紙の本
映像の美しさ
2001/01/19 02:16
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正時代、天才歌人が心中事件を起こした。しかも別の相手と二度。どちらも相手の女性は亡くなり、自分だけ生き残った歌人は、結局「蘇生」と題した歌集を残して自殺する。彼の生涯を小説として残すため調査を始めた友人が見る、彼の死の真相。そして本当の彼の姿。
萩原健一主演で映画にもなった作品と聞いているが、本作をただ読むだけでも、ソフトフォーカスで撮る映像のような独特の情景は、ため息が何度も漏れるほど美しい。何度読み返しても、この淡い世界を好きになれる自分がいることが嬉しい。文体の妖艶さ、場面転換の巧みさに、つい忘れがちになるが、もちろん本格推理としての論理構築の素晴らしさをとっても、絶品と言って良いと思われる。
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花を主題にした連作ミステリー。
どれもこれも意外な結末と余韻の残る文章の美しさが魅力。
短編だとあなどることなかれ。
ぐいぐいと引き込まれること間違いなしです。
桔梗の宿、戻り川心中が特に好きです。
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短編ミステリの世界遺産に指定したい表題作を筆頭にした花葬シリーズ収録。大正ロマン薫る舞台設定。ノスタルジックな世界でどんでん返しが待ってます。
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収録されている短編の『菊の塵』が絶品。
どれも悲しくて美しい物語で、一語一語、大切に読み進めたい作品集です。
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1998.5.18 1刷 ¥838
「桂川情死」「菖蒲心中」という、二つの心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、自らはその事件を歌に詠みあげて自害した大正の天才歌人・苑田岳葉。しかし心中事件と作品の間には、ある謎が秘められていた――。日本推理作家協会賞受賞の表題作をはじめ、花に託して、美しくも哀しい男女のはかない悲劇を詩情豊かに描き切る「花葬シリーズ」八篇を完全収録した傑作ミステリー群。(解説・巽昌章)
藤の香・菊の塵・桔梗の宿・桐の柩・白蓮の寺・戻り川心中・花緋文字・夕萩心中
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どの短編も完成度が非常に高い。結の部分でのひっくり返し・浮かび上がる真相が、どれもなかなか予想がつかず驚かされる。
特に好きなのは「戻り川心中」のなんともいえない感じ、「花緋文字」のどうしようもなさ、「桔梗の宿」の純粋すぎる結末。情愛ですね。
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読後、茫然自失。情念に搦め取られ、翻弄され、勾(かどわ)かされる。
人間が隠し持つ妄執を花の姿に託して描いた8短編の連作。
連作名「花葬」著者・連城三紀彦氏は、この連作を「薄幸」と呼び、その理由を次のように述べている。
「『花葬』の最初の狙いはミステリーと恋愛との結合だったのですが、書き進めるうちにどんどん二つが分離していき、八作目に至って遂に、その溝は作者の乏しい才能と意志では埋められなくなってしまったものです。」
情緒纏綿たる世界。明治大正文学の匂いが漂う。暗く閉鎖的な時間の中での男女の恋愛、時には命を賭けた道行きに、読者は引きずり込まれる。自己陶酔するように、勝手に古風な愛憎劇を頭の中に構築するはずである。
しかし、読者が認知するのは、錯覚の世界なのである。そのような愛憎劇は真実でありながらも、事件の核心ではない。事件の全貌が明かされたとき、強烈な衝撃を受けることになる。そして、一瞬のうちに登場人物らは別の顔を浮かび上がらせる。驚嘆させられることは間違いない。純愛に胸掻き毟られ、同情し感傷的になった読者を、一気に別の場所に落とし込む。この一種裏切り行為ともいえる仕打ちによってみせられる真実の場所もまた、人間の業の世界なのである。
私たちは、現実社会においても、無意識のうちに真実から目を逸らしていないだろうか。都合の悪いもの、見たくない知りたくないものに目を瞑りつづけるうちに、はじめから存在しないものにしてしまっていないか。
現実は虚構の世界。真実は他にあるかもしれない。
「戻り川心中」は、1981年 第34回 日本推理作家協会賞 短編賞 受賞。
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花と女とミステリがテーマの短篇集。ネトラレどころじゃないどろどろした人間関係が描かれてるけど、ミステリ部分がすごく丁寧なので、女の心理を考えていけば謎も解けるようになってる面白さもあり。えろーいえろーい。
作者さん自身は「恋愛とミステリの結合はうまくいかなかった」とか反省してるらしいけど、これでうまくいってないとかマジか。
どれも切なーい苦ーい終わり方。唯一のハッピーエンドっぽい「桐の柩」も、そこに辿り着くまでに3人死んでるし……。
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このハルキ文庫版は光文社文庫版の『戻り川心中』と『夕萩心中』に収録された花葬シリーズ8作を一冊に納めた完全版。光文社版『戻り川心中』にはない三作品全てレベルが高いので、絶版で入手しにくいかもしれないがこのハルキ版を読むことを強くお勧めしたい。光文社版を二冊読むでもいいかもしれないが、ハルキ文庫版の掲載順の通り発表順で読む方が良いと思う。個人的には白蓮の寺と花緋文字が好き。
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文章の力を思い知らされる。
暗い時代にに男女の情念が絡み合う。
そして突然、男女の悲恋の物語が一気に反転し、驚愕の真実が闇の底から浮かび上がる。
偉大なる巨人がミステリー界に存在し、今は失われたことに愕然となる。
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最初に提示された枠組みが、ずらされて思わぬ絵を見せてくれる短編集。
色彩があざやかで、読後も情景が残る。
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とにかく文章が美しいです。「花葬」シリーズの名の通り花の持つ役割もそれぞれ大きく、切り取られた情景は透明感を湛え花の色や香りまで運んできます。ミステリとしての技巧のうまさはもちろんですが表面に見えているものとは違う人々の強さや悲しさに一編ごとにため息をつきました。読み終わるのが勿体なかったです。好みは「桐の柩」「戻り川心中」「夕萩心中」。印象的だったのは「花緋文字」。このハルキ文庫版は光文社文庫版の「戻り川心中」に「夕萩心中」の中の三編を加えたシリーズ全てを集めた完全版だそうでこちらで読めて良かったです。
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夕萩心中
最初は恋愛の話で進めていくが徐々に壊されていき
最終てきには別の話になっていることに驚く残っているのは但馬夕の思いだけであることが切ないなと思う。
花緋文字
前半まで主人公の妹と主人公の友達との不倫に主人公が嫉妬する
主人公の物語であるが後半からガラッと変わって
最初から主人公の企みの中で事が進んでいたことに驚いた。やっぱり最後は暗さが残って終わるのが蓮城さん
の作品だなーって思う。
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再読
恋愛とミステリーの融合ミステリ
ミステリの要素としてロジックがある
ロジックなので、ご都合主義ではなく
読者が説明を聞いて納得できる源となる
一見すると受け入れがたい事象が発生する。
ただそれらをロジックで紐解いていけば
読者に受け入れられる内容となる
そしてその際に、ちょっとした前提条件の違いなど
そういった要素が違っていれば
幸せになれたのに
というような哀しさを感じさせる
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日本語の美しさとミステリの融合を実現させた本作
同じ本何度も読まないタイプだけどこれだけは何回読んでも感激してしまう