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山田風太郎明治小説全集 11 ラスプーチンが来た (ちくま文庫)
ラスプーチンが来た ――山田風太郎明治小説全集(11)
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紙の本
明治化物草紙
2011/06/10 11:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治期の日本にラスプーチンが来る、
その間の「大津事件」、その周辺状況を描く、
という山田流if明治時代小説なのですが。
スーパーロボット大戦、もしくは平野耕太の『ドリフターズ』みたいな状況を思い浮かべてもらうと分かり易い。
登場するのはタイトルにもあるようにまず怪僧・ラスプーチン、
それから大津事件の主要人物達・ニコライ二世、児島惟謙、津田三蔵、
ほんで二葉亭四迷、乃木希典、内村鑑三、アントン・チェーホフ、ニコライ大教主、下田歌子(下田宇多子)、飯野吉三郎(稲城黄天)、川上操六
カメオ出演に川上音二郎、谷崎潤一郎、正岡子規、夏目漱石、森歐外、津田梅子、ベルツ、
ともうやり過ぎ感が漂うほど、明治の化け物どもが一堂に会している小説です。
で、これらをまとめて主人公となるのは明石元次郎。
ロシア革命を先導したとか何とか言われる、
実在した日本のスパイの大家である軍人。
まぁ広く知られるスパイが果たして名スパイなのかどうかはよく分かりませんが…。
天衣無縫・怪男児・快男児の彼の、明朗なヒーローっぷりは痛快。
とても合理的かつ理性的、でも既存のルールに縛られない、色々と無精で汚ない。
南方熊楠のイメージとダブらせながら読んでいました。
勿論、チェーホフとラスプーチンが出会ったという史実はありませんし、
ラスプーチンが日本に来た記録もありません。
しかし、山田風太郎の手にかかればもう、
同時代人ってだけで「関係性があるもの」として、
上記の人物達が全て一つの物語の登場人物としてまとめ上げられるのだから凄い。
ただ本当にカメオ出演の人達はちょびっとしか登場シーンが無い為、「あっ!この人知ってる!」という喜びを盛り上がらせる素材くらいに考えておいて下さい。
僕は夏目漱石と正岡子規の登場シーンで、
ほんの4、5行の描写ながらしっかりキャラクターを感じられてニヤっとしました。
どのキャラクターも非常に生き生きと描かれ、司馬遼太郎が日本人の竜馬観を決定してしまったように、色んな歴史上の人物達がこの小説によって読者に固定イメージを与えるかも。
大筋のストーリーとしては
軍人・明石と稲城黄天との、そして物語後半ではラスプーチンとの戦いとヒロイン・竜岡雪香とのロマンスが描かれます。
それだけであれば、如何にもな「伝奇小説」「時代小説」でしかないのですが、きちんと思想性が滲み出ている所が、ちゃんと「文学」しています。
例えばラストの描き方。
単なる伝奇小説であれば、明石がラスプーチンを倒して、雪香と明石が結ばれて良かったね!というハッピーエンドでも良さそうなモノを、この終わり方はまるでその後に続いて行く国勢、世界情勢を反映したかのよう。
化物共が横行し、くるくると日本や其れを取り巻く世界が急速に変化し、とてつもなく「面白い時代」であった筈の明治が、
何故その後の「暗い日本」へ続いて行くのか?
歴史観を踏まえると、ラストの描写も少し見方が違って見えるのではないでしょうか。
また、ヒロインの「聖女」としての描き方。
それは作者なりの女性への神秘性・強さに対する信仰の形であったり。「穢れ無き乙女」だからこそ、竜岡雪香はこうならなければならなかった、という結末にも思えます。
山田風太郎は忍法帖シリーズしか知らなくて、
エンターテイメント性の強い作家という印象が強かった。
勿論、この小説も有り得ぬ人物同士の邂逅、スーパーロボット大戦のようなそれぞれの人物に対するファンへのサービス的出演、
エンターテイメントバリバリです。
しかし、山田風太郎≒エログロという僕の勝手な山田観に、
この小説はセンチメンタルという属性を付加させてくれました。
紙の本
快男児明石元二郎ここにあり
2005/03/28 00:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の明治ものの一作で、主人公は軍人の明石元二郎。この人は実在の人物で、日露戦争時にはヨーロッパで諜報活動に従事し、後に大将になり台湾総督を務めたほどの男。この明石元二郎の若き日の姿、ロシアの怪僧ラスプーチンや胡散臭い占い師との争いを、二葉亭四迷や内村鑑三、乃木希典将軍、チェーホフなどなど実在の人物とロシア皇太子襲撃事件や森有礼暗殺事件等実際にあった事件を上手に使い、得意の伝奇風の色彩を加えて描いています。
メインは書名にあるようにラスプーチンとの争いなのですが、登場は物語も半ばを過ぎたころ、それまでは政界にも顔のきくインチキ占い師と一人の女性を巡って争います。この稲城という占い師、仇役だけあって良く書けていて、傲岸不遜でいかにも憎らしく、それでいてどこか面白みのある男。明石と稲城の丁々発止のやりとりは読み応えがあり、どっちが勝つかは言わずもがな、スキッと胸のすく思いが楽しめます。その分割りを食って、肝心のラスプーチンとの争いはいまひとつ盛り上がりに欠ける感じ。終わり方も、明石の将来を暗示するような終わり方ではあるのですが、なんともあっけなかったのが残念ですね。
紙の本
うーーーん、面白い!!
2002/06/30 01:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:柿右衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろい!!
この一言に尽きてしまうかもしれない。
日露戦争時、欧州、ロシアで間諜として大活躍した明石元二郎の青年時代の話である。
乃木希典の家族の問題を解決してみせたり、ニコライ大聖堂のうえに上ってみたり、明石元二郎は実に大物で、その大胆さぶりはとても気持ちがいい。
かれが諜報で大活躍したのもうなずける話である。
そんな明石の活躍と主に、ロシア皇太子殺傷の大津事件を奇想天外な推理を描ききった。
またこの物語には、二葉亭四迷はじめ明治時代の大物たちがちょこちょこ顔を出す。
本来なら主役級とも言える彼らのちょい役っぷりがまた面白いのだった。
明石元二郎のその後も知りたいところである。
果たして怪僧ラスプーチンには勝てたのだろうか?