紙の本
あらかじめ用意された挫折を生きる
2001/08/07 19:08
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投稿者:kama - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつも最後に裏切られる小説。山本文緒さんの作品を、そのように位置づけて読んできた私ですが、今度ばかりは違いました。最初のタイトルを見ると、主人公がどんな困難を抱えているのか、すぐにわかるからです。我々読者は、主人公の不幸を承知の上で、読み進めていくのです。彼女達がどんなふうに、どんな思いで、骨粗しょう症や、自律神経失調症などのトラブルに相対しているのか、大体想像通りに展開します。そうなると、終わりはどうなるのかなんとなくわかるような気がしてくるのです。ゆえに、こっぴどい裏切りに会うことは無いのです。あ〜、やっぱりね、といった感じで読み終えるのです。
山本文緒さんの小説には、完璧なハッピーエンドなどありえません。ありのままの現実を淡々と、なおかつ少々衝撃的に、私たちに見せてくれる。これは、彼女の全ての作品において言えることで、この短編小説集も、その点ははずしておりませんでした。
どんな人の人生にも、完璧な不幸や、100%の幸福は存在しません。いろんな問題やトラブルを抱えたまま、さまざまなリスクが織り込まれた生を、全ての人は生きているのですから。そのリスクをよきものとするか、悪しきものとするかは、それを生きる人次第。
この本の中の全ての主人公達は、なんとか自らの不幸を、手のひらに乗せて、ころがすようにして眺めつつ、捨てることのかなわぬソレに、時折ため息などつきながらも持ち続けていくのです。
彼女達の挫折は、もしかしたら挫折などではなく、むしろ至福なのかもしれないとすら思えてきます。
あれっ? これって、やっぱり最後で裏切られたということになるのかな? だとしたら、やっぱり山本文緒は、裏切る小説家。恐るべきストーリーテラーです。
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短編集なので読みやすかったです。病気とそれにまつわる女性の話です。『観賞用美人』はかわいい結末でよかったです。中にはリアルでちょっと怖い話もありました。
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【メモ】短編集・骨粗しょう症、睡眠障害、味覚障害(表題作)など10の現代病(主人公は女性)がテーマ・読後感良し・「過剰恋愛失調症」〜病弱でなかったらいい子なのに〜
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体に悩みを抱える女性たちを主人公にした短編集。「ご清潔な不倫」「秤の上の小さな子供」「過剰恋愛失調症」に、読んでいて不思議な気持ちにさせられたり、あっと思うところがあったり。(2007.9.2)
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現代女性のストレス・シンドローム物語を集めた10話の短編集です。
病気を題材にしていて読んでて面白かったです!アトピーや肥満とか自分に関係している話は特に、興味深く読んじゃいました。
【元モデルの美女が僕の会社の事務員に!!だが、彼女は仕事が遅くて・・「観賞用美人」生理痛が重い順子は生理前になるとイライラしてスタンガンを手に街を徘徊する「月も見てない」太っているのに信じられないくらいモテる美波その秘訣とは?「秤の上の小さな子供」突然、味覚がなくなってしまったフードコーディネーター「シュガーレス・ラヴ」】などなど。
女性に読んで欲しい一冊です♪
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10の短編集。どの短編も、女性がある病気を抱えています。それは、骨粗しょう症・アトピー性皮膚炎・便秘・突発性難聴・睡眠障害・生理痛・アルコール依存症・肥満・自律神経失調症・味覚障害・・・ストレスからくる現代病を抱えています。読んでいて、なんだか人事ではありません。明日はわが身・・・って感じは話ばかりです。
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久しぶりの恋愛小説。
カテゴリーが病名別になってて、なかなか面白い。
べったべたな感じでもなく、今の私だから「面白い」って思えた感じ。
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短編なので読み進めるのがとても早かったです。女性特有の病気もあり、自分だってなったかもしれない、なるかもしれないなんてことを思いながら読みました。主人公はそれぞれにストレスを抱えていて、そのストレスが私にはそんなことと思えるものもありましたが、自分の置かれている立場によっては仕方がないのかもしれないなーと思うと同情する気持ちも芽生えました。
私は表面上は神経質な人間に見られないことが多いです。でも夫は神経質だよねと言うので実は結構細かいことを気にして悶々としてしまうようです。いや、そうだと自覚しています。でも見栄なのか周囲には余りそれを見せられないので二面性があるように思われてしまうのかな。
私が1番気になったのは最後の味覚障害と言う病気。息子がならないようにインスタントものは買わないようにしようと決めました。
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読んだことある気がする。難聴の先生の話は模試か何かで読んだ。読みやすいし、たぶんすきな系統ではあるとおもうのだけど、残るものがなにもない。
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短編小説集。各短編のタイトルに作中人物がかかっている病気の名が添えられていて、それが各話のテーマとなる。
…と説明するとどうしてもその病気に目が行ってしまうし、実際自分自身もそう読み取りかけたんだけど…そういう本じゃないんだな~、というのがとりあえずの感想。そういう病気を引き起こす本人のもってる問題に焦点を当てる作品なので、かみしめるとなかなかエグい。
ただ短編で尺が短い、という事情があるにせよ、どの作中人物も病気が治るわけでもないし、根本問題が解決するわけでもない。ある意味「本当の戦いはこれからだ」で終わってしまう後味の悪い作品なんだけど、文体と文構成がよくできているのでさらっと飲み込めてしまう。ちょっと怖い一冊でもあります。
2013年3月30日、書中の短編「いるか療法」の朗読がラジオ文芸館で再放送。
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どの話にも「病気」が絡んでくる短編集。
山本文緒は女のの悪さや弱さ、狡さを描くのが本当に上手だと思う。それが短編であっても。読んでいてとてもストンと来る。私が性悪だから?笑
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女性をとりまく
ストレス・シンドローム。
それに立ち向かう姿は、
かっこいいとは言えないかもしれない。
けどみんな必死なんだよね。
観賞用美人はなんかかわいいし、
過剰愛情失調症はあったかくて好き。
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文庫本の装丁がチョコレートでした(笑)
だから手にした・・・とお思いですか?
タイトルも好きです。
現代女性をとりまくストレス・シンドロームと、それに立ち向かい再生する姿を描いた短篇10話。
裏表紙に書いてあった。
短時間正座しただけで骨折する「骨粗鬆症」
美人といわれてトイレにも立てなくなる「便秘」
恋人からの電話を待って夜も眠れない「睡眠障害」
月に一度、些細な事で苛々する女の「生理痛」
フードコーディネーターを突然襲う「味覚障害」・・・
これを読んだだけで興味がわいて買いました。
面白かったです。短篇だし読みやすかったし。
それぞれにいろんな原因があって、症状が現れているのだけれど最後は前向きな終り方になっているのですごくホッとする。
女性って強いな。
励まされる。
山本文緒さん 好き。
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それぞれの登場人物の人生の一部を読んだにすぎないが、こんなにも恋愛関係ってどろどろしてるものなの?小説だから?現実にないとも言えないと思っているのは間違いだよね?笑
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人並以上に仕事をし、主任になったフードコーディネーターは、会社を辞めて独立しようとした矢先、味覚障害になったことに気づく(「シュガーレス・ラブ」)。
ストレスを抱えた女性たちが睡眠障害、アルコール依存症などを克服し、癒されていく姿を描く短編集。
…と書くとハッピーエンドみたいに思えるけど、そんなに単純なハッピーエンドではない話もある。
今まで気づかなかった、自分を縛り付けていたものに見切りをつけて捨てることで、ストレスから解放されたとか。
解説で「王子様なんか来ないと知ってしまったシンデレラたちの物語」と書かれていて、それは言い得て妙だと思った。