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商品説明
吉田茂の懐刀として、戦後史の数々の重大な局面に立ち会いながら、自らは黙して語らずに逝った風雲児・白洲次郎。「昭和史の隠された巨人」の姿を、夫人・正子ら多数の知人の証言でたどる。1990年刊私家版の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
青柳 恵介
- 略歴
- 〈青柳恵介〉1950年生まれ。成城学園教育研究所勤務。著書に「日常の食器 酒の器」「民芸買物紀行」などがある。
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紙の本
日本国憲法誕生秘話を読んでいるようでした。
2003/06/20 23:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後日本の根幹を成した方々の名前が惜しげもなく登場し、白洲次郎という人物についての証言をされているが、これによって白洲次郎という人物が戦後の日本においていかほどに重要な役目を担っていたかという事が分かった。そのような人物が亡くなっても葬式すらやっていないのには驚いたが、それがこの人の流儀なのだろう。
幾つもの思い出の写真が盛り込まれているが、少年期の原因不明の抑えがたい不満の表情、青年期のどこか悲しげで憂鬱そうな表情、自身に満ち溢れた眼光鋭い壮年期、晩年の円熟味を増した表情、言葉だけではなく姿で自身を語れる人物はそうそういないだろう。白洲次郎に惚れ込んだ白洲正子の本物を見極める人物眼は流石としかいいようがない。
「白洲正子自伝」では白洲次郎は年だから兵隊にとられなかったと書いてあるが、本書では白洲次郎が旧知の陸軍の高級将校に頼んで召集取り消しを依頼した事が証言されている。長年連れ添った夫婦といえども知らない事実があるのには驚いたが、自分自身の問題は女房にも語らないという姿勢にダンディズムを感じる。
サンフランシスコ講和会議に随行した白洲次郎は吉田茂の「堂々とした」「一徹さ」にいたく感動したそうであるが、自分の信念と流儀を貫く姿は吉田茂と似たところがある。勝者の立場から無理難題を突きつけるGHQとの交渉において、白洲次郎のような人物がいたことは日本にとって誠に幸せであったと思う。現代においてもアメリカに対して従属的な姿勢を表明する政治屋が多いなか、石原慎太郎氏に人気が集まるのも信念を持ったリーダーを求めている証拠ではないだろうか。私心から地位や権力にしがみつく輩が多いなか、自らの役目を終えるとさらりと身を翻して去っていく白洲次郎は「風の男」である。
晩年の白洲次郎がイギリスに留学していた頃の友人ロビンと今生の別れをするシーンについて娘婿の牧山圭男氏の証言があったが、何度も読み返してしまうほど印象に残った。できすぎの小説を読んでいるような「かっこよさ」がそこにあるが、それができるというのは本物なのだと思う。
ただ、このような本物と付き合うとなれば、相応な覚悟が必要だろうなと思った。