽という言葉があり、液体と思われがちだそうだが、固形のナトロンを細かく砕いてまぶしつけたそうである。ヘロドトス(『歴史』を書いた。エジプトのことも多く書いている)によると乾燥に70日を下らなかったと書いてあるが、これはどうやら間違いであり、ミイラ作り全体にかかった日数とのことである。
7 遺体が乾くとナイルの水で洗って香油のよい香を付けると同時に少し弾力をもどしてやる。
8 ライオンを象った台に乗せ、包帯を巻く。包帯巻きは神官の持っている書物に記された厳密な手続きによってなされ、指1本ずつ巻き、それから四肢に移り、これもそれぞれ別々に巻いた後、大きな衣で包んで幅に広い帯で固定する。腕は胴体にそってのばすこともあれば、腕を胸の前で交差させるオシリスのポーズをとらせることもあるが、前述のラムセス2世のミイラでは交差され合わされていた腕が離れてしまっている。これは、長い間のうちに組織が変形されたためだそうである。包帯も巻き方も、時代が下ると、巻き方にこだわるようになり、幾何学模様を浮かび上がらせたり、スタッコ(建築に使う化粧漆喰)で装飾を施したりするようになった。 最後に頭に包帯を巻く。包帯に樹脂をしみ込ませることもあったそうである。包帯のあいだには護符がはさみこまれ、ツタンカーメンの護符は143あり、それほど身分の高くない人のミイラでさえ40ほど見つかっており、この護符を目当てに盗掘泥棒が出るわけである。写真もあるが宝石で出来ているのか、とても色鮮やかである。
9 これで遺体の保護が終わったことになる。
10 完成したミイラは家族のもとに返され、これでやっと葬式が出来るのである。時代が下ると見た目にこだわるようになり、眼に玉葱や黒曜石を入れたり、ミイラに生前そっくりなように絵を描いたりもする。
なくなってから1週間経たないうちに、通夜、告別式まですませる現代の日本から考えると気が遠くなりそうでもあるが、精神的にも体力的にも弱った中で行われるのを考えると、こちらの方がいいような気もする。
この丁寧なミイラ作りは非常に高くついたため、早く、安価な処理を望むものには懐に合わせて、更に2つのコースがあった。
中程度のものは肛門からある種の油を入れて内蔵を溶かす、最も安いのは遺体を洗ってナトロンを塗るだけであった。しかしこのナトロンというのが大変高価なもので大量に使う事は大変だったようである。
包帯の巻き方にも差別化され、一番安いコースでは指は5本別々に巻かれず、一番費用のかさむ布も質を落としたり、新調したりせず、あるもので間に合わせたりしたそうである。
死後の世界での生を願ってミイラにしたのに、ミイラにして葬式をしてもすぐに盗掘泥棒が現れ、護符や死後の為の調度品や、宝石を奪ったりまた、王の棺でさえも使い回しをして1つの棺に何人ものミイラが入って下のミイラは形が崩れたりしたそうである。
盗掘は、墓守と墓泥棒が協力をしあってということもあり、近代になると、墓泥棒がヨーロッパから来た美術館の職員を墓に案内したこともあったそうである。
もう驚くしかない!?
そうなると死後安らかな事を願ってミイラにしたのは、いったいなんだったのだろうかということになってしまう。墓泥棒のミイラ作りだったのか?
しかし、この墓泥棒の中には生活に困り、やむにやまれず墓泥棒をしたものもいたという。
何だかこの本を読んでとてもやるせない気持ちになってしまった。
いろいろと驚く事の多い本であった。