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商品説明
時計を探して森をさまよう少女・翠の前に現れた穏やかで柔らかい声の主・瞳に温かい光を宿すそのひとは、手触りの粗い「事実」という糸から美しい「真実」を織り上げる名人だった。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
光原 百合
- 略歴
- 〈光原百合〉1964年生まれ。著書に「風の交響楽」「道」など。
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紙の本
もしアンケートを実施して“心が癒される作品”を1冊挙げなさいと言われたらあなたならどの作品を挙げるであろうか?私は迷わずこの作品を選びたいと思う。
2005/07/23 16:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙を飾るのは主人公の女子高生・若杉翠。
装丁からして読者も、日頃忘れがちになりつつある素直な気持ちで向き合って生きて行く(というか読んでいくと言った方が適切かな)事を余儀なくされる。
まるで主人公が森に郊外学習に訪れた如く・・・
かつて『ななつのこ』を加納朋子が上梓したときに主人公の駒子ちゃんを作者の分身の如く捉えた読者も多かったのではないであろうか。
同様のことが本作の若杉翠と作者との間にも言える。
それほど清々しいキャラなのである。
物語は郊外学習で八ヶ岳南麓の清海を訪れた彼女(若杉翠)は時計を森に落とすことによって運命の出会いに遭遇するところから始まる。
その出会いの人物とはシーク協会の自然観察指導員である深森護である。
本作の探偵役でもある淡い護への恋心を育みながら、翠が一人称で語りつつ物語は進行して行く。
そういった意味合いにおいてはジュブナイル的要素がかなり詰まった作品だとも言えそうである。
形式的には全3篇からの中篇からなる連作集であるがミステリー度は薄いと覚悟して読んだ方がいいのかもしれない。
しかしながら光原さんの持ち味が発揮される舞台は十分に整っているのである。
優しく心地よい光原さんの文章が各篇にて登場する心に深い傷を持った人物の謎を見事に解きほぐすのである。
なんといっても2篇目が素晴らしいのひと言に尽きる。
婚約者を自動車事故で失って落ち込んでいた男、その直後から抱いた婚約者への不信感。
謎が解明された時、読者に生きる勇気を強く与えてくれる作品だと断言したいですね。
この作品を読み終えた今、私達読者も林間学習を終え、現実に向き合わなければならない。
誰もが、“そんなに人生って悪くないじゃん”と心が少し軽く解放されたような気分になるのは光原さんの確かな筆力の証なのであろう。
タイトル名の見事さも本作の忘れられないところである。
主人公が森で忘れた時計からいろんなことを想起せざるを得ない。
自然と時計をはずした気分に浸れた読者が大半であろう。
時計をはずす=解放されつつも現実と向き合う→心が軽くなるということなんでしょうね。
本作は単行本発売から約7年、いつまでも読み継がれるべき“癒し文学の名作”である。
一人でも多くの方に手にとってもらうために、一日でも早い文庫化を切望したく思う。
活字中毒日記
紙の本
ほのぼのかつ深い日常ミステリ
2002/10/03 00:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
森と森の守護者と、少女の物語。
森を舞台に、その森を訪れる人々の
「縁」を描きます。
探偵役は、この森の守護者
自然解説指導員(レンジャー)。
彼は、事実を積み重ねて、一つの物語を編み上げます。
決して、何もかも救うことのできる
万能のヒーローではありませんが、
枝を払い森に光を行き届かせるように
「謎」という重荷を背負った人々に
一筋の光を与えます。
いや、与えるというより
様々な「事実」に埋もれて
気づけなかった「光」を実感させる
働き、でしょうか。
実に、あたたかな物語です。
そのあたたかさは、まだおそれを知らない時を過ごす
主人公の「翠」が、本書の「視点」にして「語り部」を
受け持っているからこそ。
えー、探偵役にぞっこんな彼女に
ちょっとあてられる気がしないでもありませんが
そんな部分も含めて、微笑ましい一冊。
未読の方は、とにかく一度お試しアレ。
絶対損はさせませんっ!
紙の本
世界はこんなに美しい
2001/03/07 18:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り森が舞台で、厳しく暖かく日常系の謎、という点はいかにも創元。しかし光るものがあるのです。
自然解説指導員というフィルタを通した森の描写は眩しくて瑞々しくて、まずは雰囲気作り大成功。と、一見ほのぼのとさせるけども、扱うテーマは生者と死者。これが意外と重いのだけど、護が触ると「ええ話」にフェードイン。ミステリ読みにとっては事件的には魅力不足だし、全編に流れる甘いムードも気になるかもしれない。
しかし、見所はミステリとしてのネタよりも、作者が提示する愛と希望の形とみた。やりきれない思いから、それを乗り越えるポジティブシンキングが美しい。この上向き思考と森の四季のコントラストが絶妙。譲が紡ぐ物語は推理ではなくて祈り。森の語り部に魂を救われるひと時。
(初出:いのミス)
紙の本
自分の「森」
2001/02/05 14:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:seimei - この投稿者のレビュー一覧を見る
八ヶ岳山麓の高原の町である清海に越してきた十六歳の高校生、若杉翠は地元にあるシーク協会という環境教育グループの自然解説指導員、深森護と知り合い、シークに顔を出すようになる。そこで会う人々、森、日常が彼女の視点で描かれています。
わたしにとって、「森」とは、少年の頃の記憶、小さな野獣の本能(笑)、そう、「森」は記憶にある存在であって、今のわたしの刻にはありません。だからこそ、「森」と共に今を生きているこの物語の住人たちに色々な思いを重ねてしまいます。
とにかくこの物語の住人たちが最高です。
いつも少し悩んでいて、困っていて、でも生きることを愛している。そして太陽と、草木と穏やかな交流をしながら、事実を織り物語りにして、人の心に届く真実を伝えることができる護さん(お見舞いに大根を持っていくような素敵な人です)。
生まれも育ちも大阪、二十歳になるまでフォッサマグナを越えたことがなかった経歴の、きらきらした目と、好奇心の強さが森のねずみに似ていると主人公に表されている女性レンジャーのこずえさん。
護さんや周りの人々、森や自然から、色々な経験を得て、感性や心を成長させていく、のんきで、「今を生
きている」素敵な女の子。翠さん。
そして周りの、あたたかく、もちろん生きる辛さも知っている、森や人に癒される、「生きている」人たち。
自然の一瞬を切り取った確かで綺麗な描写も、人に対する視点もすごく共感を抱かせてくれます。物語の住人も、そして読者も笑って、泣いて、癒される。
今の自分の「森」と出会いたくなる。そんな物語でした。本当に、絶対、お勧めの、この物語。