「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【日本絵本賞(第3回)】公園に捨てられていたあかんぼうのねこが、通りかかった男の子に拾われ、家族の一員として暮らしている様子をねこの視点から描く。繊細な銅版画とあたたかい文章で展開するほのぼの絵本。【「TRC MARC」の商品解説】
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
しあわせなまいにち
2009/04/03 08:18
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イラストレーターの和田誠さんちの飼い猫の名前は「シジミ」。「とってもちいさくて、貝のシジミのからのもよう」によく似ていたから、ついた名前です。
シジミのことは和田さんのライフワーク的業績でもある「週刊文春」の表紙画を集めた『表紙はうたう』という画集の中にも「猫に思い入れが深いのは家族に加わっていた年月が長いせいだろう。(中略)長男が小学生の時に公園で拾ってきたシジミが思い出深い」と書いています。ということは、シジミは「週刊文春」にも登場した、有名な猫でもあります。(「週刊文春」の表紙を飾ったシジミは写実的に凛々しく描かれていますが、この本ではとても優しそうな柔らかい表情です)
この絵本は、そんなシジミの視点で日常を描いた絵本です。
第三回日本絵本賞も受賞(1997年)しています。
和田さんが夏目漱石の『我輩は猫である』を意識されたかどうかはわかりませんが、冒頭の文章「ぼくはねこです。なまえはシジミ」っていうのは、やはり漱石の「我輩は猫である。名前はまだ無い」を彷彿させ、くすんと笑えます。
和田さんは漱石のようにお髭をはやされていませんが、もしあったら、この文章のあとで、すこうしお髭を撫ぜたりしたかもしれません。そんな書き出しです。
シジミがどろぼうをつかまえるきっかけになった「事件」のことも書かれていますが(この時の奥さんとシジミのツーショットのさしえがとてもいいんです)、これなども漱石風の「事件」で、きっとこのお話を書かれたあともお髭があれば、二度くらいは撫ぜたと思います。
この絵本のおしまいは年老いたシジミがトランクの中で眠っているさしえです。そして、「このごろぼくは、あそんでいるじかんより、ねているじかんのほうがおおくなりました」という文章がはいります。
シジミのそんな「しあわせなまいにち」がこちらにも伝わって、幸福な気分にしてくれます。
残念ながら、シジミはもういません。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。