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商品説明
本格推理小説の名手・都筑道夫が、クイーン、ヴァン・ダイン、横溝正史などの古典から現代ミステリーまでを縦横に論じ、推理小説の本当の面白さを切れ味鋭く解剖した長編評論。1975年刊の新装版。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
都筑 道夫
- 略歴
- 〈都筑道夫〉1929年東京都生まれ。早稲田実業学校中退。早川書房で「エラリー・クインズ・ミステリ・マガジン」日本語版編集長などを務めた。著書に「風からくり」「さかしま砂絵」ほか。
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紙の本
トリックよりロジック。コレに尽きます!
2011/03/23 13:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
当初、本書は図書館で借りて読んでいた。図書館で借りた本だから、いつ何時でも読み返せるわけではない。そう思うと、あれもこれもメモしておきたいと思った。そうすると、本文のほとんどをメモすることになり・・・。おかげでボールペンは何本も切れるし、右手は痛くなるしで大変だった。思い切って、本書を中古で購入することに。メモは取らずに読むことに専念したことによって、やっと読み終えることができた。
本書に興味を持ったのはその題名に惹かれたから。ミステリ好きのみなさまなら、タイトルからガストン・ルルーの「黄色い部屋の謎」を思い起こすのではないだろうか。私がルルーのミステリを手にしたのが今から30年近く前の中学生の頃。学校の図書館で借りて読んだのが初めてだった。意外な密室、意外な犯人に驚き、「ミステリ」という分野にのめり込むきっかけとなったといっても過言ではないだろう。
さて、クリスティの作品に「アクロイド殺し」というミステリがある。それに関連した本としてピエール・バイヤール著「アクロイドを殺したのは誰か」という本がある。心理分析などにより、クリスティが示した犯人が正しいのかどうかを検証した本だ。本書「黄色い部屋はいかに改装されたか?」も、その類の本だと思った。ルルーの「黄色い部屋の謎」を検証する内容だと。
しかし、違ったようだ。本書の中にルルーの作品は出てこない。その代わりといっては何だが、いろんな作家のミステリが登場。本格推理小説とはどうあるべきか、それを具体例を用いて解説した本である。登場する作品を全て読んでみたくなるような巧い使い方をしている。
「トリックよりロジック」。この言葉が全てを表しているような気がする。どんなに複雑怪奇なトリックを用いたとしても、そのトリックを使用するに値する必然性がなければ、意味がない。ただの作者の自己満足の作品だ。こんなトリックを思いついたんだぞというような。著者である都築氏もおっしゃっているが、極端な話、トリックなど無くてもいいのである。謎があり、それが論理的に解決されるのであれば、それは推理小説として成り立っている。推理小説の祖といわれるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」に、果たしてトリックは存在しただろうか? 読んだ方は答えがおわかりだろう。犯罪小説と推理小説の差は、そこにある。謎が論理的に解決されるかどうか、だ。私は「推理小説」を読みたい。心から、そう思う。
本書は第1部「黄色い部屋はいかに改装されたか?」で本格推理小説とは何かについてのエッセイが綴られ、第2部「私の推理小説作法」で、氏の作品を生み出すまでの想いが綴られている。どちらも、これからミステリを読み続ける上において、参考になるエッセイだ。
都築氏の作品は読んだことがないのだが、本書はとても読みやすい文章で綴られていて、「メモ」するなどという考えを起こさなければ、サクサクと読み進められるだろう。やっと手元に置くことが出来たのだ。また何度でも読み返せる。これが何よりの喜び。