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閉じ箱(角川ホラー文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 4.6 7件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1997.12
  • 出版社: 角川書店
  • レーベル: 角川ホラー文庫
  • サイズ:15cm/471p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-04-188306-7
  • 国内送料無料
文庫

紙の本

閉じ箱 (角川ホラー文庫)

著者 竹本 健治 (著)

閉じ箱 (角川ホラー文庫)

821(税込)

ポイント :7pt

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みんなのレビュー7件

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評価内訳

  • 星 5 (4件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)

紙の本

論理の終焉たる狂気

2001/06/04 02:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ロブ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『氷雨降る林には』
 濃密な薄闇。この作品には濃淡に彩られた闇が渦巻いている。到る所で予感に震えている。竹本健治が突き詰める狂気。それは著者自身の抱える闇とも思われるほど、痛々しい。一応、そう認知されているがおそらく彼は本質的にミステリ作家ではない。構築ではなく破壊に、論理の終焉たる狂気に、明晰の果ての混沌に、恐怖に悪夢に闇に、闇たる自分に突き動かされている。
 ミステリらしき謎と解明は用意されているが、この作品がそれを描くために書かれたものではないことは明らかだ。人形めいた登場人物たちにリアリティなど一欠けらも感じさせない。だが、駒として操られる本格ミステリの登場人物とは一線を画している。本作の登場人物たちは死んでいる、腐り、膿んでいる。カタストロフを生むのは揺らぎではなく喪失でありその再確認だ。
 “氷雨降る林には”誰もいない———ただ圧倒的な風景が確固と存在している。雨の音が轟いている。

『閉じ箱』
 本格ミステリの約束事に対し、嫌悪感ともいえる拒否反応を示す竹本健治のミステリ観を端的にあらわした作品。
 しかし、ここまで高度に洗練され、なおかつ剥き出しの鮮烈を以って迫る竹本健治のスタンスは本格というジャンルにとって必要なものであるに違いない。事象の不確定性を説く極めて数学的な思考が、やがては闇に吸い込まれ白い闇と名探偵の哄笑だけが残される。匣の外もまた匣によって閉ざされた世界なのだということを昏く描き出した、愛すべき佳品である。

『恐怖』
 この掌編は竹本健治のミステリ作家としての資質と、幻想小説作家としての資質が高次元で融合した傑作である。「腐蝕」などで見られる悪夢としての恐怖ではなく、怪談としての恐怖を抽出することに成功している。
 怪談における最も重要な要素が語り口にあることは論を待たないであろう。その鋭い結末もさることながら、語り部たる主人公の荒涼とした夜の砂漠を思わせる、のっぺらぼうな語り口がこの作品を遥かな高処へと押し上げている。
 もっとも、竹本健治の文体はこの作品に限らず鬱々とした陰りを醸し出す稀有の文体ではあるのだが。

 佐伯千尋シリーズを貫いているテーマは言うまでもなく、アイデンティティの崩壊である。竹本作品には繰り返し扱われるテーマではあるが、このシリーズにおいては一つの法則性をも見出すことができるほどに共通した手法が採られている。つまり、一種の叙述トリックとでもいうべき効果である。その目的が意外性にあるのではないにせよ。
 『実験』では最もオーソドックスにこの手法が取り入れられている。とはいえ、作者はカタストロフを隠そうとはしていない。むしろ、読者に悟られることを前提として書かれているといっても良いだろう。そして、読者が味わうのはいつ主人公がそれに気付くのかという緊張感である。この手法が採られることによってアイデンティティの危機は湿度をもって読む者の肌に迫るだろう。
 長編「闇に用いる力学」の原型である『闇に用いる力学』は叙述トリックの域を越え、ホラー版「匣の中の失楽」といった様相を呈している。反転を繰り返す世界は一体誰が見ている夢なのか。結末で提示される希望は希望として放置される。そこが匣の中なのか外なのか、誰にも分かりはしない。長編版の続編も待ち遠しいが、本作はこれ自体として完成され、目くるめく輝きを放っている。
 『仮面たち、踊れ!』では再び『実験』で採られた手法が忠実に繰り返される。巧妙に隠されたその企みはやがて壮絶なカタストロフに至る。だが、その企みの主眼はやはり意外性にあるのではない。ここで達成されるカタストロフは執拗なまでにアイデンティティの崩壊であり、狂気の発露なのである。結末で突き落とされる奈落はかつてないほど、深い。炎が渦巻くその暗闇に響く慟哭は読む者の魂を抉るだろう。集中ベストの傑作である。

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2007/03/20 23:05

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2014/06/26 00:53

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2009/02/26 01:13

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2011/09/16 15:20

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2011/10/16 16:45

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2012/07/03 18:25

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