「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本
世紀末・戦争の構造 国際法知らずの日本人へ (徳間文庫 教養シリーズ)
著者 小室 直樹 (著)
〔「戦争と国際法を知らない日本人へ」(2022年刊)に改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
世紀末・戦争の構造 国際法知らずの日本人へ (徳間文庫 教養シリーズ)
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
天才が語る世界の理法
2001/02/27 22:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は、ある時期、古代から中世へ移行する時期のキリスト教思想に関心をもって、手当たりしだいに関連書を読んだことがある。そのとき本書にめぐりあった。詰め込んだばかりで、やがて迅速に雲散していった生煮えの知識をたっぷりと仕入れた直後だったので、本書に書かれていることはすべて「真実」だということがよく判った。(学識のある人間がいっているわけではないので、あまり信用はできないけれど。)
これだけの濃い内容をここまで圧縮して語れる小室直樹は天才である。天才は断言する。断言し、世界を規定する。そして読み手の力量に応じて世界の理法を開示する。そういう人物のことを私は天才と呼ぶ。——ちょっと大仰だったかもしれない。
《それにしてもなぜ、キリスト教が戦争、国際法、国際政治、国際経済の基礎となり得たのか。イスラム教、ユダヤ教、仏教、儒教などとは違った役割を演じ得たのか。/初めに、キリスト教の理解を徹底しておきたい。/キリスト教の本質は何か。/カルケドン信条である。/カルケドン信条とは何か。/イエス・キリストは神であるという信条である。すなわち、「イエスは完全な人間であり、完全な神である」という信条である。》
《神としての人間イエスを共有することによって、ヨーロッパは一体化した。共同体としての普遍世界、キリスト教共同体(corpus christianum)がつくられたのであった。/カルケドン信条を根本教義[ドグマ]とするという意味でのキリスト教共同体は、宗教改革によっても微動だにしなかった。ルター、カルヴァンをはじめとする宗教改革の指導者たちはすべて、カルケドン信条を信奉していた。三位一体説と「人間イエスは神である」ことを信じていたのである。これを根本教義とする点においては、カトリックもプロテスタントもギリシャ正教(ロシア正教)も同じである。》
《人間イエスは神である。ゆえに、その言動を記した『福音書』(Gospel)は最高の啓典である。(略)/この福音書であるが、戒律、法律、規範については全くふれられていない。外面的行動(overt behavior)に関する命令、禁止は一言も述べられていないのである。(略)/つまり、ユダヤ教やイスラム教の啓典とはちがって、福音書は法源(法律の根本)とはなり得ないのである。新約聖書の福音書以外の部分も、やはり、法源とはなり得ない。それだけでなく、社会の根本規範[グルント・ノルム]も戒律も生まないのである。/これが、キリスト教の特徴である。/この特徴があるゆえに、キリスト教共同体[コルプス・クリスティアヌム]から、近代法、近代政治(とくにデモクラシー)、近代経済(資本主義 moderner Kapitalismus)が生まれてきて、近代国際社会を形成し、その諸原則がヨーロッパの外にも波及してゆくことになったのであった。》