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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1994.12
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/213p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-509006-2
紙の本
十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)
バルセロナ、ジュネーヴ、ローマ、パリ…。〈ヨーロッパのラテンアメリカ人〉として頻繁な旅を暮らしてきた作家のアイデンティティを模索する奇妙な12篇。【「TRC MARC」の...
十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)
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商品説明
バルセロナ、ジュネーヴ、ローマ、パリ…。〈ヨーロッパのラテンアメリカ人〉として頻繁な旅を暮らしてきた作家のアイデンティティを模索する奇妙な12篇。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
大統領閣下、よいお旅を | 15-50 | |
---|---|---|
聖女 | 51-69 | |
眠れる美女の飛行 | 70-78 |
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紙の本
十二の短編のそれぞれが濃厚。
2015/12/24 17:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テイストは様々だが、どれも充実したコンクな世界。
ブラックユーモアを通り越して怖い話。「電話をかけに来ただけなの」。狂人でもないのに精神病院に収容され、ついに訪れた恋人も彼女が狂っているのだと思って助けようとしない。医師の権威の前に一般人の叫びが握りつぶされる怖さ、そして何より正気と狂気の境などそれほどはっきりしたものではないのかもしれないと思わせる不安。閉鎖的な社会だからこそ成り立つ事件ではあるが、そうとばかりはいえない本質的なところでの人間存在の危うさを突いている。
同様に、ありえないと思う展開で話が悲劇を迎えるのが「雪の上に落ちたお前の血の跡」。新婚旅行でヨーロッパに来て血が止まらない彼女を病院に入れたら、面会日が火曜と言われ、週末心配でたまらず過ごす夫。ところが火曜日訪れてみれば…、ととんでもない結末が待っている。言葉が通じないのと複数の誤解がまねいた悲劇。
好きなのは「眠れる美女の飛行」と「悦楽のマリア」。前者は題名からも明らかなように川端を意識している。飛行機で隣に座った美女を観察し続けた男が、美女があっさり去っていくのを「別れも告げず、私たちの幸福な一夜のために私がした多くのことにお礼を言わず」と恨みがましく見つめるのは、妄想の果ての狂気ではあるが、文章にされるとユーモラスさえ漂っておかしい。後者は、死ぬという啓示を得た夢が、実は若い素敵な男との出会いだったと気づくところが、そこまでの経緯と激しい落差があって印象的。